close

教育ジャーナル 特別編

学研『教育ジャーナル』は、全国の学校・先生方にお届けしている隔月刊誌です。
Web版は、毎月2回特集記事を公開しています。本誌では、更に充実した内容で様々な記事をご紹介しています。

あかはなそえじ先生の「ひとりじゃないよ」 特別編

 副島賢和先生の新刊『はなれていても、だいじょうぶ』が8月25日に発売されました。これに合わせて今回、本誌で本年3月号まで連載してこられた『ひとりじゃないよ』の特別編として、教師自身のケアについて、副島先生にご寄稿いただきました。

ケアする人のケア
~教師自身のケアはどうするの?~

副島賢和

昭和大学大学院保健医療学研究科准教授
昭和大学附属病院内学級担当

「子供に会えないのです」

 この夏、オンラインを中心とした幾つかの研修に参加をさせていただきました。
 ある病弱教育の研修会で、教えていただいたことがあります。
 それは、「子供に会えない」ということでした。そのようなことが、病気を抱えている子供たちの教育保障の場で起きているのだ、と考えました。
 コロナ禍の状況で休校になったときに、多くの学校や先生方は、子供の学びを止めないために、様々な取組を行ってくださいました。プリント、分散登校、訪問、オンラインなど、子供たちの学びを止めないために、子供を主役にした学びの継続への工夫が行われたように思います。
 学校が再開し、院内学級や訪問教育の先生方も、子供に関わる方法を工夫されていました。ただ、病院やご家庭の方針の影響は大きく、この時期になっても子供に会うことはもちろん、病棟や家の中に入る許可が下りないところもあるというのです。
 この状況は病弱教育だけの話ではないようです。病気でなくても、学校に通うことができなくなっている子供たちが増えているという報道もあります。
 東日本大震災後のことを考えたら、ストレスにさらされた子供たちが、その後にどのような行動を取るのか、ある程度、想像がつきます。
 不登校やいじめなどのいわゆる不適応と言われる行動が増えていくかもしれません。
 そのような行動を取る子供たちと向き合ったり、不登校や病気など、なんらかの理由で子供たちと関わることができなかったりすると、教師自身も傷ついてしまうでしょう。
 子供との関わりは、教師にとっても、自身のアイデンティティーを保つために大切なことであるということを、改めて考えました。

ケアをする人をケアする

 先生方や学校は、つらい思いをしている子供たちを支えるように求められています。そんな先生方も、今回の出来事においては、当事者です。
 子供たちに関わる先生方も、様々な負担を抱えながら、教育活動を行っています。負担がかかればかかるほど、最終的に子供たちにしわ寄せがいくことも想像できます。
 それを防ぐためには、先生方のケアがとても大切になります。
 しんどさを抱えた人に関わる人たちのケア。いわゆる「ケアする人のケア」を考えていかなくてはなりません。
 バーンアウトを防いだり、うつ状態にならなかったり、「そのようなことに効果があったと思われるものはなんですか?」と多くの先生方にお聞きしました。

・「助けて」と言える職場の仲間の存在
・ モチベーションを高めてくれる子供たちとの関わり
・ 教師ではない自分でいられる時間


という回答が多くありました。
 そんな仲間や関わり、時間を作っていくことが大切です。
 わかってはいるけど「助けて」と言うのは難しい、子供たちとゆっくり関わることができない、そんな時間の余裕はない、と思われるかもしれません。
 そんなときは、今、自分が感じていることをしっかり、ゆっくり味わっていただけたらと思います。

――基本的な感情でいいのです。
「おいしいなあ」「きれいだなあ」「うれしいなあ」「美しいなあ」「悲しいなあ」「悔しいなあ」「嫌だなあ」
――体の感覚もいいかもしれません。
「暖かいなあ」「寒いなあ」「冷たいなあ」「この辺りが固くなっているなあ」
――ゆっくり体を動かしながら。
「動いているぞ」「緩んできたぞ」「今、息をしているよ」「気持ちいいなあ」


