HOME > 授業実践・読み物 > 特別支援 > 運動が苦手な子も,発達が気になる子も「やったー!」を体感できる体育の授業のために⑧
上の枠

特別支援

掲載日:平成25年11月5日

〔連載〕
運動が苦手な子も,発達が気になる子も
「やったー!」を体感できる体育の授業のために⑧

逆上がりをクリアして、自信をつけよう!

東京都立港特別支援学校主任教諭 川上康則

 鉄棒は、運動が苦手な子どもたちにとって難関種目のうちの一つです。
 「ただ、ぶら下がっているだけでもつらいのに、つかまって回るなんて・・・」
と考えているうちにクラスメイトたちはどんどんできるようになってしまい、ますます「鉄棒なんて、大っ嫌い!」という気持ちが強くなってしまいます。
 そこで今回は、鉄棒の逆上がりの上達法を考えます。

1.感覚面のつまずきをチェック
(1)前転をしてもめまいが起きないかどうか

 「重力不安」という感覚調整障害があり、足が地面から離れることや回転することそのものに抵抗感がある子どもがいます。不意に姿勢が崩れること、足場が不安定なこと、揺れ、回転などに対して過剰な反応を示すのが特徴です。ブランコなどの公園遊具も嫌がるため、幼児期の遊び経験が他の児童に比べて少なく、運動全般への拒否感も強くなります。マット運動での前転でめまいが起きないかどうかや、鉄棒などにぶら下がって足が地面から離れることに抵抗感がないかなどを確認します。

(2)「ぶたの丸焼き」が20秒以上できるかどうか

 教室での姿勢が崩れやすい場合、筋肉の張り具合や関節の角度の調整が難しいという背景要因があります。このような状態は、筋緊張の反応性が低いということから「低緊張」ともいわれています。鉄棒にぶら下がり続ける力も弱いため、体重を支え続けることが難しく、鉄棒はやりたがりません。まずは、どんな姿勢でも構わないので、鉄棒にぶら下がる「鉄棒あそび」から始めて、「ぶたの丸焼き(図1)」でぶら下がり続けられるかどうか、確認しましょう。

2.逆上がりの土台となる運動ができるかをチェック
(1)ゆりかご

 体育座りの姿勢から背中を丸めて、おでこを膝にくっつけます(図2)。その姿勢を崩さないようにしながら、後ろに転がります。背中をつけた後、反動をつけ、元の姿勢にスムーズに戻ってこられるかを練習します。背中側は見えない部分なので、最初のうちは後ろに倒れる感覚が怖いという子どももいます。繰り返し練習しましょう。

(2)肩逆立ち

 仰向けで寝た姿勢から、腰部分を天井方向に持ち上げます(図3)。首から肩にかけての筋肉、肩甲骨周辺の筋肉で足上げ姿勢を支える姿勢を維持します。逆上がりでは、足を一気に鉄棒よりも高く引き上げる場面がありますので、この肩逆立ちの姿勢を維持できるよう、繰り返し練習します。

(3)くるりんぱ

 家庭で協力していただけるようであれば、「くるりんぱ(図4)」のような活動も積極的に取り入れましょう。大人と子どもが両手をつなぎ、大人の太ももや腹を駆け上がる勢いを利用して、後方に宙返りします。初めのうちは、大人が手首を返し、宙返りを補助します。次第に、子どもが自分の力で回るように促します。後方への回転スピードが速くなっていくと、逆上がりの回転動作に近づきます。

(4)つばめ・つばめ足振り

 鉄棒の基本技術で、「つばめ(「すずめ」、と呼ぶこともあります)」と呼ばれる姿勢があります(図5①)。腕をピンと伸ばし、体重を支えた状態で保持します。足のつま先もそろえて、後ろに伸ばします。このとき、胸を反らし、腹に力を入れるようにします。こうすることによって、鉄棒の上で身体が動かしやすくなります。
 その後、「つばめ」の状態から、大きく足を前に振り出します(図5②)。このとき、腕が曲がらないように気を付けるようにします。

(5)ふとん干しから引き上げ、つばめへ

 腕と足を下ろした状態から、鉄棒を握り、身体を引き上げます(図6)。つばめの姿勢に戻る練習を繰り返します。

(6)肘膝曲げ姿勢

 逆上がりは、肘を曲げたまま回転しますので、懸垂力や腹筋の力が必要になります。そこで、肘と膝を曲げ、鉄棒にぶら下がる姿勢をキープする練習をします(図7)。姿勢を長く維持できるようにします。

3.タオルを使った逆上がり

ここまでのステップを組み合わせ、逆上がりをします。

  • ①肘を曲げたまま、地面を強く蹴り上げ、足を鉄棒の上に振り上げます。
  • ②地面を蹴ったと同時に、腕と腹に力を入れて鉄棒を引き寄せます。
     ※このとき、図8のように、タオルを用いると引き寄せる感覚をつかませやすくなります(図8)。

  • ③腕は曲げたまま、回転します。
  • ④足を反対側に下ろすようにします。
  • ⑤最後に、足を下げる勢いと、腕の力を使って、上半身を起こします。

 いきなり成功するわけではないので、基本を押さえ、根気よく練習することが大切です。逆上がりが苦手なまま大人になったという人もいますが、成功するまで頑張って乗り越えることも必要だと思います。根気を支えるためにも、ポイントを押さえた指導を心がけましょう。

イラスト:立岡 正聡

【他の連載記事】

① はじめに  ② 平泳ぎのキックの指導が、なぜ難しいのか?  ③ みんなが熱中『めちゃサッカー』  
④ 運動会シーズンに不安が強くなる子どもの背景を考えよう  ⑤ 人生が変わる!泳ぐことの嬉しさ!!皆泳 25 mをめざして  ⑥ 心も身体も「シンクロ」する どの子も器械運動が楽しめる「シンクロ跳び箱」  ⑦ 体育授業で育てることができるソーシャルスキル  ⑧ 逆上がりをクリアして、自信をつけよう!  ⑨ 難しいところを簡単にして「みんなで楽しむキャッチバレーボール」  ⑩ なわとびの苦手を一気に解消しよう  ⑪ アナロゴンの視点をスモールステップに活かし,運動を楽しむ