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教育ジャーナル Vol.3 第1回

学研『教育ジャーナル』は、全国の学校・先生方にお届けしている隔月刊誌です。
Web版は、毎月2回特集記事を公開しています。本誌では、更に充実した内容で様々な記事をご紹介しています。

コロナに負けない! 教師の姿、学校の風景
~学校教育に空白をつくらないために~

 新型コロナウイルスの感染拡大によって、全国の学校の多くは、過去に例を見ない長期の休業を余儀なくされた。そうした中で学校現場の先生方は、何を考え、子供たちの学びを止めないためにどんな取組をしてきたのか。

第1回 突然の一斉休校要請~学校現場の思い~

渡辺研 教育ジャーナリスト

 安倍晋三内閣総理大臣の一斉休校要請により、突然の長期学校休業に入った3月。本誌は、全国各地の公立小中学校の校長先生にアンケート用紙を送付し、以下の二つの質問にお答えいただいた。

●学校のカレンダーから「2020年3月」が消えてしまいました。いつもと異なる「3月」を過ごして、どのようなことを感じたり、考えたりしましたか。以下の2点についてお答えください。

Q1 学校、教育に関わること

 臨時休業を進める中で、考えたこと、感じたことはどのようなことですか?
 例えば、日頃の備えが役に立ったことや、「こうしておけばよかった」と思ったこと、子供たちや保護者に対する思い、同僚の先生方に対する思い、一斉休校要請に対して思ったこと感じたことなど。

Q2 学校臨時休業に関わること

 通常ならいるはずの子供たちがいない、もしくは、いるけれども授業はしていないという、ふだんとは異なる状況で仕事をされていて、気づいたこと、考えたことは、どのようなことですか。

突然の休校要請に対応する中で考えたこと

子供なりの心構えを持たせる

 新型コロナウイルス(以下、コロナ)の感染状況により、先行して臨時休校などの措置をとっていた自治体はあった。
 文部科学省ですら“寝耳に水”のような形で、総理大臣から全国に休校の要請が出されたのが2月28日。金曜日であったため、その日が今年度の最終日になってしまった学校も多数あったようだ。「今日でこのクラスは解散です」という、学級担任のもの悲しい挨拶も新聞で取り上げられていた。土曜日に家庭学習用の課題等を大至急作成し、週明けの月曜日に子供たちに渡して、翌3月3日から休校に入った自治体もあった。
 その後、極めて簡素化した卒業式や終業式は行われたものの、2020年3月は全国の学校の空白の1か月になってしまった。
 4月7日、緊急事態宣言が出されたことで、新年度になっても休校が解除できずにいる学校がいまだに多数ある(本稿をまとめているのは4月末)。
 休校に関して学校が困難な校長判断を迫られることがなかった点は、不幸中の幸いと言えるが、この異常事態下で、校長先生たちは何を考え、どうしたのだろう。

◆全国一斉の臨時休校要請の前に、校長として、「6年生を送る会」「卒業を祝う会(保護者主催)」等、目前に迫っている卒業関連行事を行うべきか中止すべきかの判断を迫られていた。私は全て中止を決断し、保護者に文書をもって連絡した直後に首相の休校要請が発表されたので、正直いって安堵を感じた。
 実際に児童が感染したわけではないので、役に立ったことや、こうしておけばよかったと思うことはないが、これまで行っているインフルエンザの予防策を徹底する必要があると、危機感は高まった。
(小学校)

 毎年、既知のインフルエンザに子供たちが感染して、学級が閉鎖になる事態は各地で起きるが、コロナに関しては2月中にそんなことにはならなかった。突然の休校要請には賛否あったが、少なくとも子供たちの集団感染が未然に防げたことは大きな救いだ。

◆本市では、首相の休校要請(金曜日)の後、準備期間を確保して3月3日の火曜日から休業となった。短い準備時間であったが、子供たちや保護者への説明、家での課題や休業中の過ごし方などのプリントを準備することができた。子供と向き合う時間が取れたことで、落ち着いた気持ちと、コロナに対する子供なりの対応についての心構えを持たせることができたと思う。
 校長としては、判断力の求められる状況であった。区内の校長・市校長会との連携など、保護者や子供が不安にならないように情報共有しながら進めていけたことはとてもよかった。日頃の関係性や組織体制がプラスに働いたと思う。
 刻々と変わる情報の中で、常に子供や保護者、我々職員や職員の家族の命を最優先に、物事を判断し、整理し、発信し、実行していったが、先の見通しが持てない中でも冷静に対応できたのは、職場のチーム力によるところがとても大きいと感じた。
 卒業式は、様々な規制の中、子供や保護者の心に残るものをと知恵を出し合い、創り上げた。6年生の子供たちに1年間、「どんな卒業を迎えたい?」と考えさせながら過ごしてきたので、ぶっつけ本番でもとても立派で、感動させられた。保護者も学校の対応を理解し、感激していただいた。
(小学校)