 ふだん、周りのことばかりに気持ちや意識を向けざるを得ないでしょうが、ちょっとした隙間の時間でもよいので、自分が感じていることに気持ちや意識を向けていただけたらいいと思います。  感じたことを、信頼できる友達や仲間、先輩にお伝えできるととてもいいですね。

はなれていても、だいじょうぶ

 病弱教育の知見がコロナによるこの状況にお役に立てるかもしれない、できたらお役にたちたいと考え、「感染対策で子供たちに直接会えないときにどのように関わり、学びの保障をしているのか?」ということを、新しい書籍『はなれていても、だいじょうぶ』やYouTube などのメディアを通して、お伝えさせていただいています。
 5年前に出版しました『ひとりじゃないよ』は、病院内学級における病弱教育の基礎編として、今回の新著『はなれていても、だいじょうぶ』は、病弱教育の実践編として書かせていただいております。
 どちらの本も、子供たちや保護者、教師や医療関係の方々との関わりで教えていただいたことをもとに、傷つきのある子供たちの成長や回復のためにできることを、自分なりに考えて記したものです。
「それは入院している病気の子供の話でしょう」と遠くに置かずに、「似ている」「使えそうだ」「そんなこともあるのだ」とご自分の文化に翻訳して、いいとこ取りをしていただけるとうれしいです。この難局を子供も含めたみんなで、知恵と力を合わせてしのいでいきたいと思います。その姿を子供たちに見せていきたいと思うのです。

プロフィール
1966年、福岡県生まれ。都内の公立小学校教諭時代、99年に東京都の派遣研修で心理学を学ぶ。2006年より品川区立清水台小学校教諭・昭和大学病院内さいかち学級担任に。学校心理士スーパーバイザー。14年より現職。ホスピタルクラウンとしても活躍中。

好評発売中
はなれていても、だいじょうぶ
~今こそ伝えたい、院内学級で教師として学んだこと~

 コロナ禍で日本中の子供たちが、学校に通うことができないという状況になった。その時の子供たちの行動や、その時に子供たちが感じていたことなどは、きっと院内学級の子供たちのそれらと共通することがたくさんあるはず。
 子供たちに寄り添い、子供たちの学びを保障するために奮闘してきた「あかはな先生」からの、優しくも熱いメッセージ。

著者:副島賢和
価格:本体1400 円+税
四六判・全208 ページ
学研教育みらい 刊

教育ジャーナル Vol.4

特集

がんばれ!公立校!!/職員室改造
計画

こんなときだからこそ、教師自身の働き方も見つめ直してみよう

横浜市の取組を通して考える

第2特集

校長アンケート/学校行事編

行事の本質的なねらいを、改めて認識できましたか?

①こんな工夫、こんな議論で行事を
 実施

②代わりにどんな行事を考えました
 か

③行事を見直す過程で気づいたこ
 と、考えたことは?

■少人数学級導入の機運高まる

■学校における新型コロナウイルス
 感染症の現状

今後の予定

コロナ禍を契機に学校行事を見直す

 コロナ禍による時数不足への対応と、感染拡大防止のために、学校行事を根本から見直さなければならない状況となりました。そのとき学校では、どんな議論により、どんな結論を導き出したのか。従来の行事の代替として、どんなねらいでどんな行事を実施しようとしているのか。各地の校長先生に伺いました。

※次回のタイトルは変更になることがあります。ご了承ください。

バックナンバー

コロナに負けない! 教師の姿、学校の風景

~学校教育に空白をつくらないために~

8月7日 第1回 突然の一斉休校要請~学校現場の思い~
8月24日 第2回 長期休業を学校の業務改善のきっかけに
9月1日 第3回 ポストコロナ社会の学校教育を考える
9月14日 第4回 ウイズコロナだから見えるポストコロナ

あかはなそえじ先生の「ひとりじゃないよ」 特別編

10月6日 ケアする人のケア~教師自身のケアはどうするの?~

コロナ禍を 行事のねらい再確認の好機に

~コロナに負けない―ピンチをチャンスに~

10月19日 第1回 いつもとは違う行事の風景
11月2日 第2回 行事中止の代わりに実施したこと
11月17日 第3回 行事見直しを通じて気づいたこと