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教育ジャーナル

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コロナ禍の学校教育
(令和3年度全国学力・学習状況調査より)

 コロナ禍でも、学校はそのときできる最善を尽くしてきた。その事実はこれまで本欄でもお伝えしてきた。 学校教育にとって2020年度は、コロナに邪魔されるわけにはいかない重要な年だった。小学校の新学習指導要領がスタート。中学校では2021年度の全面実施に向けて、最終チェックをしなければならなかった。授業改善、評価、小学校の外国語、改めて道徳、新たに加わったICT活用……その本来の取組は進められたのだろうか。

それでも、授業改善は着々と進められていた!(1)
~授業改善に、どのように取り組んでいたのか~

渡辺 研 教育ジャーナリスト

教師は、こう指導している

 「主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善に関する取組状況」は、学校質問紙に12項目、児童生徒質問紙に8項目の質問が設定された。言うまでもなく、何年もかけて準備してきた最重要課題だ。スタートでいきなりつまずくわけにはいかなかった。
 学校の取組から取り上げる。質問は「児童生徒がそうできているか」と「教師はそうしているか」の2種類。始まったばかりなので、「教師は」を優先する。
 数値は肯定の回答で、カッコ内が肯定的な回答の数値。

◆児童生徒自ら学級やグループで課題を設定し、その解決に向けて話し合い、まとめ、表現するなどの学習活動を取り入れたか
 小学校30%(88%)/中学校27%(85%)

 平成29年度調査の同じ質問では、小学校23%(82%)/中学校20%(75%)だったので、コロナ禍にひるむことなく、取組の精度も上がっている。

◆児童生徒の発言や活動の時間を確保して授業を進めたか
 小学校50%(97%)/中学校40%(95%)

 ここまでの数値になると、「そういうことをしていない学校(授業)には、やむを得ない余程の事情があるのだろう」と推察したほうがいいのかもしれない(「まったく行っていない」学校は、小中とも10校未満)。それくらい子供たち同士の対話や主体性をうながす取組は当たり前に行われている。

◆各教科等で身に付けたことを、様々な課題の解決に生かすことができるような機会を設けたか
 小学校17%(81%)/中学校12%(73%)

 機会を設けるとともに、特に中学生には、「課題の解決には各教科で学んだことを何でも使う」という自覚をもたせてほしいものだ。子供たちにも同様の質問がされている。
 もう1つ、本誌にとっては特に興味深い質問があった。

◇授業では、各教科等で学んだことを生かしながら、自分で考えをまとめたり、思いや考えをもとに新しいものを作り出したりする活動を行ったか
 小学生24%(67%)/中学生18%(60%)

 学校を卒業した後ではきわめて重要な学び方なので、子供たちにそれが身につくよう、意識して取組の精度を上げていきたい。

◆習得・活用及び探究の学習過程を見通した指導方法の改善及び工夫をしたか
 小学校21%(88%)/中学校20%(87%)

 ここ5年間、小学校、中学校とも、ほぼこの数値だ。探究的な学びを先駆的に追求してきたのが総合的な学習の時間だが、総合はどうか。

◆総合的な学習の時間において、課題の設定からまとめ・表現に至る探究の過程を意識した指導をしているか
 小学校32%(91%)/中学校33%(88%)

「総合は小学校のほうが熱心」という印象を持ってきたが、肯定の回答では平成25年度調査以来、中学校のほうが高い数値を示している。学校での学びそのものが、こういう方向に向いている。前の質問(習得・活用~)にもこれが反映されるといいのだが。

 ところで、来年度から実施される高等学校の学習指導要領では、総合的な学習の時間が総合的な探究の時間に改訂された。解説探究編の第1章第2節に改訂の趣旨及び要点が説明されている。2ページだけなので、読んでおいていただくといいと思う。熱量が上がってきた中学校の総合がここにつながっていけば、おもしろいことになりそうだ。
 授業改善にはこんな質問が新設された。

◆知識を相互に関連付けてより深く理解したり、情報を精査して考えを形成したり、問題を見いだして解決策を考えたり、思いや考えを基に創造したりすることに向かう過程を重視した学習を、計画的に取り入れたか
 小学校12%(73%)/中学校10%(68%)

 近年、新設の質問は、このように長文になる傾向がある。正確なデータを得るために、質問文の工夫が望まれる。

 学んだ結果をどうしたか。

◆各教科等の授業などで、調べたことや考えたことを小学校800字・中学校1200字程度でまとめさせたことがあるか
 小学校11%(55%)/中学校7%(40%)

