close

教育ジャーナル Vol.3 第2回

学研『教育ジャーナル』は、全国の学校・先生方にお届けしている隔月刊誌です。
Web版は、毎月2回特集記事を公開しています。本誌では、更に充実した内容で様々な記事をご紹介しています。

コロナに負けない! 教師の姿、学校の風景
~学校教育に空白をつくらないために~

 新型コロナウイルスの感染拡大によって、全国の学校の多くは、過去に例を見ない長期の休業を余儀なくされた。そうした中で学校現場の先生方は、何を考え、子供たちの学びを止めないためにどんな取組をしてきたのか。

第2回 長期休業を学校の業務改善のきっかけに

渡辺研 教育ジャーナリスト

 前回に引き続き、3月に本誌が、全国各地の公立小中学校の校長先生に実施したアンケートの結果をもとに論を進める。アンケートの質問事項は、以下のとおり。

●学校のカレンダーから「2020年3月」が消えてしまいました。いつもと異なる「3月」を過ごして、どのようなことを感じたり、考えたりしましたか。以下の2点についてお答えください。

Q1 学校、教育に関わること

 臨時休業を進める中で、考えたこと、感じたことはどのようなことですか?
 例えば、日頃の備えが役に立ったことや、「こうしておけばよかった」と思ったこと、子供たちや保護者に対する思い、同僚の先生方に対する思い、一斉休校要請に対して思ったこと感じたことなど。

Q2 学校臨時休業に関わること

 通常ならいるはずの子供たちがいない、もしくは、いるけれども授業はしていないという、ふだんとは異なる状況で仕事をされていて、気づいたこと、考えたことは、どのようなことですか。

「学校」を見直す機会に

改めて考えてみると

 「ふと、気づいたことは?」と質問したら、こんな回答をいただいた。

◆やはり、学校は子供たちがいて初めて躍動するのだと思います。やり取り、対話、触れ合いなど、当たり前にできていたことができなくなり、とても寂しかったです。(小学校)

 どの先生方も寂しかったと思うが、子供たちがいないからこそ改めて気づいた。

◆年度末だったので、通知表、指導要録等の事務処理の仕事が多々あり、改めて通常は授業をしながらこれらの仕事をこなしていたのかと、業務の負担の大きさを実感した。(小学校)

◆教員には日々、時間の制約が大きい。教材研究をするにも要録を書くにも大きな時間を与えられ、じっくりと子供たちのことを考える機会となった。(中学校)

◆教員たちは、この時間は主に成績処理に充てることができた。併せて、年間の行事の在り方ついてじっくりと考えることができた。行事そのもの、内容や進め方など、子供にとって本当に必要かどうか、教師の働き方にとってどうかなどの視点で見直すことができた。(小学校)

◆じっくりと物事を考える時間が増えて、教職員のコミュニケーションが密になったように思う。(小学校)

 本当に教師にはゆとりがなかった。業務のうちで一番肝心なことが抜け落ちたのは本末転倒だが、この実感は忘れたくない。

◆この間、成績処理、集金業務、様々な行事の自粛等、課題が多かったが、春休みを長くして、新年度に備えるようにしてもよいのではないかと感じた。(小学校)

 春休みを長く……、毎年度末の学校の様子を見てきた、全く賛成だ。

◆生徒がいないこと、授業ができないことなどは仕方がないことである。大切なのは、再開時、生徒を迎えるときの準備を最大限、行うことであると職員には話してきた。併せて、新学習指導要領の全面実施に向けての準備、計画づくりをすることができると、プラスに考えてきた。(中学校)

◆通常の長期休業とは違い、再開のメドは立つのか、子供たちは穏やかに過ごしているのか、地元や近隣で感染があったらどうするのかなど、重苦しさを感じる中での業務となっています。また、事象に対して管理職が感じる危機感と一人一人の職員が感じる危機感に差があることを改めて感じ、この温度差をどう縮めていくのか考えさせられる機会となりました。(小学校)

 4月末、連休に入った頃から「9月入学・新学期論」が表立ってきた。緊急措置としてあり得ないことではない。夏休みの短縮だけでこのブランクが収まるとは思えない。先の見通しが全く立たない現状では、むしろ現実的とさえ思える(本稿は、4月末に執筆)。
 実施にはいくつもの法改正が必要だとか課題は多い。でも、それは別のところで考えてもらう話。もしそうなったとき、9月まではどうするのか、新学期をスタートできた学校はどうするのかなど、現場として考えておきたい問題はあるだろう。来年9月までを“2020年度”として、1年半で1年分の学習を消化するという大胆な発想もある。全てが停滞している今、在宅勤務中の宿題として、考えてみておいたほうがいいように思う。

2019年度の手応え

 3月に実施したアンケートに回答してくださった校長先生たちは、それぞれに残り1か月を2019年度の総仕上げとすべく取り組んでいたのではないかと思う。ラストスパートの機会を奪われてしまった形だが、それでも、多くの手応えを感じていたようだ。

◆学校全体が一つになって、校長のビジョンが現実となったこと。校長の思い、目指す学校を具体的(子供レベル)にして、「あいさつ(おはようございます、こんにちは、会釈)を広める」として全校児童、職員に伝えたところ、あいさつが広まった。「学校が楽しいという声を90%にしたい」と子供たちに伝えたところ、各委員会、クラスでアイデアを出し合って取組を行い、87%から89%、91%へと上昇していった。(小学校)

