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教育ジャーナル Vol.4 第1回

学研『教育ジャーナル』は、全国の学校・先生方にお届けしている隔月刊誌です。
Web版は、毎月2回特集記事を公開しています。本誌では、更に充実した内容で様々な記事をご紹介しています。

コロナ禍を行事のねらい再確認の好機に
~コロナに負けない ― ピンチをチャンスに~

 例年どおりには実施できなくなった学校行事。何を残すのか、どんな形でなら実行できるのか……。ともすれば前年踏襲で続けられてきた行事の、本質的な意義や行事の在り方を再確認するとともに、子供にも教師にも負担感の少ない実施方法などについて考えざるを得ない、そんな機会になったのではないか。

第1回 いつもとは違う行事の風景
~こんな工夫、こんな議論で行事を実施します~

渡辺研 教育ジャーナリスト

 本年8月、例年より短縮された夏期休業期間中に、行事の見直しについてのアンケートを実施した。質問内容は、以下の4問。

Q1 Q1は以下の14の行事の、今年度の実施状況について、「例年どおり実施」「規模縮小等の工夫をして実施」「中止」「もともと予定なし」「その他」のいずれかを選んでいただいた。

 14の行事=「運動会・体育大会」、「遠足」、「校外学習」、「修学旅行」、「宿泊を伴う自然教室等」、「職場体験学習」、「生活科・まちたんけん」、「総合・地域探究」、「児童・生徒(会)による全校集会」、「地域との交流活動」、「生活・総合等の学習発表会」、「文化祭」、「合唱祭」、「その他 学校の伝統行事や今年度特定の行事」

Q2 「規模縮小等の工夫をして実施」されたうち、工夫、検討されたものについて、工夫点や具体的な実施形態、議論された内容をお聞かせください。

Q3 中止した行事等について、そのねらいを補うために実施することにした代替活動がありましたら、その内容等をご紹介ください。

Q4 行事を見直すにあたって考えたこと、先生方から出された意見、思いなどを聞かせてください。

< Q1 の結果>ほとんどの学校で「中止」されたのが合唱祭、職場(業)体験。「規模縮小」と「中止」がほぼ半々だったのは運動会・体育大会、校外学習、宿泊体験、地域との交流行事、生活・総合等の学習発表会。「規模縮小」は修学旅行、まちたんけんや地域探究、児童・生徒会による全校集会。遠足は「中止」が多く、修学旅行を「中止」した学校もある。泣く泣く中止、なんとか子供たちの楽しみや要望に応えたい……。いろいろな思いが垣間見える。

これまでとは違う運動会風景

◆現在は教育委員会の指示に沿って行事は全て実施していない。できる範囲内で活動等の企画はしているが、県による第2波非常事態宣言もあり、不透明である。(中学校)

 アンケートをお願いしたのは全国的な短い夏休み中だが、秋になっても状況は好転していない。ガイドラインに沿えば、確かに中止が無難。それでも、子供たちのためになんとか実施したいという思いが伝わってくる。その行事の一番が、やはり運動会・体育大会。中止と実施、ほぼ半々が、葛藤の表れ。

◆運動会は体育行事として位置づけられており、体育的側面と集団意識の向上という側面を持っている。所属感、連帯感、一体感、みんなで一つのものを創り上げていくプロセスなど、学校教育として大切にしたい学びをいかにして生み出していくか、職員で議論を重ねている。(小学校)

 含んでいる教育的な要素を取り出してみると、おいそれと中止にしたくない。何より、学校生活の中で多くの子供たちが、きっと最も楽しみにしている行事だ。

◆名称や内容、練習時間等について話し合った。「3密を避けること」「練習にかけられる時間をどこまで確保できるか」の2点と、「子供たちの活躍の場や達成感を味わえること」の1点を話合いの中心に置いた。(小学校)

◆例年5月実施を9月に延期し、日曜開催を平日3日間で2学年ずつ、種目や内容を大幅に変更して実施する。ねらいや運動会で目指す資質・能力について議論した上で、実施内容について検討を重ねた。(小学校)

 “例年どおり”ではないから、教師たちは新たな運動会・体育大会を創造した。

◆例年どおりの競技が感染防止の点からできないため、縦割り形式でのダンス大会を導入した。(中学校)