 最終的な判断は教育委員会や校長の役割だが、判断を実行するときの大きな力になるのは、子供たちを含めた様々な意味でのチーム学校。ふだんからONE TEAM を構想しておきたい。

改めてつながりの大切さを実感

 学校のチーム力は、他の校長先生の回答にも出てくる。

◆危機管理対応の日常的な準備の大切さを再認識した。日常的に「チーム学校」として教職員が連携できていたことが強みであった。消毒や健康調査、分散登校などへ迅速、丁寧な対応ができた。
 一斉メールやグーグルフォーム活用の仕組みを、昨年5月に構築できていたことで、保護者との連携と連絡がスムーズに行えた。
 日頃からの人とのつながりの大切さ、保護者や地域との信頼関係が築かれていることの大切さを、改めて感じた。
(小学校)

 やがて“禁3密”も解除される。それからは、人々との思いきり密な関係を。

◆予想を超える範囲の事があったとき、改めて組織の力が試されると感じた。教員は、日々の授業に追われる毎日とは異なり、次年度に向けた創造的な話合いや活動に多くの時間を割くようになり、一体感が高まった。常に核となる教員にその種をまき続けておいたことがよかったと感じた。子供たちにはかわいそうなことをしたと思う。1か月という空白を今後どのように埋めていくか、考えているところです。(小学校)

 なお続く空白をどう埋めていくのか。最適解はなんなのだろう。

◆日頃から危機管理意識は高めていたつもりでしたが、“1か月の長期休校”は想定外でした。自治体としての判断がなされる間に「子供たちをただ自宅待機させることはできない」と、学習プリントの作成、確保を、担任に指示するなど準備に入りました。休校が決定すると先生方と改めて「想定外の危機管理が求められている」ことを共有しました。(小学校)

◆子供あっての学校であることを実感した。臨時休校を進めるに当たっては、本校の職員が一体となって協力、連携しながら、知恵や建設的な意見を出し合ってピンチを乗り切ることができた。こうした姿を見ることができ、頼もしさを感じた。(小学校)

 多くの回答に、「改めて」(言葉やニュアンス)が見える。

◆危機管理の大切さを考えるよい機会となった。小規模校だが、このような事態に際しては学業指導、安全指導、生活指導等、全てにおいて円滑に進めることができる強みを感じる。(小学校)

◆より一層の危機管理意識が大切だと痛感。災害でもいつ何時に被害に遭うかわからない中、想定できること、想定が難しいことが改めてわかった。国や県、市などから出た要請に対して、冷静に判断し、生徒、保護者、教職員の安心、安全を一番に考えた手立てを講じることのもどかしい気持ちで、今も一杯である。
「絶対安全」という言葉はないのが当たり前だが、「これが絶対」と自信を持って取りかかれていないこともまた、もどかしい。教員一同が一つになり、いろんな意見や思いを出し合い、教育活動の再開に向けて臨んでいる。
(中学校)

無責任な言い方だが、全員で今、考え得るベストを尽くすしかない。

子供が自ら判断し学ぶ力を

 大都市圏を中心に休校は長引くかもしれない。終息を黙って待つわけにはいかない。

◆自分の力で勉強することに挑戦してほしいと思い、「Eテレでたのしくまなぼう!」というプリントを作って、休校前に渡しました。テレビくらいしか、不平等にならずにできる物がなかったので。ICTの環境が整っていたら、もっといろいろなことに取り組めたと思います。(小学校)

 子供たちは大企業のようにテレワークはできない。回答のように、テレビ局各社は、どの局も同じような番組を流し続けるのではなく、各局交替で、午前中だけでも各教科の“授業”を放送してもらえないだろうか。教育に空洞を作ってしまうのは、国の将来にとってとんでもないダメージだ。

