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中学校保健体育

掲載日:平成26年9月12日
傷害の防止
イ 交通事故などによる傷害の防止

埼玉県三郷市立北中学校 津久井望

1 研究の目的

中学生期は、経験や運転技術の過信から「これくらいは大丈夫」という気持ちになったり、周囲の反応を気にしたりという傾向がある。また、部活動や習い事などで時間的な余裕がなく、安全に対する意識より、自己の欲求が優先されがちになることが多くある。生徒の実態調査からも「交通ルールを守ること」や「安全な行動」の重要性は理解できているものの、それがなかなか実践に結びつかない状況である。
 以上のことから、交通事故などによる傷害を防止するためには、自己の課題を把握し、健康で安全な生活を営むための実践力を身につける必要がある。そこで、本研究では「実践力」を課題に対する「関心」「思考力・判断力」「知識」と捉え、研究を進めた。

2 仮説と手立て

【仮説1】
基本的な知識を確実に習得させそれらを活用する学習方法を工夫することで、健康で安全な生活を営むための実践力(関心、思考力・判断力、知識)が高まるであろう。
【手立て】
○養護教諭やゲストティーチャーによる指導。
○実習やケーススタディを用いた学習活動。
○知識を活用するまとめ学習の工夫。
【仮説2】
学習資料や教材・教具を工夫することで、学習内容を自分のこととして捉え、主体的に学習することができるであろう。
【手立て】
○生徒の関心を高める導入の工夫。
○身近な場面を活用した学習課題の工夫。
○視聴覚教材の活用。

3 実践内容

  • ①養護教諭やゲストティーチャーによる指導
    • ○生徒の健康・安全に関する十分な理解と専門的な知識をもっている養護教諭と学習内容や学習課題について事前に打ち合わせを重ねた。授業においては安全(特に本校で発生した事故やケガ)に関する身近な実態を知らせたり、止血法や包帯法を実演し、ポイントを説明したりするなど、役割を分担して授業を行った。役割を分担し、指導にあたった。
    • ○専門的な知識や技術、経験をもっている消防署の方をゲストティーチャーとして招き、心肺蘇生法の講習を行った。
  • ②実習やケーススタディによる学習活動
    • ○「きずの手当」では止血法や包帯法を実際に練習した後、「美術の時間、あやまって彫刻刀で手の平を切り、出血してしまった」という場面を想定して、それぞれ手当を行った。また、①しっかりと止血できたか(圧迫する強さは適切か)②止血の際には感染予防ができたか③包帯が正しく巻けたかについて互いに評価し合いながら行った。
    • ○ケーススタディでは実際にあった場面をいくつか設定し、何が起こるか予想させたり、適切な行動を考えさせたりする活動を行った。ここでは、努力を要する生徒の支援策としてヒントカードを用意し、活用させた。最後に自分たちの考えを、根拠とともに道筋を立てて説明(発表)する活動も行った。ここでは、道筋を立てて説明ができるように、「発表のしかた カード」を用意し、それにそって発表させた。

  • ③知識を活用するまとめ学習の工夫
    • ○「自然災害による傷害の防止」では、まとめの学習として「プチレポート」を作成し、家族や先輩、後輩に説明をするという活動を行った。レポートの内容は(1)自然災害による傷害を防止するにはどうすればよいのか学習したことを自分の言葉でまとめて説明する。

  • (2)自然災害による傷害の防止に関するテーマを自分で設定し、調べてまとめる。というものにした。
    • ○「交通事故の防止」では、まとめの学習として「わたしの安全マップ」を作成させた。学校周辺について(1)危険が予測される場所にマークをつけ、(2)適切な対策を考える内容である。

  • ④生徒の関心を高める導入の工夫
    • ○学習内容に関する事前のアンケートや調査を行い、今の自分たちの実態を知らせる。「交通事故の防止」では、「交通ルールや安全な行動の必要性」に対するアンケート結果と、「並進」「スピードの出し過ぎ」などに関する結果を紹介し、交通ルールや安全な行動の必要性はわかっていても、実際にはなかなかできていないということを知らせた上で授業を行った。
    • ○40㎞で走る自動車と自転車に乗っている人が接触した時の映像を見せた。また、自転車事故によって加害者になってしまった事例などを紹介し、交通事故の危険や責任の重さなどを感じさせた上で授業を行った。
  • ⑤身近な場面を活用した学習課題の工夫
    • ○「交通事故の防止」では、生徒の登下校の様子を使って人的要因や環境要因は何かを考えたり、それらにかかわる危険を予測し、それぞれの要因に対して適切な対策を考えるなどの学習活動を行った。
    • ○「傷害の発生要因と防止」や「交通事故の現状と原因」などでは、実際の生活の中で起こりそうな場面を設定し、学習に取り組ませた。
  • ⑥視聴覚教材の活用
    • ○「交通事故の防止」では、生徒の登下校の様子をビデオで撮影し、人の行動やその場の状況がわかるようにした。また、通学路を通る自動車や歩行者の様子、ガソリンスタンドから出てくる自動車の様子なども撮影して活用した。
    • ○「交通事故の防止」の導入では、「スケアードストレート教育技法による自転車交通安全教育」の様子を撮影し、映像を見せた。
    • ○「交通事故の現状と原因」では、車両の特性として「内輪差」や「死角」について映像を見せながら説明した。

4 実践に対する評価

質 問 項 目事前事後
自分の安全・健康について関心を持っていますか?68%91%
学習内容を普段の生活に生かそうとしたり、
どんな場面で生かせそうか考えたりしていますか?
53%97%
学習内容を理解できましたか?71%97%
自転車で並進をしますか?7%38%
自転車で必要以上にスピードを出しますか?23%68%
(*肯定的回答の数値)
  • ○養護教諭やゲストティーチャーによる専門的できめ細やかな指導により、多くの生徒が学習内容を習得できたと考える。
  • ○実習やケーススタディを用いた学習により、思考力・判断力が高まったと考える。また、学習に対して受け身にならず積極的に取り組めたと考える。
  • ○プチレポートや安全マップの作成により、学習内容をさらに深めることができたと考える。
質 問 項 目事前事後
自分が事故に遭うかもしれないということを考えて自転車に乗っていますか?36%85%
保健学習は必要だと思いますか?88%97%
保健学習に積極的に取り組めましたか?60%85%
交通事故の防止について学習しなければならないと思いましたか?36%85%
映像を見ながら学習することでイメージしやすくなりましたか?60%100%
(*肯定的回答の数値)
  • ○導入の工夫により、学習に対する必要性や関心を高めた上で授業を行うことができたと考える。
  • ○身近な場面を活用したことにより、生徒は自分の身にも起こることとして学習に取り組めたと考える。
  • ○視聴覚教材を活用することにより、イメージがしやすかったり、課題がわかりやすく、多くの生徒が課題意識をもって学習に取り組めたと考える。