close

教育ジャーナル Vol.4 第2回

学研『教育ジャーナル』は、全国の学校・先生方にお届けしている隔月刊誌です。
Web版は、毎月2回特集記事を公開しています。本誌では、更に充実した内容で様々な記事をご紹介しています。

コロナ禍を行事のねらい再確認の好機に
~コロナに負けない ― ピンチをチャンスに~

 例年どおりには実施できなくなった学校行事。何を残すのか、どんな形でなら実行できるのか……。ともすれば前年踏襲で続けられてきた行事の、本質的な意義や行事の在り方を再確認するとともに、子供にも教師にも負担感の少ない実施方法などについて考えざるを得ない、そんな機会になったのではないか。

第2回 行事中止の代わりに実施したこと
~行事のねらいをどう補うか~

渡辺研 教育ジャーナリスト

現実は厳しいが、そこから生まれるものも

 本年8月、例年より短縮された夏期休業期間中に、行事の見直しについてのアンケートを実施した。
 質問の一つとして次のことを聞いた。

「中止した行事等について、そのねらいを補うために実施することにした代替活動がありましたら、その内容等をご紹介ください。」(※全ての質問項目については、第1回を参照)

 質問はしたものの、現実は厳しかった。コロナや熱中症対策に加えて、今年度はスタート時に大きく時間を失った。

◆運動会は中止しましたが、コロナの感染リスクや教科指導時数の確保のため、代替活動は設けませんでした。(小学校)

 この学校では学習発表会は工夫して実施。全部が無理なら何を優先するか。各学校でそんな議論がなされたのだろう。長い目で見れば、これもきっと学校経営にはプラス。
 一方で、“どんな形でも、できる限りなんとかしたい”という思いも表れている。

◆遠足は、密集が避けられない、食事中のリスクが大きいことから中止。校内での活動で関わりを学ぶことで代替。音楽祭は、発声におけるリスク回避が難しいことから中止。音楽科の学習の内容として学ぶことにした。校外学習は、交通機関を利用するものは中止し、徒歩圏のもののみ実施する。(小学校)

◆修学旅行は、日帰りの校外学習にしました。密を避けて体験できるよう、アスレチックを貸し切りにして活動できるようにしました。(小学校)

 お土産を買う楽しみも体験できるよう安全に買い物ができる店や、弁当ではなくみんなで“外食”できるような店も確保した(修学旅行の2日目に体験するようなこと)。「ミニ旅行をした気分になれたらと思います」とも書かれていた。

◆児童会行事として例年7月に実施を予定していた全校での「お祭り」が実施困難となったので、代替活動として七夕飾りの制作を各学年で行い、地域商店街へ展示を依頼した。(小学校)

 地域とのコラボが、ポストコロナで何か新たな展開を生むかもしれない。
 中学生になると、できなくなった活動の“穴”を、生徒たち自身が埋めている例もある。

◆文化祭は、例年であればステージ発表や展示発表などを行っているが、今年度は個人でテーマを設定して「調査活動→発表」という形で実施する。(中学校)

◆総合的な学習の取組として予定していた職場体験や地域探究が中止となったため、新たに縦割りでの探究学習に取り組む予定。(中学校)

 縦割りの探究学習……より多様で、リーダーシップやフォロワーシップも学べそうだ。ポストコロナにも残せそうな活動だ。
 小学生も負けてはいない。

◆6年生代表委員会より、運動会に代わるミニスポーツ大会の提案があり、現在、実施について検討中。6年生だけでも実施したいと考えている。(小学校)

 ジュブナイル(少年少女期)に自分たちで意味を見いだすのも成長の証だ。

行事が育てる子供たちの姿

 学校は様々な活動を通して、児童生徒を育てていく。授業だけではなかなか育てきれない。

◆今年度は1年生を迎える会(児童会による全校集会)を中止した。高学年、特に6年生が学校のリーダーとして自覚できる活動としてもねらいを置いていたものだ。今年の6年生は、卒業式でバトンを受け取ることができない、入学式や迎える会で最高学年としての役割を果たす場がないなど、育ちのチャンスが少なくなっていた。
 そのことを踏まえ、1年生と6年生のミニ対面式、5年生による1年生へのプレゼント(児童が自分たちで考えてメダルを作成)など、密を避けた活動を代替活動として設定した。ミニ対面式は2日に分け、1日目は顔合わせと自己紹介、2日目は学校クイズなど、接触を伴わない活動を通して、心理的な距離を縮める活動を行った。こうした取組を各学年だより、学級だより、ホームページで発信、子供が自分たちの活動の価値を自覚化できるようにするとともに、保護者にその学びの価値を伝えることができた。もちろん、安全対策も詳述した。
(小学校)

 運動会には、高学年の育ちの場や機会としてのねらいがある。全校行事はおおむねその意味がある。全て中止は、やはり痛手だ。
 だから、数十年に1度しか巡ってこない大事な行事を6年生の手に委ねたのだろう。

◆体育館の老朽化に伴い、解体が10月から始まる。お世話になった体育館に感謝の気持ちを伝えるために「体育館お別れ会」を6年生が中心となって企画し、7月に開催した。
 3密を避けながら5、6年生のみ参加し、短時間で実施。全学級、体育館への感謝メッセージを模造紙に寄せ、6年生全員が体育館の絵を描き体育館に展示。コロナ禍の中、最終学年の6年生が主体的に自主的に取り組めたことはとてもよかった。また、「感謝の心」を醸成することができ、ほとんど行事がない中でも子供たち自らが行動し、創造力を発揮できたことがすばらしかった。
(小学校)

 中止の判断をしたり、代替を考えたりする過程で、各行事の重要性を再認識したことだろう。しかし、「ポストコロナでは安心して元に戻そう」ではなく、一拍おいていただきたい。
 その「一拍」に先生方が考えたことについては、次回に紹介する。

教育ジャーナル Vol.4

特集

がんばれ!公立校!!/職員室改造
計画

こんなときだからこそ、教師自身の働き方も見つめ直してみよう

横浜市の取組を通して考える

第2特集

校長アンケート/学校行事編

行事の本質的なねらいを、改めて認識できましたか?

①こんな工夫、こんな議論で行事を
 実施

②代わりにどんな行事を考えました
 か

③行事を見直す過程で気づいたこ
 と、考えたことは?

ほか

バックナンバー

コロナに負けない! 教師の姿、学校の風景

~学校教育に空白をつくらないために~

8月7日 第1回 突然の一斉休校要請~学校現場の思い~
8月24日 第2回 長期休業を学校の業務改善のきっかけに
9月1日 第3回 ポストコロナ社会の学校教育を考える
9月14日 第4回 ウイズコロナだから見えるポストコロナ

あかはなそえじ先生の「ひとりじゃないよ」 特別編

10月6日 ケアする人のケア ~教師自身のケアはどうするの?~

コロナ禍を 行事のねらい再確認の好機に

~コロナに負けない―ピンチをチャンスに~

10月19日 第1回 いつもとは違う行事の風景
11月2日 第2回 行事中止の代わりに実施したこと
11月17日 第3回 行事見直しを通じて気づいたこと