◆急な予定変更であったにもかかわらず、教職員はもとより生徒、保護者、地域の皆さんが大変、協力的だった。日頃、学校の教育活動が順調に進んでいるベースが確認できた。
 様々な会議等が中止になったが、諸活動が停滞したり、極端に困っていたりすることはない。電話、メール等で用が足りることも多い。この期間での勤務の在り方、様々な活動の仕方を踏まえ、今後の教職員の働き方改革に生かしていかなければならないと強く感じている。
(中学校)

 どの学校でも思いきり簡素化した卒業式が行われていた。子供たちに申し訳ないと思いながらも、やってみると案外、心温まる式になったという感想も聞いた。当たり前だと思ってきた式の練習や大勢の来賓の出席や祝電披露は、果たして必要不可欠のものだったのか。転んでただで起きたくはない。
 こんなときだからこそ、「こうしておけばよかった」という気づきもあった。

◆iPadアプリ、ウェブ会議を進めておけばよかった。職員の在宅勤務マニュアルを作成しておけばよかった。保護者からの質問、問合せを学校用の学年主任メールでできるようにしておけばよかった。(小学校)

◆子供がいることが当たり前の環境から一転したため、当初は戸惑いがあった。併せて、学校教育が担う部分の大きさを改めて実感した。このような中で、学習や生活など、指示を待って動くものもあるが、子供、家庭が自ら動けるようにしておくことも大切であると思う。例えば自主学習。日頃から自分で考え、自分で学ぶことが身についている子供たちに育てておくことも、対応力の一つだと考える。生活の中で体を動かすことなども含め、周囲の働き掛けと合わせて、そんな力も必要であると考える。(小学校)

 思考して、判断して、それを実際に表現する。学校が再開したら、改めて子供たちの生きる力を育みたい。

◆家庭にいるよりも学校にいるほうが、心が安定する子供がいます。日本社会を見渡せば、家庭で虐待されている子供がいます。そうした子供たちをずっと家庭で過ごさせることで、どれほどその子が傷つくことになるか、危険なことなのかを、臨時休校を要請した方は想像する力を持っているのでしょうか。一人親の子供や、外国に関わりを持つ子供も同じです。また、高校の受験を目前にして、心穏やかでない生徒もたくさんいます。
 彼らが友達や先生と話をしたり、授業を受けたりして学校生活を送ることの意義を痛感します。
(中学校)

 すでにこう動き出した。人と人との物理的な接触も禁じられている。それでもできることを創出していかなければならない。

(第2回 「長期休業を学校の業務改善のきっかけに」に続く)

教育ジャーナル Vol.3

特集

コロナに負けない! 教師の姿、学校の風景

~学校教育に空白をつくらないために~

■ポストコロナ社会の学校教育を考
 える

■あらためて、学校中でスタートカ
 リキュラム

■本郷台小学校、6月後半の2週間

■ウィズコロナだから見えるポスト
 コロナ

教育ジャーナル Vol.2

アンケート特集

子供たちがいない学校で、何を思いましたか?

■2020年3月に感じたこと考えたこと
 ・子供なりの心構えを持たせた
 ・学校の業務改善のきっかけに

■校長をやっていてよかった~この
 1年の感激~

 本欄では、最新号(Vol.3)及びその前号(Vol.2)の新型コロナウイルス感染拡大が学校に及ぼした影響に対する学校現場の対応に関わる記事を集め、再構成して紹介します。
 連載前半では、学校一斉休業中の3月に実施したアンケート調査から、学校現場の対応状況やそこで現場の先生方が何を考えていたのかを明らかにします。
 続いて、学校休業中も子供たちの学びを止めないための学校現場の取組を紹介。最後に、それらを踏まえ、ポストコロナの学校現場のあり方について考えます。

バックナンバー

コロナに負けない! 教師の姿、学校の風景

~学校教育に空白をつくらないために~

8月7日 第1回 突然の一斉休校要請~学校現場の思い~
8月24日 第2回 長期休業を学校の業務改善のきっかけに
9月1日 第3回 ポストコロナ社会の学校教育を考える
9月14日 第4回 ウイズコロナだから見えるポストコロナ

あかはなそえじ先生の「ひとりじゃないよ」 特別編

10月6日 ケアする人のケア ~教師自身のケアはどうするの?~

コロナ禍を 行事のねらい再確認の好機に

~コロナに負けない―ピンチをチャンスに~

10月19日 第1回 いつもとは違う行事の風景
11月2日 第2回 行事中止の代わりに実施したこと
11月17日 第3回 行事見直しを通じて気づいたこと