明日を担う子どもたちの幸せを第一目標に、教育の今日的課題、教育現場の抱えている課題を現場目線で考え、小学校・中学校での優れた教育実践を紹介し、がんばっている先生方にエールを送る― それが月刊「教育ジャーナル」です。ぜひご購読ください。
B5判・68ページ・定価400円・毎月1日発売

教育コラム

教育長に聞く

第24回相模原市教育長に聞く

さがみ風っ子文化祭が教育と地域をつなぐ場に

2010年10月20日公開

岡本 実 [相模原市教育長]

岡本 実 [相模原市教育長]

〔おかもと・みのる〕

1949年、神奈川県生まれ。千葉大学卒業。
72年から相模原市立麻溝・弥栄・大野台小学校教員。89年、市教育委員会に。指導主事、教職員課長を務め、2000年から市立淵野辺・小山・中央小学校長を歴任。08年10月1日より現職。

  • *趣味/油絵、ゴルフ
  • *座右の銘/「いつのまにか、しっとりと」

校長のリーダーシップを高める

政令指定都市となった相模原市の教育委員会として、重点的に取り組まれていることは何でしょうか

当市では、これまで積み上げてきた教育施策に、「未来をひらく学びプラン」として新たな展開を加えました。「広く世界に目を向け、自ら学び、ともに心豊かにたくましく生きる子どもを育む魅力ある学校づくり」という目標を掲げ、”学校運営力アップ””教師力アップ”の2つを柱に、豊かな学びの場づくりに取り組んでいます。

”学校運営力アップ”の面では、教職員一人ひとりが学校運営に参画・協働して、自律した学校づくりを目指しています。そのためには校長のリーダーシップと教職員の力が効果的に機能するような組織の力が必要になります。

校長のリーダーシップは、具体的にどんな形で発揮されるのですか

確かに組織のマネジメントというのは難しいことです。それ自体、校長の力量、いわば「生きる力」が問われることであり、厳しいものですが、やり方によっては学校経営の醍醐味が味わえることでもあります。

たとえば、新しい学校に着任するとします。まず、やらなければならないことは子どもたちや保護者、また、教師のようすを見て実態をつかむことでしょう。そのうえで、自分の目指す学校像を描き、それを保護者や教師たちに発信していくことが大事です。校長自身の描く像や、それを実現させていくための課題をはっきりと示すということになります。そうすることで、次にはどういう段取りが求められるかも自ずと明らかになります。

大切なのは、一人で考え込まずに広く情報交換に努めることだと思います。同僚と話すのもいいし、困ったときの解決策を求めて「退職校長の会」などに尋ねるという手もあります。情報は向こうからはやってきません。自分から動いて求めるという姿勢がポイントでしょうね。

実践的「教師養成塾」

「教師養成塾」への取り組みが始まったそうですが、具体的にはどのようなものですか

先ほどの「学びプラン」での”教師力アップ”のための取り組みの一環として始めたものです。学校は、教師の力を発揮・向上できるような体制を整えるとともに、未来の教師を養成する必要もあります。それには、いかに総合的・系統的に教員養成の支援体制を組むかを考えなくてはなりません。

相模原市の教師養成塾では、今年(平成22年)春に第1期生が卒塾し、4月から16名が早速教員として市内で活躍し始めています。

養成塾の対象は、相模原市の小中学校の正規教員を志望する、大学3・4年生、非常勤講師、それに臨時的任用職員などですが、今年度は50名の募集に対して250名もの応募があり、驚きました。結局、定員を70名にして、その人たちはゼミ形式で養成することにし、さらに70名を聴講生として受け入れることにしました。

的川泰宣先生を塾長とし、採用後は即戦力として働けるよう、きめ細かいプログラムに沿って養成が行われています。実践力をつけるための指導法や専門性に特化したカリキュラムに基づき、併せてミドル・リーダーの育成という点にも重点が置かれています。

なかでも週に1回、各自が学校での経験を持ち寄り、そのなかから課題を示し合う時間は白熱したものになります。彼らがいかに真剣に教育に向き合っているかが伝わってきて、頼もしい限りです。

今後はどんな展開が期待できますか

幸いなことに当市の近隣には、いくつもの大学があります。学校現場や教育委員会が大学と協力していくことで、有機的な教員養成体制が取れるのではないでしょうか。大学側も教員養成のプロセスにかかわってもらい、必要な課程をつくるなど試みてほしいものです。養成ばかりでなく、教員たちの学び直しの場として大学が機能することもできるでしょう。目下のところ大学側は大変協力的ですので、今後はさらに結びつきを強化させていきたいと思っています。