◆全校同時開催を回避し、2学年ごとに登場、他学年は教室に待機。種目を徒競走と集団演技に限定し、徒競走はレーンを空けて走行、集団演技は人との間隔を確保した上で、声を出さずに同方向を守る。保護者(家族)の参観を児童1名につき2名までに制限し、入れ替え制にした。(小学校)

◆熱中症のことも考えて11月に延期。なるべく保護者も参観できるよう、児童は椅子を使わず、新聞紙で作った座布団に座り、保護者は立ち見で見てもらうようにします。種目はメートル走とダンスと応援。規模は縮小しても、応援合戦は子供たちがやりたいので実施します。(小学校)

 苦肉の策とはいえ「運動会・体育大会はこうでなければならない」をいったん壊すことができた。“ジャスト・ビギニング”だと期待したい。

◆当初の5月開催予定を、4月の臨時休校の決定で11月に変更。11月開催も他教科の授業時数確保、感染状況等を見通し、午前開催に変更、集団演技は外した。運動会については今回の感染症対応にかかわらず、近年の気候状況からして、屋外で長時間運動、活動することは、季節が限られる。これを機会に、運動会の在り方を根本から見直す。(小学校)

 見直すときに、こんな発想があってもよいのではないだろうか。

◆6年生が企画・運営を行い、児童によるスポーツフェスティバルを実施。6年生の思い出づくりの観点から、11月に実施予定。密を避けるため、保護者は参加しない。(小学校)

 前年並み、あるいは前年以上に見栄えのいい活動をつくりたい……もしかするとどこかに“教師のための”運動会になっていた部分があったのではないか。6年生がこれまでの経験や思いを込め、発想力、問題解決力、熟議を駆使し、どんな運動会にするのか、保護者も見たいはずだが、そこは残念だ。

修学旅行実施の裏側では……

 子供たちの大きな思い出になる修学旅行。県外への集団での移動にはまだ懸念があるものの、規模を縮小して実施する学校のほうが多かった。修学旅行の仕組みにはいろいろ事情があるようだが、教育的ねらい以上に子供たちが楽しみにしていることは事実。

◆同じ中学校区の小学校が連合で実施する予定だったが、各小学校単独で実施または校外学習に変更し、県内での実施とした。(小学校)

◆修学旅行は「旅行中に体調不良の生徒が出たときには保護者が引き取りに来る」という市共通のルールが設定されたため、行き先を東北地方から道内に変更した。(中学校)

 感染レベルが都道府県それぞれ異なるため、そういう判断になるのだろう。

◆6年生の修学旅行、5年生の宿泊体験学習は、いずれも2泊3日の予定を1泊2日に変更。往復を貸切バスによる移動に限定。宿泊地部屋数を増加し、1部屋の宿泊人数を極力少なくした。現地での見学等では、学校再開後の分散登校時の教室人数密度よりも低い状況となる場面を抽出し、不特定多数との接点を極力排除した。万一、発熱等が発生した際の独自ガイドラインを策定し、保護者の理解を求めた。(小学校)

 想像していた修学旅行と比べると、少し窮屈な旅だったかもしれない。でも、高学年の子供たちなら、教師たちが一生懸命工夫したからこの旅が実現したのだと理解できる。きっと小学校生活の印象に残る出来事になることだろう。安全を願うばかりだ。

◆修学旅行、宿泊を伴う自然教室等は、7月に市内の学校で感染の3例目が出たところで、全て中止とした。本年度は、現時点では公共交通機関、バス等を使った校外活動そのものを行わない方向で考えている。(小学校)

 もちろん、こうした判断もある。本当に日本中の学校が、正解のない、情報共有もあまり役に立たない課題に直面し、悪戦苦闘している。

発表会の参観者をどうしよう

 学習発表会は文字どおり、子供たちの学習の成果を見てもらう機会で、当然、ギャラリーも必要。ここにも葛藤が表れている(中止と実施がほぼ半々)。

◆コロナ禍においても探究的な学びの灯は消してはならない。職員にもそう伝え、生活科や総合を核として探究的な学習を進めている。例年、発表会を行ってきており、子供にとっても当たり前の学習プロセスとなっている。密を避け、いかに子供が自分たちの学びを伝える場とすることができるか、議論を重ねてきた。保護者が各教室に入ったり、子供同士が見合ったりすることはリスクが高いため、1週間かけて1クラスずつ順番に体育館で発表することにした。保護者も発表クラスの保護者だけが来校する。(小学校)

