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教育ジャーナル

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コロナ禍の学校教育
(令和3年度全国学力・学習状況調査より)

 コロナ禍でも、学校はそのときできる最善を尽くしてきた。その事実はこれまで本欄でもお伝えしてきた。 学校教育にとって2020年度は、コロナに邪魔されるわけにはいかない重要な年だった。小学校の新学習指導要領がスタート。中学校では2021年度の全面実施に向けて、最終チェックをしなければならなかった。授業改善、評価、小学校の外国語、改めて道徳、新たに加わったICT活用……その本来の取組は進められたのだろうか。

それでも、授業改善は着々と進められていた!(2)
~ICT活用は進んだのか~

渡辺 研 教育ジャーナリスト

活用の有効性は認識された

 コロナ禍の副産物といえば、なんといっても児童生徒一人1台のタブレット端末配布に代表される、ICT活用の環境整備がものすごいスピードで進んだことだろう。
 2021年11月上旬、ある市立中学校の研究報告会が実際の参加(人数制限あり)とオンラインによる参加の“ハイブリッド形式”で実施された。オンラインでも、授業を2コマ参観できて、協議会、全体会・講演にも参加できた。わずか1年8か月前にはこんな光景を誰も想像しなかった。それが今や、大きな違和感もなく、普通の公立学校で実施されている。おかげで遠方からの参加も容易になった。仕方なく使い始めても、使い慣れればその利点に気づくはずだ。
 前回の記事では、休校中の対策としてのICT活用を取り上げた。その時点では十分な活用とはいえなかったが、年度始めに比べれば年度内で急速に普及した。年度を通した活用状況を、調査では質問している。とんでもない現実になっているかもしれない。
 まず、従来設備の再確認。

◆教員が大型提示装置(プロジェクター、電子黒板など)などのICT機器を活用した授業をどの程度行ったか
 選択肢は「ほぼ毎日」「週1回以上」など。
コロナ前の平成31年度調査では「ほぼ毎日」が小学校37%、中学校44%だったが、今回は小学校54%、中学校58%。「週1回以上」でも小学校33%、中学校38%。

「教室の前に出て、発表する」などがNGになったので、コロナの影響を受けない機器類がようやく活躍の場を得た。今さらながら、利便性に気づいた教師もいたかもしれない。

 ここからが本格的な活用。

◆コンピュータなどのICT機器やネットワークの点から、授業(授業準備も含む)を行うための準備ができているか
 小学校35%(89%)/中学校36%(90%)

 大半の学校が、その気になり、必要性が認識できればやれるというスタンバイ状態にはあるようだ。

◆コンピュータなどのICT機器やネットワークの点から、遠隔・オンライン授業を行うための準備ができているか
 小学校10%(40%)/中学校9%(39%)

 例に挙げたハイブリット研究会ができた中学校は、決して“普通の公立学校”ではなかった。さすがにまだここまで求められても困るが、数字を直視すれば、子供たちが在宅のままでも授業を届けられる公立学校が1割、無理して頑張れば4割もあるということだ(全くできていない学校は小・中とも18%程度)。

 極端にいえば、令和2年度だけでここまで進んだ。

◆教員は、学習履歴(スタディ・ログ)をはじめとした様々な教育データを、児童生徒の状況に応じた指導に活用しているか
 小学校7%(44%)/中学校6%(39%)

 活用が有効なことは、十分に認識されていると思う。次回の調査までにどうなっていることか。
 後回しにしがちだが、この機会に乗り遅れてはいけないのが、このこと。

◆習得・活用及び探究の学習過程を見通した指導方法の改善及び工夫をしたか
 小学校21%(88%)/中学校20%(87%)

 ここ5年間、小学校、中学校とも、ほぼこの数値だ。探究的な学びを先駆的に追求してきたのが総合的な学習の時間だが、総合はどうか。

◆コンピュータなどのICT機器やネットワークの点から、校務改善を行うための準備ができているか
 小学校14%(74%)/中学校14%(72%)

 準備はできているようなので、次回は「校務改善に活用しているか」と質問してほしい。何度も何度も書いているが、この課題は決して“子供たちが優先”ではない。雑務(機械でもできる業務)から解放されて、教師が本務に集中できることが、子供たちのためになる。まさに、千載一遇のチャンス。

この状況下でも研修も実施

 ハード面(環境整備)に関しては、学校差、自治体間の差もほぼないはずだ。それでも生じる取組状況の差はどこからくるのか。こういうジャンルに強い技術家庭科の教師を有する中学校が圧倒的に有利かといえば、数値上はそうでもない。小学校にも、スマホ世代の若手が増えている。ではなぜ?