 やや意外。考えを整理するという観点でも、それを他者に正確に伝わる文章で表現するという観点でも、もっと重視されてもいいはずだ。タブレットを使えば、消しゴムよりも文章の修正が容易なので、負担感も軽減する。まずはとにかく書いて、読み返しながら修正すると、文章の精度も上がる。

子供たちは、こう評価している

 こうして一生懸命取り組んだ結果、子供たちはどんな姿を見せてくれたのか、児童生徒はそうできているのか。ここの5つの質問はそれぞれ“子供たちの自己評価(児童生徒質問紙)”と合わせて紹介する。“主体・対話・深い”の順に並べてみた。

◆課題の解決に向けて、自分で考え、自分から取り組むことができていると思うか
 小学校19%(85%)/中学校18%(86%)
◇課題の解決に向けて、自分で考え、自分から取り組んだか
 小学生30%(78%)/中学生34%(81%)

 子供たちには、教師が思う以上の自覚が生まれているようだ。教師にはまだまだ物足りなく見えても、この姿は尊重したい。

◆学級やグループでの話合いなどの活動で、相手の考えを最後まで聞くことができていると思うか
 小学校42%(95%)/中学校31%(90%)
◇友達と話し合うとき、友達の話や意見を最後まで聞くことができているか
 小学生67%(97%)/中学生62%(96%)

 対話的な学びの基本だが、ここまできたかという数値だ。平成25年度の小学生の肯定の回答は54%、中学生は48%だった。間違いなく教師の努力の結果だ。

◆学級やグループでの話合いなどの活動で、自分の考えを相手にしっかり伝えることができていると思うか
 小学校17%(82%)/中学校19%(87%)
◇話し合う活動では、話し合う内容を理解して、相手の考えを最後まで聞き、友達の考えを受け止めて自分の考えをしっかり伝えていたか
 小学生34%(83%)/中学生37%(84%)

 質問紙調査では、往々にして小学生のほうが高い数値になるのだが、中学生ならではの成長が見える。きっとこれが自然。

◆授業において、自らの考えがうまく伝わるよう、資料や文章、話の組立てなどを工夫して、発言や発表を行うことができていると思うか
 小学校10%(68%)/中学校12%(76%)
☆自分の考えを発表する機会では、自分の考えがうまく伝わるよう、資料や文章、話の組立てなどを工夫して発表していたか
 小学生24%(64%)/中学生21%(62%)

 これこそ教師の助言や指導にかかっている。プレゼンの技術は教師自身も磨きたい。

◆学級やグループでの話合いなどの活動で、自分の考えを深めたり、広げたりすることができていると思うか
 小学校13%(76%)/中学校18%(84%)
☆学級の友達との間で話し合う活動を通じて、自分の考えを深めたり、広げたりすることができているか
 小学生33%(79%)/中学生34%(78%)

 授業後の振り返りなどを通して、子供たちは自分の成長を自覚できるのだろうか。平成26年度には小学生23%(66%)/中学生17%(62%)だったのがここまできた。成長の自覚は、きっと次の学びへの主体的な取り組みにつながっていく。

 ☆印の2つの質問、「考えを発表」には「考えを発表する機会はなかった」、「深めたり、広げたり」には「学級の友達と話し合う活動を行っていない」という第5の選択肢が加えられていた。コロナ対策のために子供たち同士が活発に語り合うことに制限がかかったことを配慮したものだろう。
 その選択肢の数値は「考えを発表」が小学生1・7%、中学生2・6%、「深めたり~」は小学生0・7%、中学生1・4%。学校はコロナに負けなかった。黙ってうずくまるのではなく、できる形で実行した。
 ところで、「授業改善」の分類の中で、子供たちだけにこんな質問がされていた。

◇学習した内容について、分かった点や、よく分からなかった点を見直し、次の学習につなげることができているか
 小学生33%(78%)/中学生26%(75%)

 振り返りの延長線上だとか、主体的な姿勢の表れと理解すればいいのか。

 そして、もう1つ。

◇(前年度までに受けた授業は)自分にあった教え方、教材、学習時間になっていたか
 小学生40%(81%)/中学生24%(74%)

 これは「学習者の立場に立った授業」の確認なのか、それとも「個別最適な学び」に踏み込むのか。この数値はどう読めばいいのだろう。先生方に考えてみていただきたい。学びを、子供に自覚させたい。
 直接的には授業改善ではないが、主体的・対話的で深い学びの授業の進め方で身についた学び方が、ほかの場面でも生かされているかどうか。先々では、このことが大事だ。
 紹介した総合のほかに、学級活動と道徳について尋ねている。

