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教育ジャーナル

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コロナ禍の学校教育
(令和3年度全国学力・学習状況調査より)

 令和3年度の全国学力・学習状況調査の結果が公表された(8月31日)。翌日の新聞にも記事が出たが、例年に比べて扱いは小さかった。紙面にはコロナ、アフガニスタン、パラ五輪に政局と、その時期は重要な出来事が満載で、扱いが小さいのは無理もなかった。
 しかし、未来を考えれば、教育は埋もれても仕方ない課題ではない。いきなり一斉休校からスタートした令和2年度の学校教育。コロナ禍の中、「子供たちの学力を低下させてはならない」「学校教育の歩みを止めてはならない」と使命感を持って頑張ってきた学校の当たり前や、いきなりの休校、クラスが分断された分散登校、友達の表情も見えないマスク生活にもめげずに頑張ってきた子供たちの事実を、2年ぶりにお伝えしたい。
 今回は、コロナ禍で休校となったことの子供たちや学校への影響についての調査結果を中心に紹介する。

コロナ禍の影響は、必ずしもマイナスばかりではなかった(3)
~休校や、再開後も続いたコロナ禍が子供たちと学校に及ぼした影響~

渡辺 研 教育ジャーナリスト

人間関係には大きな影響なし

 結局、コロナ対策に明け暮れた2020年度。休校を含めて、コロナ禍の影響をこんな質問で聞いている。

◆新型コロナウイルス感染症の影響前(令和2年3月以前)と現在(令和3年5月)とを比較して、以下のような変化があったと思いますか?
 3つの項目について、「よくなった」「どちらかといえば、よくなった」「変わらない」「どちらかといえば、悪くなった」「悪くなった」「分からない」から選んで回答する。

【小学校】各選択肢の数値を順に並べる。
・児童同士の関係…1%/7%/79%/10%/0.4%/3%
・児童と教員の関係…2%/8%/83%/5%/0.1%/2%
 子供たちの人間関係、特に教師との関係において、大きな変化がなくてよかった。

【中学校】(小学校と同様)
「生徒同士の関係」…2%/9%/77%/8%/0.5%/3%
「生徒と教員の関係」…2%/11%/80%/3%/0.2%/2%
「教員と保護者の関係」…2%/9%/78%/7%/0.4%/4%
 顕著な変化ではないが、それぞれ関係がよくなっている。「共にコロナと闘う仲間」のような意識が芽生えたのかもしれない。行事や部活動も大きく変化して、生徒や保護者の理解や協力も求められた。教師だけが頑張り、その指示に従ってもらうだけではとうてい乗りきれる危機ではなかった。

 もう1つ、本誌にとっては特に興味深い質問があった。

「教員の業務量」について、「増えた」「どちらかといえば、増えた」「変わらない」「どちらかといえば、減った」「減った」で答える。コロナをきっかけに、今年度は行事の見直しや会議の持ち方、式典の簡素化など業務を改善してスタートしたかどうかという問いだと解釈した。「校長アンケート」には、業務改善のきっかけになるという声が多かった。

 興味を持って順に並べる。

【小学校】…41%/36%/16%/6%/0.5%
【中学校】…45%/36%/15%/4%/0.5%

 残念な数字だ。感染が若年層にまで広がり、何度も緊急事態宣言が出されて、その都度、対応しなければならないことが出てくるからなのか。ICTの活用も進むことだし、業務改善もあきらめずに見守っていきたい。

人が困っていたら助けたい

 休校及び変化についての直接の質問はここまでだが、別の数値からコロナに翻弄された1年間の影響を考えてみる。
 今回も「経年変化」として、当該質問項目の初出以来(ないし過去10年)の回答結果が整理されている。
 この調査は開始以来、各都道府県の学力の底上げに大きく寄与してきた。さらに、“学力上位県”の子供たちの姿と学力との間に明らかな相関が認められたことで、子供たちの態度や気持ちも重視され、経年変化に表れるプラス面の数字は年々上がってきていた。
 例えば、「自分にはよいところがあると思うか」という質問に「当てはまる」と答えた中学生は、平成22年度は20.5%だったが、平成31年度には29.1%に向上。「子供たちの自己肯定感が低い」と心配した学校や教育委員会は、地域との連携などによって、中学生が活躍できる様々な機会を設けた。そういう取組の結果が数字になって表れていた。
 今年度調査で、主には子供たちにどんな変化があったのか、「肯定の回答(そう思う、当てはまるなど)」で見ていく。

