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中学校道徳

掲載日:平成25年9月2日

2年 自己肯定感をはぐくむ道徳の時間

~「きまり」について考えを深める~

埼玉県久喜市立栗橋西中学校 教諭 鈴木久美子

1 はじめに

 道徳の時間が、生徒にとっても教師にとっても楽しい時間、待ち遠しいと思える時間であってほしいと思うのは私だけではないと思う。なぜなら、人間は、誰もが今より少しでもよりよい自分、素敵な自分になりたいと願って生きていると思うからだ。
 私は、ここ数年、生徒たちの自己肯定感が以前より低くなっていると感じている。この世の中で、自分という人間はたった一人しかいないのに、それがとても残念でならない。 苦手なことや不得意なもの、弱さがあるのが人間。そういう部分も自分の一部だと受け入れられた時、人は今以上に人間としてのよりよい生き方を求めるのではないだろうか。
 私は、 本時の授業を通して、「きまり」の意義を見つめ直し、「きまり」が自分の生活を豊かにすることに気付かせることにより、自信をもって生き生きと生活しようとする態度を育みたいと考えた。

2 指導計画

(1)主題名 本当の自由 4-(1)
資料名 「昼休みの自由」(出典:学研教育みらい 2年)
(2)本時で身に付けさせたい力
 きまりは、一方的に押しつけられて自分たちの自由を奪うものではなく、自分たちを守り、生活向上につながるものであることを自覚させる。
(3)工夫する点
 本授業では、主人公の気持ちを追うだけでなく、主人公が「やめよう」と言えなかったことについて、『自分だったら言えるか?』という発問を投げかけ、自分と深くかかわらせることを通して、主題に迫ることにした。「言える派」が圧倒的に多いと思われるが、資料をもとに話合いを深めることにより、きまりについてより深く考えられる授業を展開するよう心がける。

3 指導過程

【導入】
 身の回りにはどのようなきまりがあるかを考えさせるとともに、自分自身はどの程度守っているかを確認する。生徒の反応をもとに、授業を展開する。
【展開】
発問1:
皆は「やめよう」と言えるか。理由とともに述べてみよう。(黒板にネームプレートを貼る)

≪今日の学習テーマの確認≫

 皆は、「やめよう」と言える派が多いが、主人公は「やめよう」と言えなかった。主人公の考えで足りなかったものを見い出し、きまりの意義について考えてみよう。

話題1:
担任の先生に「昼休みのバレーボール一週間禁止」と言われた時の気持ちは?
話題2:
「きまりのある意味がわかった気がした」というが、主人公の考えで足りなかったものは何か?
発問2:
話題1・2で話し合ったことをもとに、発問1について、もう一度考える。

【終末】
 この授業を通して考えたことを「道徳ノート」に記入する。

4 授業記録(抜粋)

(1)「話題2」から
T
主人公朝子の考えで足りなかったものは何だったと思いますか?
S1
自分への厳しさかな。
S2
私も「ちょっとくらいなら、いいや」という甘い考えがあったと思います。
S3
「やめよう」って言う勇気も足りなかったと思います。ちょっと勇気を出せば、おそらく皆「そうだね」ってやめてくれたと思います。
S4
「やめよう」って言えないのは、本当の友達じゃないよね。
T
今、「考えが甘かった」、「勇気が足りなかった」という意見があったけれど、どうして朝子はそうなってしまったのだと思いますか。
S3
やっぱり、自分たちの楽しさのことしか考えていなかったからだと思います。
S5
ぼくも、自分たちの楽しさだけを考えて、きまりを破るとどんなことになるか、考えていなかったからだと思います。
T
きまりを破ったら、どんな気持ちになった?
S6
クラスの皆が迷惑に思ってしまい、申し訳ないという気持ちになった。
S2
朝子たちだって、嫌な気持ちになったと思います。
T
相手のことを考えず、きまりを破ったことによって、皆が嫌な思いをしたのですね。
(2)「発問2」から
T
それでは、授業の最初に「言える派」「言えない派」に分かれたのですが、話合いを進めながら、どんなことを感じましたか。
S1
やはり、自分に厳しくきちんと「やめよう」と言ってきまりを守ろうと思った。だって、きまりを破ってしまうと、自分の自由が狭くなってしまうと思うから。それに、やっぱりきまりはみんなのためにあると思うから・・・。
S7
授業を通して、初めに自分は「言える」と思っていたけれど、友達の目を気にすると「言えないかもしれない」と思えてきました。でも、言わなかったら、きっと後悔すると思います
S8
きまりを守らないと他の人に迷惑がかかる。それに、後で自分も嫌な思いをすると思う。みんなが楽しく生活できるよう、「やめよう」と言いたいと思う。

5 授業を振り返って

 今回は、ねらいに迫るための手立てとして、授業の最初と最後に「やめようと言えるか(きまりを守ろうとするか)」と聞いた。授業の最初は、クラスのほとんどが「やめようと言える」と答えたが、終末では悩む生徒も数名増えた。その理由を問うと、「正直言うと、授業の初めは、『叱られたり内申書に響くから、きまりを守らなければ』と考えていた。しかし、話合いを通して、きまりはみんなが楽しく生活するために必要だということに気付いたから」と答える生徒がいた。自己の行為の原動力に目がいくようになったために悩んだことが伺えた。授業後の「道徳ノート」の中にも、「きまりは押し付けられるものではなく、自分たちの生活を楽しくするものということが改めてわかった」という考えが多く書かれており、概ねねらいを達成することができたと考える。

6 おわりに

 2年生になって、1か月が経とうとしている。「授業を振り返って」でも既述したように、最初は「叱られるのが嫌だから」「内申書に響くから」という視点できまりを守らなければと考えていたことを、生徒は正直に吐露することができるようになってきた。これは、信頼できる級友の中で自己の存在が認められながら学習できる「道徳的風土」ができつつあるからこそだと、学級担任として嬉しく思う。
 「きまり」については、今後学級活動等で計画的に取り上げながら、道徳的実践へと結びつけていきたいと考える。
 私は、これからも道徳の時間を大切にしながら、自己肯定感をもち、生き生きと自己の人生を歩もうとする生徒の育成に努めていきたい。