◆学級生活をよりよくするために、学級会で話し合い、互いの意見のよさを生かして解決方法などを合意形成できるような指導を行っているか
 小学校41%(95%)/中学校38%(94%)
◇学級生活をよりよくするために学級会で話し合い、互いの意見のよさを生かして解決方法を決めているか
 小学生32%(73%)/中学生28%(74%)
◆学級活動の授業を通して、今、努力すべきことを学級での話合いを生かして、一人一人の児童生徒が意思決定できるような指導を行っているか
 小学校34%(93%)/中学校32%(92%)
◇学級活動における学級での話合いを生かして、今、自分が努力すべきことを決めて取り組んでいますか
 小学生30%(73%)/中学生25%(70%)
 教師にとっては「学級活動で話し合いや子供たち自身での意思決定をやらずに、いつやるの?」といった数値だが、子供たちにその自覚がやや薄いのはなぜだろう。
 これは学級会だけの活動ではなく、やがては自分が暮らす地域や、自治体や国につながっていくことへの自覚を育てたい。みんなで話し合って学級目標を決めることより、そういう民主主義の基本的な態度が身につくような指導を、先生方には期待したい。

◆特別の教科 道徳において、児童生徒自らが自分自身の問題として捉え、考え、話し合うような指導の工夫をしているか
 小学校41%(97%)/中学校49%(98%)
◇道徳の授業では、自分の考えを深めたり、学級やグループで話し合ったりする活動に取り組んでいるか
 小学生46%(81%)/中学生49% (86%)

「特別の教科 道徳」のそもそもの修飾語は「考え、議論する道徳」。さすがにそこは忘れられてはいなかったようだ。

 余談になるが、「どちらかといえばYES」を選択するとき、どんな現実をイメージしているのだろうか。毎時間やっているわけではない? やってはいるが内容的にまだ納得がいかない? 前号で紹介したp4cの授業では、道徳は毎時間あの形式で行われていたので、扱う題材によらず「考え、議論する道徳」は実施可能なはずだ。子供たちにとっても、テーマによっては人生を語り合う機会にもなる。特に中学生にはそれは必要だ。週に1度の待ち遠しい時間になるよう工夫したい。

中学校の積極的な取り組み姿勢

 学習評価も「授業改善」の柱の中に含めておく。質問は4つで、全て新規。資質・能力の3つの柱が示され、それを育てるための授業改善、そして学習評価をどう考えるかと、きれいにつながっている。今年度の研究会などでは、「主体的を具体的にどう評価するのか」「学びに向かう力や人間性はどうか」と、論議の重要テーマになっていた。

◆授業の中で目標(めあて・ねらい)を児童生徒に示し、授業の最後に学習したことを振り返る活動を計画的に取り入れたか
 小学校68%(98%)/中学校62%(98%)

 新規といっても以前から「目標を示す」「振り返り」はそれぞれ独立した質問で、どちらもすでに当たり前の取組だった。

◆創意工夫の中で、学習評価の妥当性や信頼性が高められるよう、評価規準や評価方法の教員間での明確化・共有化や、学年会や教科等部会等の校内組織の活用など、組織的かつ計画的な取組をしたか
 小学校25%(84%)/中学校30%(88%)

 いきなりの休校から始まった令和2年度は、授業時数の確保とコロナ対策のために様々な学校行事や活動が中止や規模縮小された。部活動も制限された。子供たちには気の毒だったが、教師には、行事の準備や部活指導が軽減されて、休校期間も含めて少しゆとりが生じたのではないか。そのため、評価規準や評価方法という重要課題に、少し腰を落ち着けて取り組めたようだ。

◆児童生徒の学習評価の結果を、その後の教員の指導改善や児童生徒の学習改善に生かすことを心がけたか
 小学校37%(96%)/中学校35%(96%)

 そのために行うのが学習評価のはず。確信を持ってYESと言ってほしい。

◆児童生徒のよい点や改善点などを積極的に評価し、学習したことの意義や価値を実感できるようにしたか
 小学校41%(97%)/中学校36%(96%)

 こうすることが「主体的」や「学びに向かう力」につながっていく。伝えるのは「よい点8」対「改善点2」程度のさじ加減で。

 あくまでもこの調査に表れた結果だが、従来は、ともすれば小学校の積極的な取組姿勢に中学校が数年遅れでついていくという傾向が出ていた。でも、こと授業改善については、中学校の積極的に取り組む姿勢を感じる。それこそスタカリのように、小学生の育ちを中学校でも円滑に引き継いでいただきたいし、それは見てとれる。続けてほしい。

教育ジャーナル Vol.10

特集

■幼児教育と学校

スタートカリキュラム、やってみよう!

第2特集

■コロナ禍の学校教育

それでも、授業改善は着々と進められていた!~令和3年度全国学力・学習状況調査より~

ほか