◆平日、1日にどのくらい(時間)テレビゲームをしているか。
 平成29年度まで(30年度は項目なし)「1~4時間」は小学生55%、中学生59%だったが、今年度調査ではそれぞれ76%、80%にまで跳ね上がってしまった。休校中の習慣が定着してしまったようで、まさに“後遺症”だ。おそらくほかの学年でも同様で、これを“適正”な時間に戻すには学校だけではどうにもならず、保護者の認識が不可欠だ。

◆自分には、よいところがあると思うか。
 小学生は例年と変わりないが、これまで30%を超えることがほとんどなかった中学生が35%と、この10年で最も高い数値を出していた。様々なことを我慢して、1年間を乗り切った自分への評価なのだろうか。

◆将来への夢や目標を持っているか。
 小学生も中学生も、平成22年度以来、最小の数値だ。社会全体が数か月先さえ見通せない閉塞感の中では、それも仕方がないのかもしれない。仕事として考えていた医師や看護師、福祉関係……公務員や教師まで、苦しむ姿を嫌というほど見せられた。中学校ではほぼ全校で実施されていた職場体験学習も10%以上の学校が中止した。

◆難しいことでも、失敗を恐れず挑戦しているか。
 ずっと増加傾向にあったのに、小学生、中学生ともに低下(特に小学生)してしまった。行事や校外活動などが中止・縮小されて、チャレンジの機会が減ったことも関係しているのだろう。めげずに、将来はコロナのような困難にも挑戦してほしい。

◆人が困っているときは進んで助けているか。
◆人の役に立つ人間になりたいと思うか。
 小学生も中学生も、2項目とも年々増加傾向の中で“調査史上最高”の数値だった。困難な状況だからこその気持ちなら、子供たちの正義感をこれからも信じていたい。

 一方で、こんな変化もあった。

◆学校に行くのは楽しいと思うか。
 小学生では半数以上、中学生でも45%以上が「楽しい」と答えていたのに、それぞれ48%、43%に低下していた(「楽しくない」は増えていない)。単純に、楽しみにしていた行事がなくなったからなのか。先生方に背景を探って、改善してほしい課題だ。

地域や社会をよくしたい

 家での学習習慣にも少し変化が見られた。プラスもあればマイナスもある。
 経年変化として示されてはいないが、こういう数値もある。

◆家で計画を立てて勉強しているか。
「よくしている」と「ときどきしている」を合わせて(肯定的回答)、小学生74%(肯定は31%)、中学生63%(肯定は19%)。勉強の内容まではわからないが、悪くない数値ではないか。休校の影響がこんな形で出たのなら、子供たちにはどんな困難な状況からでも得るものはあるということなのか。
 ところで、平成20年度調査にも全く同じ質問があって、そのときは小学生52%(同22%)、中学生34%(同10%)。家庭学習の大切さを再認識した学校の10年の努力が有事に力となって表れた形だ。
 また、家での勉強時間は、中学生は目立って増えていた。平成29年度との比較だが、少なくとも1時間以上勉強したのは70%→78%(うち3時間以上は18%→27%)。休校による出遅れを自分でも取り戻そうとしたのかもしれない。困難は自覚や主体性を育てた。
 家庭学習の時間は増えたが、家での読書の時間は「全くしない」が増加。これだけの社会状況だったにもかかわらず、新聞は「ほとんど、または、全く読まない」が小学生70%、中学生76%と“史上最高値”。ニュースはネットで読むのが、大人でも習慣化している。

◆住んでいる地域の行事に参加しているか。
 年々増加していたのだが、さすがに減少した。地域の行事そのものが中止になったケースも多いので、仕方がないことだ。でも一方で、こんな意識が強くなった。

◆地域や社会をよくするために何をすべきかを考えることがあるか。
 小学生にはこの社会状況は荷が重かったようだが(年々の増加傾向が、わずかに減少)、中学生は違う。こちらも年々増加していたが、31年度の12%(肯定的39%)が13%(同44%)に伸びた。社会をよくしていくのは、本当に彼らだ。
 背景にありそうな取組も挙げておく。

◆学級活動における学級での話合いを生かして、今、自分が努力すべきことを決めて取り組んでいるか。
 対話的な学びに制限がかかっていたにもかかわらず、中学生の回答は平成31年度の21%(肯定的65%)から25%(同69%)に増えている。
 この項目に限らず、経年変化には、教育の力が色濃く表れている。

