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特別支援

掲載日:平成25年10月17日

〔連載〕
運動が苦手な子も,発達が気になる子も
「やったー!」を体感できる体育の授業のために⑥

心も身体も「シンクロ」する
どの子も器械運動が楽しめる「シンクロ跳び箱」

沖縄県那覇市立城北小学校教諭 小島哲夫

 器械運動は子どもたちにとって好き嫌いが分かれやすい運動です。特に高学年になると,それぞれのできる技の難易度に差が出てくるため,運動に対する意欲にばらつきがみられます。しかし,「シンクロ」という別の視点を取り入れることで,運動が苦手な子も自分の得意な技を持ち寄り,仲間と一体になる楽しさを味わうことができるようになります。
 そこで今回は,「シンクロ跳び箱」を紹介したいと思います。

イラスト1

 どの単元でも同じですが,一番大事なのは単元の見通しを持たせることです。
 この単元の最後にはどのような形になるのかという見通しが持てないと,技の習得やグループ活動の意欲につながりません。

 そこで,初めに開脚跳びが上手な子を何人か選び,助走を短くして着地を意識させながら二人で一緒(シンクロ)に跳ばせます。ロイター板を踏み切る音と着地がそろうと「お~」と歓声があがります。子どもの「やってみたい」という思いが高まったところで,「それぞれの技を持ち寄ってシンクロ跳び箱をします」と単元の最終の形を示します。

 それでもまだ不安な子もいるので,単元の前半は技の習得と習熟をめざし,単元後半にシンクロ跳び箱としての演技構成などを練習することを伝えます。自分の持っている技を持ち寄り,その技を組み合わせてシンクロ跳び箱をすることを強調し,見通しを持たせて不安を取り除きます。

 単元後半のシンクロ跳び箱を意識させることにより,単体の技の練習のときからそれぞれの班でアドバイスし合うなどの関わりや,仲間と一緒に新しい技にチャレンジする場面が増えていきます。もちろん,それぞれの技を視覚的に見せる掲示や技のコツを共有することで,学び合いが活性化します。

 単元前半のポイントとして,着地をしっかりさせることです。跳び箱を跳び越して,各技のフィニッシュが決まってこそきれいな技になることを意識させます。手足をしっかり伸ばして各技のフィニッシュのポーズをすると,シンクロ跳び箱のとき,演技に一層メリハリが出ます。

◇シンクロの基本的な条件

基本的な場の設定を決め,演技は1人3回跳ぶ(図を参照)。

  • グループの人数のめやす:基本的に「2人1組×3組」で,6人で1グループが適当
  • 各組の演技構成の例:開脚跳び→横跳び越し→台上前転→フィニッシュゾーン
    同グループ内の3組が同じ構成でもよいし,最初から横跳び越しを入れるなど,異なるパターンでもよい。
    2人1組の技が必ず同じである必要はない(開脚前転と台上前転の組み合わせなども可)。
演技の最初と最後にポーズを入れる(3組の演技が終わったら,フィニッシュゾーンに全員で集まってポーズ)。
曲はアップテンポの曲(120/分くらい,運動会のマーチくらい)を準備し,それぞれのチームで選ぶ。
イラスト2

 演技構成を考えて,いざ練習を始めてみると跳び箱を跳ぶタイミングが一人一人違うので,なかなかうまくシンクロすることができません。そこでシンクロすることを体験するために,助走距離を短くしてジャンプさせてタイミングを合わせる練習をします。最初は「せ~の」という声から始まり,試行錯誤しながら,相手の目を見て合図する「アイコンタクト」にたどりつきます。

 さらに,互いの技のスピードが違っていても,技が終わった後のフィニッシュポーズをそろえると,メリハリがつきシンクロ度があがります。一とおり演技が完成したところで,音楽をつけ,演技の始めと終わりにポーズをつけてさらに一体感を演出して完成です。

 ほんの少しでもタイミングが合うと,言葉では表せない一体感を感じることができます。もちろん,そこにたどりつくためにはスモールステップでの取り組みやイメージを持たせる手立てが必要ですが,仲間と喜びを分かち合えることは大きな力となります。

 互いに相手を意識してきちんとシンクロすると,周りで見ている子から歓声があがるのでますます楽しくなります。仲間との一体感を感じながら,自分がチームの一員として参加できる満足感は,運動を楽しむ大切な要素です。

 器械運動が苦手な子でも,少し視点を変えて(運動の価値を変えて)あげることで,参加しやすい運動へとなっていくのです。

イラスト:立岡 正聡

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