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中学校道徳

掲載日:平成25年8月9日

3年 実効性のある道徳授業

~思いやりの心を育む授業の実践例~

埼玉県北本市立北本中学校 沢口裕

1 はじめに

 中学校において道徳の時間の充実具合は学校やクラスによって差がある現状がある。その理由として、まず、教師の中でその他の教科・領域の活動より優先順位が低く、置き換わってしまうことが多いことがあげられる。道徳は指導の効果が見えにくいことが、他の教科・領域に置き換わってしまう原因のようだ。さらに、若手の教員が増えた昨今、指導方法がわからない教員の増加が挙げられる。
 私は、そのような現状がある中学校の道徳の授業を充実させるためには、

  • ① 「実効性のある道徳の授業」
  • ② 「基盤となる指導方法が明確な授業」

を創造することを研究している。その一例として今回は思いやりの心を育む授業を紹介したい。

2 実践例

(1)主題名 思いやりの心 2-(2)
資料名  「タクミ君、大いに揺れる!」
(出典:かけがえないきみだから3年 学研教育みらい)
(2)本時のねらい
 他人の立場にたって物事を考え、思いやりのある行動をとれる態度を養う。
(3)道徳の授業の基盤となる考え方
① 資料に浸らせ、道徳的価値を内面化させる。
 資料を効果的に使用するために、主人公の気持ちに寄り添うことを重視している。さらに今回は心情曲線を用いて、主人公の道徳的価値の深まりを板書に示した。「生き方ノート」を使用し、後半で感想の時間をじっくりとり、自分の生活と重ねて考えさせることで、実践意欲をもたせるようにしている。自分の生活を振り返らせることで、実践意欲につなげていく。
② 話合いを深めさせる工夫
 私のクラスでは座席はコの字型の座席を取っている。生徒がお互いの顔を見ながら、話合いをしていくことを目的にしている。さらに、意図的指名、リレー方式、小集団など、多様な形式を用意し、目的に応じて使い分けている。今回は場面絵を用いて、主人公の気持ちに寄り添う工夫を行った。
(4)指導過程
【導入】
 「自分がしてもらってうれしかったこと」を事前にアンケートをとり、その結果を発表した。
  • 骨折した時、クラスのみんなが移動教室のときなど、手伝ってくれたこと。
  • 泣いているときに慰めてもらったこと。
  • 重たい荷物をもっていたときに、後輩が手伝ってくれたこと。
【展開】

条件情況の説明

タクミ君
自他ともに認める好少年
バスの中でたくさんの老人がくる
席を譲ろうとするが・・・

判読

発問1
最初のおばあさんに席をゆずらなかったのはなぜか?

生徒の話合い

  • タイミングが難しかった。
  • 前に失敗しているから、恥ずかしいのではないか。
  • 他の人が譲ってくれるのを待っているのではないか。
  • 譲るか譲らないか迷っているのではないか。
  • 自信がないからではないか。
  • すぐに降りるかも知れないから、譲らなくてもいいかな、と思ったのではないか。
発問2
次のおじいさんに席を譲らなかったのはなぜか?

生徒の話合い

  • 危なっかしいから譲りたいけれど、先に乗っていた人がいるから、前に乗っていた人が気を悪くするかもしれない。
  • 公平ではないから譲らない。
  • 両方に譲ってあげたいが、できないから譲らないのではないか。
  • もう一人の人がずるいと思うのではないか。
発問3
三番目の若づくりのおばあさんに席を譲らなかったのはなぜか。

生徒の話合い

  • 年寄りではないと言われそうで怖いから譲れない。
  • 席を譲ったら、逆に怒られそうで怖い。
  • おばあさんの気を悪くさせてしまうのではないか。
発問4
タクミ君が席を譲らない理由はどのように変化しているだろうか。

生徒の反応

  • 生徒は全員黒板を見ながら考えている。一人の男子生徒が「あっ」と声を上げ、何かに気がついた様子で「理由が自分のことから相手のことに変化しているのではないか」と発言した。
発問5
では、タクミ君の思いやり度を表してみよう。

最初 :20%

2番目:60%

3番目:100%

発問6
この授業を通して、「本当の思いやり」とはどのようなことだと思いましたか。
(テーマ発問・小集団での話合い)
  • 思いやりとは「相手の立場に立つ」ことが必要ではないか。
  • 相手が本当に必要としていることをしてあげることが、「思いやり」ではないか。
  • まず、行動することが大切ではないか。

授業を振り返った感想記入(自分の生活に重ねて)

  • これからの生活では、相手の立場に立った、行動、言葉づかいをしていきたい。何かしてもらった時には、しっかりお礼が言えるようにしたい。
  • クラスのみんなが、お互いを思いやれば、きっといいクラスになると思う。私もこれからは、相手のことを考えて行動したい。
  • 自分のことしか考えていなくて、相手に迷惑をかけていたことがたくさんあった。今日学んだことを生かして行動したい。
【終末】
説話「してあげる幸せ」についての説話

3 成果と課題

 私は、道徳教育推進教師として、「北本中方式の道徳授業」の構築に努めている。教科や他の領域では3年間、または小学校や高校など異校種との連携を模索する動きがあるが、道徳に関しては、地域によって進んでいるところがあるものの、現場の動きとしては、まだできていないことが多い。まずは、中学校3年間105時間という道徳の時間で生徒をどのように育成するかを明確にし、着実に実行していくことが必要であると考える。「北本中方式」は学年が上がっても、担任が変わっても、違和感なく接続できるように組み立てられた、「基盤となる考え方」である。そこに、道徳の時間以外で培われた「道徳性」を結び付け、「道徳の時間で学んだことを実践できる生徒」「普段の生活で抱えた道徳的課題を道徳の時間で解決していく生徒」の育成に取り組んでいる。
 この考えを具現化したものが、今回の実践例である。最後の感想では自分の生活と重ねて、実践意欲をもって取り組んでいこうとしていることが分かる。今後は実践の場をより多く設定し、道徳の授業で学んだことが生かさせるようにしていくことで、中学校の教師・生徒の両者が道徳の時間を楽しみにしていくようにしていきたい。