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小学校体育(保健)

掲載日:平成25年7月24日

「個から集団へ」~跳び箱運動~

三重県いなべ市立三里小学校 前田幹夫

1 はじめに

 跳び箱運動は、 言うまでもなく 「できる」 「できない」が顕在化しやすい運動である。目の前にある跳び箱を越えることができれば達成感や満足感を得られ、跳ぶことができなければ劣位を感じやすい。運動というものは押し並べて繰り返すことにより上達していくものである。跳び箱も個人技の練習の繰り返しにより、 「できない」が「できる」に昇華していくことが多いが、それは煎じ詰めていえば「個」としての上達であり楽しさである。その個の力を凝集させ集団としての達成感や満足感を得られるようにすることが、体育学習の方途であると考え実践に取り組んだ。

2 指導計画(全9時間)

時数 学習内容
1 オリエンテーション
2
  • 基礎運動(うさぎ跳び、かえる跳び、かえるの足打ち)
  • 開脚跳び
3
4
  • 台上前転の基礎練習(セーフティーマット、連結跳び箱、舞台を使った練習)
  • 個人の技能の高さに合わせた台上前転の練習
5
6
7 2 チームに分かれて集団跳び箱の練習
8
9 発表会

3 授業実践

(1)場と対話する

 授業設計で大切にしたいこととして、一つの運動課題に対してゴールから逆算したいくつかのフェーズ(段階)を用意する必要がある。つまり目の前の子どもに必要な場は何なのかを思案し、場と対話しながら複数のベイビーステップを用意するのである。今回の実践では子どもたちは台上前転に取り組むのが初めてであった。よってうまく回れなかったらどうしようという不安感、跳び箱から落ちてしまったらどうしようという薄氷を踏む思いが事前のアンケートから見てとれた。そこで、動きを段階的に高めていくためにセーフティーマットを使った場、連結跳び箱の場、舞台を使った場の三つを用意し、自分の運動段階の到達度に合わせて練習に取り組んだ。

第1段階「セーフティーマットを使った場」

セーフティーマットを使った場の写真

第2段階「連結跳び箱の場」

連結跳び箱の場の写真

第3段階「舞台を使った場」

舞台を使った場の写真

(2)台上前転

 失敗したときの恐怖感や不安感を取り除いてやることが運動への意欲や推進力につながると考え、前述した三つの場で練習に取り組んだ。連結跳び箱は落ちる可能性があるため慎重に回る姿が多かったが、セーフティーマットと舞台を使った練習では助走→踏み切り→着手→空中姿勢→着地を一瀉千里(いっしゃせんり)に行う姿が多く見てとれた。ベイビーステップを終え、台上前転に取り組むと恐怖感を感じる子どもがはじめは多くいたが、繰り返すうちに幾つかのコツに気付きはじめた。例えば回るときに足を先につこうという思いで背中を打ってしまうことから、頭部をつけるのではなく首を曲げることでスムーズに回れることに気付く。開脚跳びの手のつき方では頭がつきにくいことから、指先を外側にし、台をはさむようにして手前につくとスムーズに回れることに気付く。このような気付きを共有しながら、苦手な子どもには踏み切り時に頭部とおしりを支えてあげることで安心して跳べるように配慮し、全員がその楽しさを得られるように取り組んだ。

(3)集団跳び箱

 台上前転の技能を習得したところで、開脚跳びと組み合わせ二人でシンクロさせながら集団跳び箱に取り組んだ。仲間と一つの演技を作りあげることでそれぞれの技能がより昇華し、また協力してチームで取り組むことで集団としての楽しさが得られるように以下の二つの場を設定した。

舞台を使った場の写真

舞台を使った場の写真

4 成果と課題

 必要なフェーズを用意し、さまざまな練習に取り組めるようにしたことで意欲的に取り組む姿が見られた。しかし「個から集団へ」つなげるためのボンドとなるものが少なく、動きは昇華されたが満足感や達成感を得るにはもう一歩であった。今後は、個と集団を往還させるような練習や教え合いの場をさらに吟味しながら、子どもと体育の関係を強くしていきたい。