◆自校の伝統を受け継ぎながらも、情勢に合わせた学校経営を進め、職員から「校長先生、やってよかったですね」、保護者や地域から「学校(子供の姿や学校の雰囲気)が変わりましたね」などの声をもらったときです。(小学校)

◆猛暑の中での運動会、コロナウイルスなど、ピンチのときに教職員が頑張っている姿を見たこと。足に障害のある児童に卒業証書を渡したこと。校内いじめ対策委員会でP‌T‌A会長さんから「学校にはよくやってもらっている」と感謝されたこと。学校運営協議会で委員の方から「地域のお祭りに児童の参加が増えた」と言われたこと。(小学校)

 管理職としては、教職員との関わりや姿が喜びになる。

◆職員が自ら考えを出し合い、学校をよりよく改善していこうとしていたこと。大変うれしかった。(小学校)

◆あるミドルの先生から「今まで、こんなに意見を言えなかった。校長先生だから言えるようになった。安心して仕事ができる」と、涙をこぼしながら言ってもらえました。役に立っていることがわかって、とてもうれしかったです。(小学校)

◆課題を抱えていた教員が、自ら「課題解決研修」を受け、1年間、取り組んだ結果、大きな成果が見られた。個人の頑張りとともに、学年がO‌J‌Tという形で温かく応えてくれたことも大きく、その教員の成長と、その成長を支える職員の力、すばらしさは忘れることができない。(小学校)

 それでも、やはり子供たちが登場する。

◆危機管理の大切さを考えるよい機会となった。小規模校だが、このような事態に際しては学業指導、安全指導、生活指導等、全てにおいて円滑に進めることができる強みを感じる。(小学校)

◆合唱発表会が終わった後、会場の外で振り返りの時間を持っていた際、生徒と学年の職員が、みんなよい表情をしていた。その場の雰囲気がとても温かく感じられた。見ているだけで幸せな光景だった。そんな場面に出合えたことがうれしかった。(中学校)

 中学校の合唱祭は、なぜか妙に感激する。練習する声が校舎の外に聴こえてくるだけでも、うれしくなる。

◆生活・総合、スタートカリキュラムを重点研として行ってきた。子供が主体的に学ぶ姿、関わり合いながら探究的に学ぶ姿、思いが夢となり、その夢が実現したときの達成感を味わっている姿をたくさん見ることができた。子供のこうした姿を目の当たりにできたことが、教育者としての喜びです。(小学校)

 何も特別なことは望まない。ただ、1日も早く子供たちに会いたい。ふだんの学校生活を取り戻したい。

休みでも、学校のことが気になって……

 3月の出来事はハートウォーミングな話題で締めくくりたい。

◆子供は〝人・物・事〟と関わりながら学ぶものだなと改めて感じました。
 本校では、学校休業中も、1~4年生と特別支援学級の児童を対象に緊急受入れを実施していました。ある日、受入れ児童ではない1年生が、父親と一緒に花を見に来ました。育てた花が心配でたまらなかったそうです。その児童は、父親に、自分の花のこと、友達の花のことなどいろいろなことを話して聞かせていました。父親は、自分の子供がこれだけ多くのこと、しかも友達の花のことまで語れることに驚いていようです。
 日頃の教育について、子供の育ちについて、「今日のこの子の姿から、改めて考えさせられた」と笑顔で帰って行かれました。
(小学校)

 子供たちが登校できないことは問題だらけだ。でも、できるだけプラス面を見つけていかないと、この難局は乗りきれない。

(第3回 「ポストコロナ社会の学校教育を考える」に続く)

教育ジャーナル Vol.3

特集

コロナに負けない! 教師の姿、学校の風景

~学校教育に空白をつくらないために~

■ポストコロナ社会の学校教育を考
 える

■あらためて、学校中でスタートカ
 リキュラム

■本郷台小学校、6月後半の2週間

■ウィズコロナだから見えるポスト
 コロナ

教育ジャーナル Vol.2

アンケート特集

子供たちがいない学校で、何を思いましたか?

■2020年3月に感じたこと考えたこと
 ・子供なりの心構えを持たせた
 ・学校の業務改善のきっかけに

■校長をやっていてよかった~この
 1年の感激~

 本欄では、最新号(Vol.3)及びその前号(Vol.2)の新型コロナウイルス感染拡大が学校に及ぼした影響に対する学校現場の対応に関わる記事を集め、再構成して紹介します。
 連載前半では、学校一斉休業中の3月に実施したアンケート調査から、学校現場の対応状況やそこで現場の先生方が何を考えていたのかを明らかにします。
 続いて、学校休業中も子供たちの学びを止めないための学校現場の取組を紹介。最後に、それらを踏まえ、ポストコロナの学校現場のあり方について考えます。

バックナンバー

コロナに負けない! 教師の姿、学校の風景

~学校教育に空白をつくらないために~

8月7日 第1回 突然の一斉休校要請~学校現場の思い~
8月24日 第2回 長期休業を学校の業務改善のきっかけに
9月1日 第3回 ポストコロナ社会の学校教育を考える
9月14日 第4回 ウイズコロナだから見えるポストコロナ

あかはなそえじ先生の「ひとりじゃないよ」 特別編

10月6日 ケアする人のケア ~教師自身のケアはどうするの?~

コロナ禍を 行事のねらい再確認の好機に

~コロナに負けない―ピンチをチャンスに~

10月19日 第1回 いつもとは違う行事の風景
11月2日 第2回 行事中止の代わりに実施したこと
11月17日 第3回 行事見直しを通じて気づいたこと