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中学校保健体育

掲載日:平成27年09月17日
主体的に運動に取り組む生徒を育てる体育授業の創造
中学校 第1学年女子 保健体育科 
B 器械運動 エ 跳び箱運動「頭はね跳び」

岐阜県岐阜市立岐阜中央中学校  森 哲也

1.研究仮説

 集団の発達のみちすじ(「所属」→「同調」→「協力」→「連帯」)に即して,集団の成立条件を整えることによって学習集団の発達を促すことができる。また,運動の特性や学習課題に合わせて,仲間の活動を援助する活動(相互援助活動)や言語活動を指導過程の中に位置付けて指導することにより,仲間に積極的に関わる態度が身に付き,運動の楽しさやできた喜びを味わいながら,仲間と共に主体的に運動に取り組む生徒を育てることができる。

2.研究内容及び研究方法

 仲間と相互に援助し合い主体的な活動ができる学習集団の育成
(1)集団の発達のみちすじに即した段階的な指導
(2)主体的な学びを生み出す相互援助活動

3.研究実践

実践例 1年女子「頭はね跳び」(11月実施)

(1) 集団の発達のみちすじに即した段階的な指導

 集団が発達していく過程を大まかにとらえると,図1のようになることが明らかになっている。
研究実践

 また,図2の4つは観点と集団の成立条件である。
研究実践

 以前に行ったマット運動では,教師が与えていた『集合・整列』『練習態度』『準備・片付け』等のきまりを,「指摘」や「真剣」「喜び」などのキーワードを含めて生徒に考えさせたことで,意欲的に活動するとともに,指摘し合ったり要求し合ったりする姿が見られ,協力的段階から少しずつ連帯的段階へと近付いてきた。

 本単元では,集団としての高まりがより分かるように,毎時間の振り返りでMO(態度観察係)がグループ全員のきまりの達成結果を評価し(※図3参照)伝え,得点化することとした。
研究実践

 評価は判断が曖昧にならないようにするため,◎と×で行うようにした。できたら◎,できなかったら×として,◎の数をグループ全体の項目数で割ったものを◎達成率で表した。グループごとのきまりの達成率を表1のように生徒に示すことで,集団の高まりについても視覚的に競い合うことができるようにした。表2は「頭はね跳び」においての各グループのきまりの◎の達成率の平均である。
研究実践

 全体として,時間を追うごとに◎の達成率が上がっていることが分かる。黄,赤,緑の3グループについては,毎時間◎の達成率を上げている。単元の前半で◎の達成率の低かった赤グループについても,お互いに厳しく評価した結果の達成率であった。
 また,学習後の振り返りでは,次のような記述があった。

  • ・自分のグループがどれだけできているかを他のグループと比べることができてよかった。
  • ・他のグループと比べて競争心が生まれてさらにやる気が出たのと,残りの%を見て自分たちに足りないものが何なのかを考えることができて良かった。
  • ・MOが厳しくチェックしてくれたので,自分にも厳しく行動することができてよかった。
  • ・技の得点ときまりの達成率が別に表されたことで,集団として高まっていくのがよく分かってよかった。

 このように,◎の達成率を表にして生徒に示したり,運動面(技)の得点と集団面の得点とを分けてMOが評価したりしたことについて,よさを感じながら取り組むことができた。

(2) 主体的な学びを生み出す相互援助活動

実践例③ 1年女子「頭はね跳び」

研究実践  本単元では,グループにおける一人一人の役割を図4のようにローテーション(試技者:1人→補助者:2人→動画撮影:1人→アドバイス:1人または2人)しながら必ずアドバイスを受けることができるようにした。その中で,生徒が必要に応じてタブレット端末を活用できるようにした。実際の映像で自分の動きを見ることで,実際の動きや課題を正確につかみ,次の動きに生かすことができると考えたからである。

 そして,前単元で成果があった図5のような得点表を作成したことに加えて,より個人の実態に応じた練習ができるように,課題に応じた練習方法や技術ポイントを示した表(図6)も活用した。
研究実践

 なお,前単元とは異なり,集団のきまりの得点を加えず技のできばえのみの得点の平均を集計した結果を表3に示した。
研究実践

研究実践  生徒たちは,得点表を基にした仲間の具体的なアドバイスや指摘,さらに献身的な補助,タブレットの活用によって,平均4.2点の姿まで上達することができた。全員がそれぞれの役割でかかわり合う練習,得点表やタブレットでの確認(※写真参照)によって全体として表3連続写真のように毎時間姿が高まった。

 また,ローテーションの練習形態やタブレットの活用について,次のような記述があった。

  • ・誰かはすごく働いていて,誰かは全然働いていないということがなく,全員で練習できた。
  • ・タブレットを使うことで,自分の姿がとてもよく分かり,次の練習で意識することができた。
  • ・自分の膝が曲がっていないかなど,口だけでなく見ることができて分かりやすかった。

 さらに,「頭はね跳び」の学習後の振り返りでは,図7のようなやる気の変化や記述があった。
研究実践

 このように,生徒たちは本単元での練習の仕方やグループの仲間との教え合いのよさを感じるとともに,アドバイスによってできるようになったと実感することができた。その結果,全体として器械運動に対するやる気が上がったと考えられる。

4.成果と課題

○成果

  • ・集団の発達のみちすじを基に,段階に応じてきまりを与えたり考えさせたりしながら指導することで,動きについて指摘し合いながら練習する姿が見られ,集団を高めることができた。
  • ・タブレット端末を活用できるようにしたことで,映像を指し示しながら,具体的に指摘したりアドバイスしたりできた。また,試技者は,映像で自分の姿を見ることによってどこがどうなっているのかが分かり,その部分を意識して運動ができ,動きに生かすことができた。

●課題

  • ・それぞれの役割に責任をもつという点で弱さがあったので、MOやPO(技能観察係)には観察や点検活動を位置付け,よさを認め価値付けていくことはもちろん,その他のグループ全員に責任をもてる役割を与え,見届けていくようにする。
  • ・グループ練習において、苦手な子が練習の場をうまく活用することができるローテーションや、場の設定について考えていく。