さがみ風っ子文化祭

長い歴史を持つ「さがみ風っ子文化祭」についてお聞かせください

さがみ風っ子文化祭は、平成21年度で31回目を迎え、相模原市として全国に誇れる特色ある教育活動の1つです。子どもたちの豊かな人間性の育成を目的に、小中学校における日ごろの教育活動の成果を、「展示部門」「ステージ部門」「交流部門」の3部門を通じて広く発表するというものです。毎年、各学校の特色を生かした素晴らしい発表を目の当たりにして、子どもたちの頑張りはもちろんのこと、教師たちの力の注ぎ具合のほどもうかがえ、当市の教育力というものを改めて誇らしく思うひとときです。

催しは9月から11月までの期間を取り、なかでも市内にある広大な淵野辺公園で行われる造形展は圧巻です。屋外ですから、雨に濡れても大丈夫で風にも飛ばされないような作品が出展されています。また、市内のホールで行われる、小中学校の合奏・合唱をはじめ、合同学芸会や英語弁論大会、演劇発表会など、実に多彩で盛りだくさんな内容が目白押しの期間です。

この文化祭は、子どもたちが互いに見合い、聞き合う鑑賞のときとなっていますが、同時に保護者や地域の人々、広く市民が交流する場ともなっているのです。長い歴史を持つ行事なので、親子2代にわたる出演者もいたりと、さらに話題も広げているようです。教師の指導法についても、他校の催しから学び合い、その改善に一役買っているという話も聞きました。

毎年4万人もの訪れがあり、会場と駅とを結ぶバスをチャーターするほどの盛況ぶりですが、養護学校や特別支援学級の参加を得て、今後さらに市をあげての年中行事へと発展していくことでしょう。

日常的な行き来による連携を

小中学校の連携、学校・家庭・地域の連携の必要性が言われていますが、相模原市ではどのように取り組んでいますか

相模原市は神奈川県でも横浜市、川崎市に次いで3番目に政令指定都市となった市です。平成18、19年の津久井郡との合併で、面積が3倍となる大所帯となりました。当然全国各地から人々が集まり、地域の力が自然とはぐくまれてきた土地でもあります。それは教育にも生かされており、いまや学校経営は地域との連携なしにはやっていけないと言っても過言ではないでしょう。

子どもたちの登下校を見守る「子ども見守り隊」や、学校・通学路の整備をする「おやじの会」など、地域の人々の支えは日々行われています。

小中連携についても、型にはまったものでなく、日常的に行き来することを大切にしようという方向性で動いています。小中学校の教師同士も、事務的な事柄で互いに訪問するだけでなく、小学校の教師に中学校の体育の授業を見に行ってもらうとか、その逆に中学校の教師が小学生のようすを見に行くといったことですね。PTAも行き来をするとよいでしょう。

重要なのは、子どもたちが教師や保護者の行き来を見ているということです。

小学校の先生が中学校を訪ねてくれれば、そこを卒業した生徒は見知った先生の姿が見られて、嬉しいに違いありません。逆に、小学校時代に学校で見かけていた先生に中学校で会ったら、子どもは何となく安心するのではないでしょうか。

不登校の問題も、小中連携を強めることで、どの子どもが不登校なのか、その実態を小中それぞれの教師が目で見るだけで違ったものになるのではないかと考えています。書類上のことだけで理解するのでなく、子どもの表情を見て実態を把握していくという姿勢を取りたいものです。

せっかく行き来をするのですから、子どもにもそのようすを見せて、全体にいい影響が出るのを期待したいと思います。当市の取り組みは、いわばハードの面で仕組みづくりをするより、まずはソフト面で動こうということなのです。

教・育の両面を見据えて

教育長の教育観を含め、今後の抱負をお聞かせください

教育には、教科を「教える」側面と、人間を「育てる」側面の両方があることを、改めて確認し合いたいと思う昨今です。ついつい教えるほうだけに重点が置かれがちです。また、体験学習などで学ぶことはテストには出ないけれど、生きていくうえで大切なことが多いでしょう。目先の結果を出すことに偏りがちな最近の傾向が気になります。

私も小中学校時代には憧れた先生がいましたし、大学でもゼミの先生、教員時代にも同僚や先輩など恩師と呼べる人たちに多く出会ってきました。こうした出会いに支えられながら教師生活を楽しませてもらいました。現役の教師たちにもぜひそうした体験をしてほしいし、また、人とかかわっていける力を子どもたちにも養ってもらいたい。

将来のためばかりでなく、このいまを生きて味わう力を一人ひとりが身につけて、学校全体でもそれを共有できるような現場——それを目指して今後も応援を続けていきたいと思います。

教育ジャーナル最新号

教育ジャーナル最新号

教育ジャーナル http://gakkokyoiku.gakken.co.jp/k-journal/
合言葉は「がんばれ!公立校!!」
「教育ジャーナル」は、子どもたちの喜びを第一に考える教師のための雑誌です。子どもと教育にかかわるすべての方にご購読いただけます。

ページトップへ