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小学校体育(保健)

掲載日:平成26年1月29日
5年 第一章 けがの防止

松本市立島内小学校 竹内進悟

 5年生の保健の学習は、子どもたちの生活と密接に結びついている。この「けがの防止」の目標は、「事故やけがは、人の行動のしかたと周りの環境がかかわり合って起こることを理解できるようにする」ことや「事故やけがを防止するには、危険に早く気づき、的確な判断のもとに安全に行動することがひつようであることや、施設・設備など、安全な環境を整えることが必要であることを理解できるようにする。」ことなどである。要するに、理解をすることができるようになれば目標は達成されるのである。ただ、理解はできてもなかなか実践できない、危険だとわかっていても廊下を走ってしまったり、片付けが大事だとわかっていてもおろそかにしてしまったりするのが子どもであるし、大人もまたしかりである。保健は、授業はやるものの、子どもにとって他人事のようになってしまう傾向があるのが悩みの種である。子どもの思いや実態にそぐわずとも、授業は行わなければならない。そこで、保健ではねらってはいないことだが、できる限り子どもが自分事としてとらえ、自分の姿を振り返り、授業後には少しでも子どもの中での変化が期待できるような授業計画を立ててみた。
 単元計画は保健の教科書・指導書を使用・参考にし、付属のワークシートを使用した。加えて、感想を書かせる時間を設けたり、中盤の授業の中では、授業の終わりに自分が何が原因でそういう判断(危ないとわかっていてもその行動を起こしてしまう)をしてしまうのか、自分を振り返ったりする時間を設けてみた。
 以下は実践した内容とその考察、反省と子どもの学習カードの記述である。

主発問...(○) 子どもの反応...(・)

第一時「事故やけがの原因」(ワークシート④使用)

けがをしそうになって、「ひやり」としたことや「はっと」したことはあるかな。
手を離してブランコから落ちそうになった。
自転車を歩道じゃないところで乗っていて、トラックがすぐ横を通っていった。
階段を降りてたとき、すべって転びそうになった。
誰もが「こわい」と思うような経験があるよね。じゃあその事故やけがを起きてしまう原因は何かを考えてみよう。教科書P14の絵を見て危険な場所を探して、なぜ危険かを考えてみよう。
「人の行動」と「まわりの環境」によって事故やけがが起こることがわかるように、子どもの気づきを原因によってわけて板書する。
今日の勉強を振り返って、自分ならどんなことに気をつけたいですか。感想を書きましょう。

<授業後の子どもの感想>

この勉強を通して、これからは飛び出したりやりっぱなしにしないで、ろうかを走らないようにする。
今日勉強して思ったことは、自分が注意しても事故があるかもしれないけどそれでも周りに注意して生活したいです。
今までは大きいけがはあまりしなかったけど、今後はまわりの環境が危険かもしれないから、気をつけたいと思った。

<考察>

 子どもたちは事故やけがは、相手の行動も含めて、人の軽率な行動のみが原因だと思っている節があった。周りの環境が要因の場合もあることを知ると、感想②のように、今まで自分の行動には注意していたという子どもも周囲に注意しようとする気持ちが出てきたり、いつも自分(の行動)が悪いと思っていた児童が、実は周囲にも原因があることに初めて気づいたりするような感想が見られた。教科書の絵柄を使って事故が起こりそうな原因を考えさせたことや、2つの原因を意識して板書したことは、児童が事故の要因を理解するのに有効であった。

第二時「学校での事故やけがの防止」(ワークシート⑤使用)

教科書の絵の場面で、どんな事故やけがが起こりそうか予測してみよう。その事故やけがを防止するにはどうしたらいいかも考えよう。
本を読みながら歩いているからぶつかる。
(対策)歩いているときには本を読まない。
いすの上に立っている人のいすが倒れそう。
友だちにいすをおさえてもらう。
無理をしない。先生に頼む。
水がたれているのに気づいてないからすべって転びそう。
(ぞうきんを使った人は)ぞうきんをしっかりしぼって、(歩く人は)しっかり前を見て歩く。
曲がり角でぶつかる。
右側通行する。走らない。
どんな危険なことが起こりそうかがわかれば、起こる前に事故やけがを防ぐことができるかもしれないね。
じゃあ自分が気をつけた方がいいなと思うことはあるかな。「自分の行動」と「周りの環境」の2つの点から考えてみよう。
よくろうかを走っちゃう。
自分の物を下(床)に置いてしまうので気をつけたい。
階段を早く降りていくのが危ないと思う。
休み時間になると早く遊びたくなって、走ってはないけど、早く歩いてしまう。
今、「休み時間になると遊びたくなって」って行ってくれた人がいたけど、危ないとはわかっているけどついやってしまう理由があるんじゃないかな。みんなは危ないとわかっているのにどうしてその行動を取ってしまうんだろう。どんな理由がありそうかな。考えてみよう。
早く遊びたくて走ってしまう。
多分大丈夫だと思ってあんまり早くはないけど軽く走っちゃう。
片づけがめんどくさくて出しっぱなしにしちゃう。
きっと大丈夫だと思ってしまったり、少しくらいならいいや、と思って危ないとわかっていてもやってしまうことがあるね。危ない、いけない、ということはわかっているけどやってしまう自分がいるということに気づくことが大事です。先生にも経験があります...。これから気をつけたいことを具体的に書きましょう。
遊びたいと思うとつい急いでしまうからろうかを走らないように気をつけたい。
当番活動に遅れそうになるとすぐ走っちゃうから走らないようにしたい。

<考察>

 自分自身を振り返り、自分の課題を見つけ、自己決定する場を設ける時間は特別活動の目標である。保健では知識として身につけるべきことをしっかりと身につけ、自分の行動を振り返るのは別の時間を使ってやればいいのかもしれない。しかし、多くの場合、保健の授業は短時間で終わらせてしまい、年間の中でしっかりと時数を確保されていないという現状や、多忙の余りに教材研究がしっかりされずに何となく話だけして終わらせてしまう傾向もある。別の時間を取ってさらに深めようと思う先生はおそらく少ない。安全な生活を心がけることは健康教育の中の一つの目標にもなっている。自分の体に関わるような「二次性徴」や「病気の予防」だけが保健ではない。もう一度保健の学習目標と内容を確認し、子どもにとって意味のある保健学習を行っていく必要が我々にはある。子どもが自分の命を守る上でも大事であるこの「けがの防止」の単元では、学活の要素も含めた授業展開も、子どもが生きた知識を得るための一つの手法となり得るのではないかと感じている。命を守るのは自分自身ではあるが、子どもの命が失われたとき、それを子どもの責任というのでは、あまりにも空虚である。適切な判断ができる子どもをできる限り学校で、授業の中で育つような指導や支援を心がけたい。