教職員研修には大きな打撃

 子供たちだけでなく、学校の取組や教師の子供への関わり方にも変化は見られた(授業改善については、次号で取り上げる。特に中学校には驚くほどの数値が出ている)。

◆児童生徒は、授業中の私語が少なく、落ち着いていると思うか。
 例年、小学校は40%以下、学習規律が徹底している中学校でも50%台だったのだが、小学校では46%、中学校では69%。笑えない話だが「マスクはしたまま」「大声でしゃべらない」などが徹底されたせいもあるのだろう。クラスづくりの大事な時期の長い休校、行事の変更など、不安定になる要素がたくさんあったが、子供たちが落ち着いて学校生活を送ったことが、この年をなんとか乗りきれた要因だったのかもしれない。

◆児童生徒に対して、学校生活の中で、一人一人のよい点や可能性を見つけ評価する(褒めるなど)取組を行ったか。
 平成31年度との比較でも、小学校、中学校とも増えている。特に中学校では55%→64%だ。「自分にはよいところがある」と評価した生徒が増えた背景には、こういう教師の関わり方もあったはずだ。ここに表れた子供たちの姿を見ても、もっともっと褒めてあげてもいいくらいだ。

◆教職員は、校内外の研修や研究会に参加し、その成果を教育活動に積極的に反映させているかなど。
 数値を見る限り、令和2年度に学校が最も打撃を受けたのが教職員研修。この質問については平成31年度との比較で、小学校33%→22%、中学校26%→21%。全部で6項目の質問のどれも減少している。また、小・中合同の研修(授業研究など)も、小学校から見て29%→18%、中学校から見て33%→26%に後退した(この違いは必ずしも校区が1中・1小になっていないからだと思われる)。
 夏季休業中に行われる研修会も、夏休みの短縮によりずいぶん中止された。校種や教科の壁を越えて授業づくりなどを共有する校外の研修会への参加も、近年は活発になっていたので、残念だ。自分たちのことは後回しにせざるを得なかったし、“集まって話し合う”ことが制限されていたので仕方がないが、今年度もこの状況は続いている。教師の資質向上に“後遺症”が出ないことを願うばかりだ。

変化には柔軟に対応してきた

 昨年度はコロナに翻弄されながらの学校経営を強いられ、校長のマネジメント力が問われた年だった。教育委員会との連携が密だったとはいえ、例えば行事の在り方1つとっても、校長が判断しなければならないことは山のようにあった。
 質問紙調査にも、校長のマネジメント力に関する4問の新規質問が設けられた。経年変化ではないが、最後にそれを紹介する。

◆校長として、現在、最も学びたいと感じていることは何か。
 コロナ禍の1年を経験して、校長のマネジメント力として何が必要だと感じたのだろう。具体的な9項目(及び「その他」)から1つを選択する。当然なのかどうか、小・中とも全く同じ傾向だった。多い順に並べる。
 1番は、「教員の資質能力の向上の方法」(小学校47%、中学校42%)。研修ができない影響か。
 2番目が「教職員同士が協力し合う職場環境の作り方」(小16%、中18%)。
 教師個々の資質能力を向上させ、それを結束して課題解決に当たることの重要性を痛感したのだろうか。
 次いで、「よりよい教育課程の編成」(小11%、中13%)があって、「授業のよりよい観察方法や、教職員へのより効果的なフィードバックの方法」(小9%、中8%)と再び教師が登場してくる。本来は、授業改善に集中しなければならない年だった。

◆教員が授業で問題を抱えている場合、率先してそのことについて話し合ったか。
◆教員が学級の問題を抱えている場合、ともに問題解決に当たったか。
 どちらも月に数回はその機会を設けていた。小学校は「授業」74%、「学級」84%。中学校は「授業」55%、「学級」68%。ある意味、問題解決を先延ばしする余裕はなかった。

◆学校として、必要な場合に、変化に柔軟に対応しているか。
 小学校は「している」70%、「どちらかといえばしている」30%。中学校もそれぞれ67%、33%。そうしなければ乗りきることはできなかった1年だった。

 新規ではないが、1つ付け加える。

◆学校として、業務改善に取り組んでいるか。
 この状況下でも、肯定的回答は小学校98%、中学校96%。会議の効率化、行事の見直しや式典の簡素化など、コロナ対策の中で必要に迫られた業務改善もあったようだ。こういった視点は、ぜひ生かしていただきたい。

 マイナスだらけの1年を予想したが、子供たちも学校も歩みを止めていなかった。

教育ジャーナル Vol.9

特集

■道徳の授業/p4c in 仙台

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実現

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