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特別支援

掲載日:平成25年8月22日

〔連載〕
運動が苦手な子も,発達が気になる子も
「やったー!」を体感できる体育の授業のために②

平泳ぎのキックの指導が、なぜ難しいのか?

東京都立港特別支援学校主任教諭 川上康則

 体育は、「できる・できない」がとてもはっきりしている教科です。不器用で身体をイメージ通りに動かせない子や、練習してもなかなか上達しない子の中には、やる前から「どうせできない」と決めつけてしまう子もいます。

 だからこそ、運動に苦手意識を持つ子ほど、できたときの充実感は人一倍強いはずです。できなかったことができるようになると、友だち関係や新しい環境への挑戦などさまざまなことに前向きになれます。

 そこで、先生方には、ぜひ「できない」を「できる」に変える体育指導のちょっとしたコツをお伝えしていきたいと思います。今回は夏休みということもあるので、指導が難しいと言われる「平泳ぎのキック」です。

 平泳ぎのキックは、水泳指導の中でも最も教えるのが難しい運動技術です。ほとんどの先生方が苦労されていると思います。なぜなら、平泳ぎのキックは、日常生活のみならずスポーツの場面においても、これに類似した動きが存在しないからです。平泳ぎのキックができるまでのプロセスというのは、今まで全く経験したことのない新しい動きを獲得することなのです。

 新しい動きを獲得するためには、まず、その動きに類似した動きが獲得されていなければなりません。平泳ぎのキックに類似した動きを獲得できていない段階の子は、バタ足やサッカーのキックなどに近い「あおり足」が出てきてしまいます。

 加えて、平泳ぎは「腹ばい」の姿勢で行うため自分の脚が見えません。さらに、水は流動的であり、毎回違った抵抗を感じてしまうので「正しい」や「間違っている」を実感しにくいという特徴もあります。

 そこで、平泳ぎのキックに類似した動きを獲得するために、陸上で、腹ばい姿勢をとります。ビート板を2枚用意し、脚の左右に立てて置いてください(イラスト参照)。個人指導の場面であれば先生がビート板を押さえておきます。集団指導なら、2人一組で行ってください。

 まず、腹ばい姿勢で、足を尻のほうに引きつけさせます。そのあと、ビート板の壁の内側に、親指の腹をこすりつけながら足を閉じてゆき、元に戻すようにさせます(イラスト①~③)。

 「指で壁をこすりながら足を閉じる」というのが、ポイントです。

 この動きなら、サンダルをつっかけて履いて歩くときに親指を背屈させる動作に類似していますし、自分が動かしているという刺激情報を、ビート板がフィードバックしてくれます。

 水中では、この両側の壁を思い浮かべながら、全く同じことをやるつもりでキックします。水中でも壁を意識できるようにするために、先生が水中に入り、両手を壁代わりにして示してあげてください。私は、「手のひらをビート板の「壁」だと思ってね」と伝えていました。

 長くあおり足が修正できなかった子が、たった1日で修正できたという報告もいただきますので、指導で効果を試してみてください。

《参考文献》吉田茂・三木四郎編(1996)『教師のための運動学』,大修館書店,p.54-56

イラスト:立岡 正聡

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