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特別支援

掲載日:平成25年9月4日

〔連載〕
運動が苦手な子も,発達が気になる子も
「やったー!」を体感できる体育の授業のために③

みんなが熱中『めちゃサッカー』

沖縄県那覇市立城北小学校教諭 小島哲夫

 好きな教科ランキングの上位に入る「体育」ですが,課題として挙げられている「二極化」が進んでいるという事実もあります。 「楽しめる子は楽しめるけれど...」 ,身体能力や経験の差などで,体を動かすことの楽しさや仲間と関わるうれしさを十分に味わえていない子も多くいるのではないかと危惧しています。
 そこで私は,年度当初の教科開きの時に, 「めちゃサッカー」という取り組みを毎年行っています。今回はこの実践を紹介したいと思います。

 この実践では,以下のことを目的として行っています。

  • 誰もが体を思いっきり動かして,ゲームを楽しむ。
  • ルールを工夫することにより,誰もがゲームを楽しめるようになるという経験をする。
  • ルールは,よりゲームをおもしろくするために,変更することができるということに気づく。
  • 仲間との関わりやゲームの作戦の重要性がわかる。

 ルールは以下の通りです。

ルール
(小学校 6 年,男子 20 人,女子 17 人で実践したとき)
男子対女子で行い,場所は体育館を使用
男子は 3 チーム,女子は 2 チームにして,女子に数的優位をつくる。
1 セットは 2 分
デジタイマーなどを利用して,時間になったらアイスホッケーのようにチームが入れ替わってプレーする。
ボールは 4 ~ 5 個使う
ソフトバレーボールのような当たっても痛くない柔らかいボールを使用する(右写真) 。
ゴールの大きさを調整する
女子の攻めるゴールを体育館の舞台全体にし,男子の攻めるゴールは,女子と反対側の体育館の入り口にするなどゴールの大きさを制限する(ゴールキーパーはおかない) 。

 ボールが4~5個もあると必ず空いているボールが出てきます。運動が苦手な子はそれを見つけて恐る恐る蹴りま すが,女子のゴールは広いので結構な確率で入ります。ボールが多いので,失敗が目立たなくなり男女ともゴールに向かって何度もチャレンジすることができます。場所が体育館ですので,変な方向に蹴っても壁に当たって返ってくるので,思い切って強く蹴ることができます。

 また,使用するボールも大切な要素の 1 つです。当たっても痛くないソフトバレーボールを使うことで恐怖感をなくすことができますし,空気を少し抜いて空気圧を下げてあげることでボールのスピードを調整することができます。

 1 セット 2 分という短い時間ですが,体育館中を走り回りますし,1 時間で,男子で 5 セットくらい,女子で 7 ~ 8 セットくらいは動き回ります。他のチームがゲームをしているときは,短い間ですが休憩と水分補給ができます。

 さらに,途中で作戦タイムを取ります。男子なら, 「守りと攻めのバランスをどうとるのか」 「うまい人を前に置いてどんどん点を取らせよう」とか,女子なら「走れる人と走れない人のバランスをとるために,チーム替えをしよう」などなど,作戦や戦術論が盛り上がります。

 そして,ゲームが終わった後に互いに振り返りをします。男子はたいてい負けてしまうので,必ず「もう一度やらせてくれ」とお願いにきます。女子はうれしくてしょうがないので,再戦を受け入れます。
 ここですぐに再戦させるのではなく,ルールを見直させるのです。
 男子からは当然,ゴールの大きさを狭くしてほしいなどの見直し案が出ます。女子へは「おもしろいゲームにするためにはどうしたらいい?」と投げかけると交渉に応じてくれます。これも,正式に互いの代表を出してルール変更会議を行い,互いが納得できるルール(条件)を決めていきます。こうして,ルールを工夫しながらゲームを楽しむことができます。

 このゲームを通してたくさんの子が思いっきり体を動かして運動する楽しさを味わい,また,条件やルールを工夫することによって多くの子が楽しく運動することができるようになるということを経験できます。さらに,仲間と作戦を考えたり,仲間のために頑張ったりすることも運動を楽しむ大事な要素として実感することもできます。
 これらを教科開きで経験させることで, 「自分にもできるかも」 「チャレンジしてみよう」という想いを持たせることが大切だと私は考えます。

【他の連載記事】

① はじめに  ② 平泳ぎのキックの指導が、なぜ難しいのか?  ③ みんなが熱中『めちゃサッカー』  
④ 運動会シーズンに不安が強くなる子どもの背景を考えよう  ⑤ 人生が変わる!泳ぐことの嬉しさ!!皆泳 25 mをめざして  ⑥ 心も身体も「シンクロ」する どの子も器械運動が楽しめる「シンクロ跳び箱」  ⑦ 体育授業で育てることができるソーシャルスキル  ⑧ 逆上がりをクリアして、自信をつけよう!  ⑨ 難しいところを簡単にして「みんなで楽しむキャッチバレーボール」  ⑩ なわとびの苦手を一気に解消しよう  ⑪ アナロゴンの視点をスモールステップに活かし,運動を楽しむ