◆教員がコンピュータなどのICT機器の使い方を学ぶために必要な研修機会があるか
 小学校35%(85%)/中学校32%(78%)

 前回記事でふれたが、コロナ禍の影響を最も受けたのが教員研修(校内、外部とも)。休校、分散登校から始まった大混乱の中で、“自分たちのこと”は後回しになってしまった。それでも、この課題に関しては頑張って機会を設定していたようだ。必要にかられて、とにかく活用しなければならないのなら、研修は必要だった。教師はこうして数々の困難に立ち向かってきた。

◆コンピュータなどのICT機器の活用に関して、学校に十分な知識をもった専門スタッフ(教員は除く)がいるなど技術的にサポートできる体制があるか
 小学校22%(54%)/中学校22%(52%)

 学校の気持ちを勝手に代弁すれば、ハード面の整備に加えて、こんなソフト面の整備(専門スタッフの派遣)もしてほしかった(これからでも遅くはないが)。期間限定で、何校かに1名程度でも、心強いサポートになる。そうすれば、普及も早いし、もっと様々な活用もできる。
 それにしても、すでにそういう体制がある学校も全体の半数。これはこれで驚く。

持ち帰りにまでは踏みきれない

 学校におけるICT機器の活用について5つの場面を挙げて「あなたの学校では、コンピュータなどのICT機器を活用した取組をどの程度行っていますか」と聞いている。選択肢は「よく活用している」「どちらかといえば~」「あまり活用していない」「全く~」。

①教職員間の連絡
 小学校41%(78%)/中学校44%(81%)
②教職員と児童生徒がやりとりする場面
 小学校11%(45%)/中学校11%(42%)
③児童生徒同士がやりとりする場面
 小学校5%(30%)/中学校6%(26%)
④教職員と家庭との連絡
 小学校11%(40%)/中学校13%(44%)
⑤児童生徒が1人で活用する場面
 小学校25%(75%)/中学校20%(63%)

 ①が業務の改善につながるのなら、会議をいくつか減らせるくらい活用したい。
 ②と③は具体的にどんな場面なのだろう。
 ④がメールのやりとりなら、文章には細心の注意が必要だ。
 ⑤が調べ物や情報収集のことでも、学校ではできるだけ協働の場面で活用したい。

 それでも、“一人1台”の実現で、タブレット端末は子供たちの“パーソナル・コンピュータ”になった。この扱いについては、学校の考え方が分かれている。調査では「あなたの学校では、児童生徒一人一人に配備されたPC・タブレット端末を、どの程度家庭で利用できるようにしていますか」として、家庭に持ち帰っていいかどうかなどを聞いている。
 その結果、「持ち帰らせていない」と「持ち帰ってはいけないことにしている」(別々の選択肢)を合わせると、小学校、中学校ともおよそ68%。
「毎日持ち帰って、毎日利用させている」小学校3%、中学校5%
「時々持ち帰って、時々利用させている」小学校14%、中学校12%。

 何か課題を出して、それに限定した利用なのだろうか。
 始まったばかりの取組で、どんな不都合が出てくるかもわからないので、それも当然だろう。一気に進んだ勢いに押されて、せかされているような気がするかもしれないが、教師の目が届かないことには、しばらくは慎重なほうがいい。でもそのうち、教科書もノートもなく、ランドセルにはタブレットだけ入れて……という時代になるのかもしれない。
 その一方で、「まだ配備されていない」という選択肢もあり、小学校も中学校も約11%がこれを選んでいる。調査から半年がたった。今はもう、この子供たちの手元にもタブレット端末が届いていることを願う。

さすがに「月1未満」では

 ICTの活用状況を子供たちにも質問している。

◇授業で、コンピュータなどのICT機器をどの程度使用したか
 小学生は、「ほぼ毎日」11%、「週1回以上」29%、「月1回以上」35%、「月1回未満」25%。中学生は、「ほぼ毎日」7%、「週1以上」26%、「月1以上」36%、「月1未満」31%。

◇コンピュータなどのICT機器を、他の友達と意見を交換したり、調べたりするために、どの程度使用しているか
 小学生は、「ほぼ毎日」10%、「週1以上」29%、「月1以上」29%、「月1未満」32%。中学生は、「ほぼ毎日」10%、「週1以上」25%、「月1以上」28%、「月1未満」37%。

「意外に使っていない」というのが率直な感想。子供たちへの質問だからといって、子供たちが「使いたくない」と言ったわけではなく、教師の判断なのだろう。
 1日の授業5、6コマのうちには資料の提示やグループ学習などで使う機会はいくらでもありそうだし、まして週30コマもあれば数回ということもなさそうに思うが、現実にはこの頻度。月1未満では、教師も子供も、いつまでたってもメリットを見つけられない。
 今まで使わなくても授業ができていたとはいえ、せっかく手元にあるのだから、積極的に使って上手な使い方を工夫し、情報活用力を磨くほうが得策だ。使うことの弊害が出たら、その改善も学びになるし、学校全体で共有すれば、それも今後に生かせる。
 子供たちはこんなふうに思っている。
◇学習の中でコンピュータなどのICT機器を使うのは勉強の役に立つと思うか
 小学生66%(95%)/中学生60%(93%)

 子供たちは将来、ICT機器を使いこなしながら生きていかなければならない。

 もう1つ質問があって、「1日にどのくらいの時間、ICT機器(PCやスマホ)を勉強に使っているか」を聞いているのだが、小学生の9%(約9万人)、中学生の4%(約3万2千人)が「ICT機器を持っていない」と答えている。せめて授業中に、“勉強のために”使わせてあげたい。
 せかしているのではないが、コロナをきっかけに、働き方や生活様式が大きく変わった。順調に進められている授業改善のどこかの場面に、ICTの活用を意識的に入れておくことはできないだろうか。

教育ジャーナル Vol.10

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