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中学校保健体育

掲載日:平成25年7月24日

1年 現代的なリズムのダンスの実践から

~思考・判断を評価するための授業を通して~

秋田県大館市立東中学校 田村新一

1 はじめに

 本校は,秋田県北部に位置し,全校生徒数は455人の学校である。本校の保健体育科ではこれまで基礎的・基本的な知識・技能の習得を図るために,「分かる」「できる」をキーワードに学習指導要領の例示の内容と評価規準とを照らし合わせながら,指導内容を明確にして授業を展開してきた。
 さらに思考力・判断力・表現力の育成と学習意欲の向上を目指して,「関わり合う」という言葉をキーワードに加え,授業研究を進めてきた。
 今回は特にこの「関わり合う」ということについて深めたいと考えた。そこで授業を通して習得した基礎的・基本的な知識・技能を活用し,思考力・判断力・表現力等を育むという視点からアプローチしていくためにも,思考・判断を評価するための授業について挑戦することにした。
 ダンスの授業で思考・判断を評価する授業を行うにあたり,特にそれ以前の学習において,どんな知識や技能の習得が前提になっているのかを考え,その知識や技能を生徒が活用できるように学習を考慮しながら単元を構成することにした。また,生徒が自分の心と体を解放してダンスの授業に向かうための雰囲気づくりはどうあればよいのかも考えながら授業を実践した。

2 単元構成と評価について(1年 現代的なリズムのダンス)

図

 授業実践の本時にあたる10時間目に行われる3回目のミニ交流会で,仲間の良い動きや表現などを指摘できるようにするためにはどんな知識や技能が前提となるのかを考える。まず『運動の技能』として単元の3時間目には「ロックの曲に合わせ変化のある動きを組み合わせて踊る」,7時間目に「簡単な繰り返しのリズムでヒップホップを踊る」,9時間目には「シンコぺーション,アフタービート,休止や倍速などをリズムの変化を付けて踊り,表現の仕方を学ぶ」という段階的な学習を行う。そして4時間目に『運動についての知識,理解』として「全身でリズムに乗って自由に表現する」という経験をし,表現の仕方について学習したうえで1回目のミニ交流会に臨む。
 また,5時間目に行ったミニ交流会で出された意見をもとに6時間目には『思考・判断』の学習としてそれまでに習得した技能を発表の場で活かすためにどのような練習の仕方があるか,具体的な行い方や活用方法を学び,実践する。
 この5時間目と8時間目のミニ交流会では,それぞれ『運動への関心・意欲・態度』で学習する「積極的に参加する意欲」と「相手の良さを認める態度」が実践されることで,より表現がダイナミックになったり,その表現を互いに認めようとしたりするようになった。さらに,直前の9時間目に学ぶ「リズムに変化を付けて踊る」という学習を行うことで生徒たちは,これまでの動きに対してリズムを変化させて踊っていく中で,自分たちの作品の変容を喜んだり,楽しんだりするようになった。こうしてこれまで学習して習得してきた『知識・技能』を活用し,『思考・判断』をする場を経て,10時間目のミニ交流会に向けていく。ミニ交流会は,複数回行うことで,よりその能力を高めようとしたねらいもある。合計3回の交流会では,付箋を使って互いに意見交換できるようにしている。使用した付箋には名前を書かせ,授業の後で学習状況を確認するための評価の材料とする。

3 思考・判断の授業について ~本時の計画とその実践より~

 9時間目までの授業では前項の通り「知識・理解」「技能」の学習と共に,2回のミニ交流会を経て「活用する力」「積極的に参加し相手の良さを認める態度」を身に付けることが課題となる。そして10時間目に実施されたミニ交流会を含む授業展開は以下の通りである。本時間のねらいは「ダンスにおける交流の場面で,他のグループのリズムに変化を付けて踊る動きや良い表現などについて指摘できるようにする(思考・判断)」である。

『思考・判断』の前提となる知識を確認していくことで,生徒たちはリズムに変化を付けて踊る技能としての用語であるシンコぺーション,アフタービート,休止や倍速などを表現の仕方として理解していく。
どんな動きが休止や倍速なのか,例えばシンコペーションはどんな動きの例があるのかなどを全体で確認するなど,名称と動きとの整合性をはかり,活用するための情報を整理する。
こうした段階を踏まえ,ミニ交流会でリズムに変化を付けて踊る動きがどんな場面で取り上げられ,どのように生かされているのかを指摘することになる。

実際の生徒の付箋紙や学習カードから

  • 曲の最初の段階からリズムに乗っていて,倍速を使いながら後ろでターンをしたり,自由に歩きながら,リズムは崩さずに踊ったりしていて良かった。
  • 全体的にユニゾンが多いので,曲の変化に応じて,もうちょっとカノンなどを加えて集団の動きのバリエーションを増やしたらよいと思う。
  • ヒップホップの曲では,クリスクロスの使い方を工夫したり,ランニングマンを効果的に使ったりしていて,見ている私たちも楽しくなった。
  • 倍速のあとの休止の取り方がとても良かった。
  • そのあとのアフタービートもリズムに変化がついて良かった。
  • 曲の歌詞に応じて演じるように踊っていたのが良かった。中でもシンコペーションが格好良く,おもしろさもあった,私たちも今後,追求していきたい。

4 成果について

 活動時間の確保のために授業前の準備や活動を決めたことで,分担した役割を効率的に果たすなど,主体的に学習に取り組む態度の面でも効果が見られた。また,「評価規準の作成,評価方法等の工夫改善のための参考資料」を参照して,単元計画内に指導内容と評価規準を配列した「指導と評価の計画表」を作成することで,単元の全体像を捉えやすくした。これを作成することで,毎時間の指導内容と評価規準が明確になり,指導と評価の一体化を図ることができた。さらに,学習指導要領解説の例示を具現化するために評価規準と照らし合わせながら指導内容を明確にすることで,学習すべき内容が生徒にとってもはっきりとし,学習カードへの記載内容や実際の生徒の動きにその効果や変容が見られた。

5 今後の課題

 基礎的・基本的な知識・技能の習得とその活用について今後も授業改善を行っていきたい。特に,思考・判断を評価する授業を行うに当たり,生徒に身に付けさせたい力を具体化することやそのためには,どんな知識や技能の習得が前提になるのか,そしてどの場面で実際に活用させるのかなど学習過程を検討しながら授業研究をすすめていきたいと考えている。

6 おわりに

 教師側が単元全体のイメージをもち,目指したい方向を示すこと,また学習する内容を明確にして生徒に示すことで,教師と生徒との間で,何をどうすればよいのかをよりはっきりとさせることができた。そうすることで生徒たちは,学習した知識を積極的に学習カードや交流会で表現しようとするなど,身に付けた技能を自分たちの表現としてどう生かすのかを意欲的に考えたりするようになっていった。
 最終的には,生徒の表現した言葉や動き,表情などをキャッチし,その都度,私たち教師が適切な言葉や表現を返していくことが大切だと考えている。