◆教育委員会のガイドラインにより、学校全体での学習発表会ができないため、授業時数確保のため設定された月2回の土曜授業を振り分けて、学年ごとで実施することにした。(小学校)

 学習発表会では、これまで合唱や合奏等を発表してきた学校もある。しかし合唱、合奏は、授業でも制限がかけられていた。

◆例年、体育館において、主に演劇、合唱、合奏等を中心にして、保護者、地域等を対象にして公開実施してきた。本年は学年ごとに体育館及び校庭にて実施(場所は学年の内容に応じて選ぶ)。学校外への公開については保護者(1家庭1名)のみとし、保護者に対して事前の健康チェックを依頼する。(小学校)

◆全校が集まっての合唱コンクールを変更し、学年ごとの音楽発表会で実施予定。(中学校)

◆話し合ったことは、「感染症予防の観点から実施の是非」「リスクの高低の視点での発表内容」「発表内容ごとの感染予防策」。その結果、工夫したことは「合唱や合奏は間隔を十分に空ける」「参観者数の制限 ①各家庭2名まで ②当日の児童の見学はなし」「練習時間を多く要する劇は、台詞を暗記しないで行うことや、情報機器などの活用により練習時間の削減を図る」「ステージやフロアの使い方の見直し」。(小学校)

 ポストコロナにも生かせる工夫もある。むしろそうであることが望ましい。
 まちたんけん等は工夫して行われている。

◆コロナ対策、熱中症対策を図りながら短時間で実施した。地域の主要な遺跡や史跡などを回り、地域の文化、歴史を学ぶことができた。管理職も安全指導を兼ねて引率した。当初、中止も考えたが、担任の綿密な計画のもと、感染症防止対策を万全に行って実施できたことは、教育課程上よかった。(小学校)

◆生活科まちたんけんについては、体験に伴う「気づき」が重要と捉え、3密やソーシャルディスタンスに十分に配慮し、短時間という条件つきで、現時点では実施を考えている。ただ、今後の市中での感染状況によっては映像を見ながらの学習も考えていきたい。(小学校)

 学校の独自行事も挙げておく。

◆生徒会対面式。2、3年生から1年生に歓迎の手紙を渡す。1年生から2、3年生へお礼の手紙を渡す。(中学校)

 授業でも対話の代わりに書いて伝え合うことが重視されている。
 コロナに熱中症。自分の身を守るだけでも大変なのに、教師たちは学級30数人の子供たちの安全を守り、なおかつ可能な限りの教育活動を、なんとしてでも前に進めている。この労はいつか報われなければならない。

教育ジャーナル Vol.4

特集

がんばれ!公立校!!/職員室改造
計画

こんなときだからこそ、教師自身の働き方も見つめ直してみよう

横浜市の取組を通して考える

第2特集

校長アンケート/学校行事編

行事の本質的なねらいを、改めて認識できましたか?

①こんな工夫、こんな議論で行事を
 実施

②代わりにどんな行事を考えました
 か

③行事を見直す過程で気づいたこ
 と、考えたことは?

ほか

バックナンバー

コロナに負けない! 教師の姿、学校の風景

~学校教育に空白をつくらないために~

8月7日 第1回 突然の一斉休校要請~学校現場の思い~
8月24日 第2回 長期休業を学校の業務改善のきっかけに
9月1日 第3回 ポストコロナ社会の学校教育を考える
9月14日 第4回 ウイズコロナだから見えるポストコロナ

あかはなそえじ先生の「ひとりじゃないよ」 特別編

10月6日 ケアする人のケア ~教師自身のケアはどうするの?~

コロナ禍を 行事のねらい再確認の好機に

~コロナに負けない―ピンチをチャンスに~

10月19日 第1回 いつもとは違う行事の風景
11月2日 第2回 行事中止の代わりに実施したこと
11月17日 第3回 行事見直しを通じて気づいたこと