教育ジャーナル 霞が関発! NEWS FLASH
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霞が関発! NEWS FLASH
安倍晋三前首相が持病の悪化を理由に退陣し、菅義偉政権が9月16日に誕生した。菅首相は萩生田光一文部科学相を再任させるとともに、安倍前首相の私的諮問機関だった教育再生実行会議の存続を決めるなど、安倍内閣の教育政策の方向性を継承する姿勢を鮮明にした。
ただ、菅氏の首相就任で加速しそうな政策もある。教育分野の「デジタル化」だ。
菅内閣誕生で「教育デジタル化」急浮上
~萩生田文部科学相は慎重な姿勢~
大久保 昂 毎日新聞社記者
菅首相は就任早々、2021年にデジタル庁の創設を目指す方針を打ち出した。省庁間の縦割りを打破し、諸外国に比べて遅れてきた行政のデジタル化を、強力に推進するのが主な目的だ。
その検討課題の中に、オンライン教育の拡大に向けた規制改革が盛り込まれた。
現場では規制緩和を求める声も
こうした規制の緩和について議論するため、河野太郎規制改革担当相、平井卓也デジタル改革担当相と萩生田光一文部科学相の三人が、10月2日に初めて会談した。
河野大臣は会談から4日後の閣議後記者会見で「病気だったり、不登校であったりという子供たちが、病院や家庭からでも授業を受けられたり、小学校の英語教育などはネイティブの英語に触れることがオンラインでできたり、いろいろな可能性がある」と規制緩和の必要性を訴えた。
平井大臣も小中学生が一人1台のパソコンなどの端末を使って学ぶ環境を整える「GIGAスクール構想」を念頭に、「デジタルファーストでやってもらわなければ困る」とはっぱをかけた。
一方、萩生田文科相の反応は対照的だった。
「(オンライン授業が)絶対必要だとか、絶対いらないとか、そういうことを決める段階ではないと二人の大臣に申し上げ、理解していただいたと思っている」と、何も決まっていないことを強調。「オンライン授業をもって学校へ行ったことにするような乱暴な策は、現段階では考えてほしくない」とまで言った。
オンライン授業が注目されているのは、新型コロナウイルスの感染拡大が影響している。対面授業が難しい状況でも学習権を保障しようと、春先からオンラインによる遠隔授業に取り組む動きが学校の種別を問わず広がった。文科省も「コロナ禍」における特例的な対応として、小中学校や高校でのオンライン授業を事実上容認した。大学の単位に関する規制も緩めた。
今回の経験で手応えを得た教育現場からは、「ポストコロナ期」においてもオンライン授業の拡大を認めるよう規制緩和を求める声も上がる。国内の125大学で作る日本私立大学連盟は7月、「授業のオンライン化の流れは、世界レベルで加速していくことが予想される」として、遠隔授業の単位の制限を緩めるよう萩生田文科相に要望した。
また、中央教育審議会の分科会は9月、「コロナ禍」で実施された小中学校や高校のオンライン授業について、「様々な学習コンテンツで多様な学習ができた」「教師と児童生徒がICT(情報通信技術)でつながることで、学習状況の把握が可能になった」「学校間の連携においても活用が進められた」などと評価。将来的に目指すべき教育の姿として、対面指導と遠隔教育の両方を使いこなす「ハイブリッド化」を掲げた。
文科省は教員削減論を警戒
こうした動きに対して文科省は、大学でのオンライン授業の拡大には議論の余地があるとする一方、小中学校については慎重な立場を崩していない。2021年度予算の概算要求で少人数学級の導入を求めているだけに、オンライン授業の解禁が「教員削減論」につながることに対する警戒感もある。
文科省幹部は「オンライン授業は、学習意欲の高い子供には適している一方、そうではない子供には効果が低いという指摘がある。義務教育段階での格差拡大につながる可能性があり、慎重な議論が必要だ」と指摘。その上で「教育の質という点でみれば、先生がきめ細かく目配りし、子供たちが切磋琢磨できる対面方式の方が優れている。不登校支援などでオンラインのよさを生かしつつ、対面を基本としていくことが望ましいのではないか」と話す。
義務教育でのオンライン授業の解禁は、これまでの教育の在り方を大きく転換するものであるだけに、丁寧な議論が求められることだけは間違いない。
教育ジャーナル Vol.5

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Ⅰ.“2020年度”の学校経営~校長の
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Ⅲ.演劇発表会~生徒諸君
Ⅳ.研修「自ら主体的に取り組む」
~教師たち
第2特集
中学校部活動にどんな効果がもたらされるのだろう
~静岡市立中学校部活動ガイドラインから考える外部顧問の活用~
教育課程外でも学校教育の一環
いきいき3視点
部活動指導員の制度化
負担軽減、時間にも少しゆとり
市全体で子供たちを育てる
ほか
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