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特別支援

掲載日:平成25年11月11日

〔連載〕
運動が苦手な子も,発達が気になる子も
「やったー!」を体感できる体育の授業のために⑨

難しいところを簡単にして「みんなで楽しむキャッチバレーボール」

沖縄県那覇市立城北小学校教諭 小島哲夫

 ボール運動ではボールを持っているプレーヤーだけでなく,周りの「ボールを持たないときの動き」をする仲間が大切になってきます。この「ボールを持たないときの動き」を充実させることによって,ゲームの楽しみが深まります。

 ネット型の特徴として,ネットをはさんでいるので,敵味方が入り乱れることがなく,自陣で攻撃を組み立てやすい(ボールをコントロールしやすい)ことがあげられます。そこで条件を変えてあげることで,仲間との連携がしやすくなり,「ボールを持たないときの動き」を身に付けるのに適しています。

 また,ボールをコントロールしてラリーを続ける楽しさと,そのラリーを中断させる(阻止する・攻撃する)二つの特性があり,学級や子どもの実態に合わせながら教材を工夫しやすいという特徴もあります。教材の特性を生かしながら,運動の難しいところを簡単にしてゲーム化する「教材の教材化」をすることで,どの子も参加できて楽しめる教材となります。

 バレーボールはどの子も一度はテレビで見たことがあるスポーツですが,空中でボールをコントロールしたり,トスを上げたりするのは難しくある程度の技能が必要です。そこで,技能的に難しいレシーブをキャッチにし,トスを手で上げることによって,バレーボール本来の動きや戦術を学ぶことができます。アタック(攻撃)に特化することで,子どもはゲームに熱中し,作戦の工夫も広がります。

 初めはバドミントンコートを縦に半分にして,2対2のゲームを行います。相手から来たボールをキャッチしたら,ボールを持っていない子がセッターの位置に動いてパスをもらいます。そして,セッターの位置でパスをもらった子がトスを上げて,最初にボールをキャッチした子がアタックを打って相手コートに返します(図1)。すぐに連携して動くのは難しいので,この2対2で相手と連動する動きを練習します。その際,セッターの位置に目印になるもの(ゴムのマーカーなど)を置いておくと,目安になり動きやすくなります。

≪図1≫

コート図面1

 その動きに慣れてきた頃に,今度はバドミントンコート全面を使って3対3での練習を行います。今度はセッター以外に2人のプレーヤーがいるので,アタッカーを選択できます。セッター役の子もすばやく左右にトスを上げて,攻撃のリズムをつくります(図2)。このときに気を付けることは,セッター役の子が相手コートから来たボールを最初にキャッチした場合も,二段攻撃にせず,必ず誰かがセッター役になって三段攻撃を意識させることです。ゲームが白熱すると,早く攻撃したくなって動きがバラバラになってしまうので,三段攻撃を意識させて動きを身に付けさせます。

≪図2≫

コート図面2

 アタックはバドミントンのネットの高さ(150cmくらい)で,ジャンプしなくても返せる高さで始めます。ジャンプしないでも返せることで,相手コートに返したり,ラリーを続けたりすることを楽しみます。手に当てる感覚をつかんだら,今度はどの部分を狙って打ったらいいかを各チームで考えさせ,コーンなどの目印を置いてコースを狙う練習をします(図3)。

≪図3≫

コート図面3

 だんだんと動きがよくなってラリーが続くようになると,アタックを鋭角に打って決めたくなります。これが二つ目の楽しみの,ラリーを中断したくなる気持ちの表れです。そこで,ネットの高さを170~180cmに上げて,攻撃を難しくするとともに,ブロックをしてもよいことにするといろいろな作戦が出てきます。

 アタックもジャンプして打てる子はそれでも構いません。逆にジャンプしないでスタンディングでコースを打ち分ける子や,フェイントをうまく使うチームなども出てきます。また,狙うコースや作戦のバリエーションを掲示して作戦をパターン化しておくと,子どもが利用しやすくなります。

 ボールの動きが複雑ではないため,運動が苦手な子もいくつかの動きのパターンを身に付けると,ゲームで運動を楽しむことができます。「ボールを持たないときの動き」を身に付けることによって,バレーボールそのものの楽しさを味わうことができます。難しい部分を簡単にする「教材の教材化」によって,ボール運動が苦手な子も参加しやすい教材へと変身するのです。

◆キャッチバレーボールの工夫ルール

基本的に4対4で行う(5人までは可,バドミントンコートを使う)。
レシーブとトスはキャッチして仲間に投げてもよい(子どもの実態に合わせ,レシーブをキャッチせずに通常のレシーブで戻すなど,難易度を上げることも可)。
サービスは名前を呼んで相手にとりやすいボールを両手で投げ入れる(通常のサービスだとサービス合戦になってしまうため)。
基本的に3回で相手に返すが,実態に合わせて4回でも可。
単元の後半はブロックしてもよい(ネットの高さを上げる)。
ゲームは4人で行うが,1チームは6人編成くらいにする。ゲームに出ている人以外は,審判や外から自分のチームを観察する役目にすると,作戦も検証しやすい。また,セッターはトスを上手に上げるのが難しいので,固定してもよい(その代わり,後半ではアタッカーの役にしてあげるなどの配慮が必要である)。
コート図面4

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