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教育ジャーナル

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みんなの安全 自分とみんなの命を守る力を育む(2)

 児童生徒をめぐる安全教育は重要で、近年は防災、感染症対策など、命を守る「生きる力」を育む安全教育の重要性が高まってきました。教職課程に「学校安全」が含まれたこともあり、改めて学校での安全教育への関心が高まることが予測されます。そこでお二人の教授に、学校安全教育の位置付けや目標、計画、推進等についてご執筆いただきました。

教職免許法の改正による安全教育の必修化

藤田大輔 大阪教育大学教授/大阪教育大学学校安全推進センター長

学校保健安全法の施行

 平成20年6月に「学校保健法等の一部を改正する法律」 が公布され、従来の学校保健に加えて学校安全の充実を図った「学校保健安全法」が21年4月1日から施行されています。この法改正の背景には、児童生徒等が被害者や、ときには加害者となるような事件・事故・災害等の発生の増加など、児童生徒等の安全を取り巻く実態や環境の変化に対応するとともに、学校安全に関わる学校の設置者並びに国及び地方公共団体の責務を明確化して、学校安全の一層の充実を図る必要性を求める社会的な要請の高まりがありました。そのため、改正された学校保健安全法の第3条2項には、「国は、各学校における安全に係る取組を総合的かつ効果的に推進するため、学校安全の推進に関する計画の策定その他所要の措置を講ずるものとする」と、「学校安全の推進に関する計画」を策定する国の責務が明記されました。

学校安全の推進に関する計画

 この条項により、国は大阪教育大学附属池田小学校事件や東日本大震災をはじめとする自然災害の教訓なども踏まえ、各学校における安全に係る取組を総合的かつ効果的に進めるため、生活安全、交通安全、災害安全を強化する観点から、国が取り組むべき安全に関する教育の充実や、地域社会、家庭との連携を図った学校安全の推進などの具体的方策を取りまとめた「学校安全の推進に関する計画」が24年4月に策定されました。この計画の中で、「国は、教員養成段階にある学生への学校安全に関する教育について、各大学の自主性を踏まえつつ、教員養成課程で学ぶことが必要な内容を整理するとともに、学校安全に関連する講義の開設や教育実習での学校安全に係る業務の実施など積極的な取組がなされるよう促す」と教員養成課程における学校安全の取扱いの充実について提言がなされました。

教職課程での学校安全必修化

 その後、27年12月に中央教育審議会から「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について」が答申され、示された教職課程の見直しのイメージに基づいて、教育職員免許法施行規則の一部が改正され、「教育の基礎的理解に関する科目」に含めることが必要な事項として、「ハ 教育に関する社会的、制度的又は経営的事項(学校と地域との連携及び学校安全への対応を含む。)」と規定されたことで、教職課程における学校安全の内容の必修化が図られることとなりました。
 さらに、29年3月に閣議決定された「第2次学校安全の推進に関する計画」でも、前述した中央教育審議会答申を受け、「教職課程に学校安全への対応に関する内容を含めることが提言されているところであり、今後実施される制度改正を踏まえつつ、採用後の教員に求められる資質・能力を念頭に置きながら、各大学は、教職課程における学校安全の取扱いの充実が求められる」と明記され、教職課程における学校安全に関わる講義内容の充実が図られているところです。

学校における安全教育の推進

 このように、国の施策として充実が進められている学校安全について、安全教育の推進に関わる取組をみると、平成13年11月に、学校における安全教育、安全管理、組織活動の各内容を網羅して解説した総合的な資料として、「学校安全資料『生きる力』をはぐくむ学校での安全教育」が文部科学省から発刊されました。その後、前述した学校保健法の改正や20年の学習指導要領の改訂を踏まえて22年3月に内容項目の改訂が行われました。さらに、前述した「第2次学校安全の推進に関する計画」で、「国は、安全教育に関する各種参考資料の作成等に当たって、学校安全に関する変化や新たな状況などの現代的課題を踏まえる必要がある」と明記されたことを受け、スマートフォンやSNSの普及など児童生徒等を取り巻く環境の変化や学校を標的とした新たな危機事象の発生など、児童生徒等の安全に関する社会的な状況が変化してきていることや、「学校事故対応に関する指針」(平成28年3月)の策定や、29年の学習指導要領の改訂などを踏まえ、31年3月に改訂2版が発刊されました。

安全教育で「生きる力」を育む

 ところで、この「学校安全資料『生きる力』をはぐくむ学校での安全教育」の表題に示されている「生きる力」とは、「変化が激しく、新しい未知の課題に試行錯誤しながらも対応することが求められる複雑で難しい次代を担う子供たちにとって、将来の職業や生活を見通して、社会において自立的に生きるために必要とされる力」と説明されています。  そのため、今回刊行された「小学校安全教育副読本」では、「学校安全資料『生きる力』をはぐくむ学校での安全教育」改訂2版に示されているように、「生きる力」の育成を通じて、児童がいかなる状況下でも自らの命を守り抜き、安全で安心な生活や社会を実現するために、主体的に行動する態度を育成することを支援する安全教育が、各学校において効果的に展開されることを支援するための副読本として編集されています。

自分とみんなの命を守る力を育む小学校安全教育副読本

令和3年度版 新版
みんなの安全 1~6年

監修・指導:藤田大輔(大阪教育大学教授/大阪教育大学学校安全推進センター長)
      木宮敬信(常葉大学教授)
定価:各学年 400 円(本体364円+税)
A4判・全48ページ・オールカラー・1、2年はシール付き

●本書の特長
★「命を守る」ことを重視!
★感染症対策・熱中症対策の学習に活用できる!
★交通安全指導、防災訓練、防犯訓練の前後の学習で活用できる!
★カリキュラム・マネジメントを行いやすい構成!

教育ジャーナル Vol.6

特集

特別な支援

●1●学びたいけれど学校に行けない子供たちに、チャンスと自信を~不登校特例校・八王子市立高尾山学園の取組~

●2●「性的マイノリティ」を扱うとき、どんな授業づくりをすれば良いのだろう~神奈川県の人権教育学習教材に学ぶ~

第2特集

学習指導要領 全面実施を目前に控えて、中学校が確認しておくべきこと

~田村学教授インタビュー~

・授業改善/校内研究

・高校入試に求めること/評価

ほか

バックナンバー

2021/03/10 安全教育の位置付け
2021/03/23 教職免許法の改正による安全教育の必修化