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教育ジャーナル

学研『教育ジャーナル』は、全国の学校・先生方にお届けしている隔月刊誌です。
Web版は、毎月2回特集記事を公開しています。本誌では、更に充実した内容で様々な記事をご紹介しています。

コロナ禍を行事のねらい再確認の好機に
~コロナに負けない ― ピンチをチャンスに~

 例年どおりには実施できなくなった学校行事。何を残すのか、どんな形でなら実行できるのか……。ともすれば前年踏襲で続けられてきた行事の、本質的な意義や行事の在り方を再確認するとともに、子供にも教師にも負担感の少ない実施方法などについて考えざるを得ない、そんな機会になったのではないか。

第3回 行事見直しを通じて気づいたこと
~気づきを未来に生かす~

渡辺研 教育ジャーナリスト

 行事を実施するのか、それとも中止か。中止するのならできればその代わりになる行事を実施してあげたい。そんな検討が各学校で行われた。できれば子供たちの思いに応えたい。しかしながら、それは誰かの命に関わるかもしれない、そんな重要な判断を迫られる中で、先生方は何を考え、どんな気づきがあったのだろうか。

重い判断。でも学校はチーム

 大勢の子供の生命を預かる責任者としての、とても現実的な判断。

◆リスクマネジメントの観点から、全てを実施しないという選択がベターであると考えざるを得ない。新型コロナウイルス感染のリスクと向き合いながらの学校運営は、正直、精神的に厳しい。万が一、感染者が出たとしても、興味本位のマスコミ報道は絶対に避けてもらいたい。ワイドショー的な取り扱いは、現場の教職員の誠実な取組を踏みにじるものだと強く思う。(小学校)

◆今年度については、従来の教育活動ができなくてもやむなしと考える。代替活動を行っていきたいが、いろいろな制約により不可能なものも多い。(中学校)

 それでもなんとか、という模索。

◆縮小することにした修学旅行(2泊3日を1泊2日に)等、他校では早々と中止を決めたものが多く、悩んだ。中止する理由はいくらでもあったが、教育的価値を死守すべく「できる方法」を模索し、なんとか見いだした。(小学校)

 この先、コロナが終息する保証はどこにもない。当分、重たい判断が続く。

◆今後の各種行事等の計画に当たっては、感染レベル等に応じたオプションを合わせて計画に盛り込んでいくことが重要になると考えた。また、省庁や自治体ごとに、それぞれ独自の感染レベルやアラートなどが混在している状態なので、いずれをその指標とするかも明確にしておかなければならない。(小学校)

 もちろん、校長は独りではなかった。学校はチーム。

◆教職員とは、「教育の質を下げないようにするには、どういう方法がよりよいのか」「来年度以降のことも考え、これからもできる方法はどうあるべきか」「コロナのせいにして楽することを考えない」といったことを話し合った。(小学校)

◆職員同士で議論することの大切さを感じている。判断基準は「命を守ること」とし、学びと安全をいかに確保できるかをかなり議論してきた。そのプロセスが「自分たちで学校を運営していく」という自覚と責任を、職員が持つことにつながっていると思う。「チーム力」なくして、この困難は乗りきることはできないと思う。(小学校)

 ただただ耐える、我慢するのではなく、この状況そのものを子供たちの成長、教職員同士の結束など、思わぬ可能性の発見や成果につなげたい。

一番大切にするものは何か

 毎年やってきたから今年も……では、行事本来のねらいを十分に実現できていなかったかもしれない。でも悲しいかな、多くの行事の意義を再考する余裕もなかった。今回のことは、実施するか、代替はどうするかだけでなく、長いこと続けてきた行事の持つ意味を改めて考えるきっかけにもなった。

◆授業時数の確保とともに、集団でしか味わえない様々な行事を通しての成長や充実感、満足感の兼ね合いを、どう考えて進めていくのかが大切であると思う。(小学校)

◆子供たちが何を思っているのか、一番大切にしたいものは何か、そんなふうに子供の立場に立って考えようと、職員間で話し合っています。(小学校)

 規模を縮小するのは仕方がないが、この要素だけは絶対に残そう。そう考えて行った。

◆子供たちに、学校生活の中での豊かな体験、心に残る体験をさせたい。行事等を通して、自己有用感や達成感や所属感を味わわせたい。(小学校)

 行事の本質的なねらいが明確に認識できれば、例えば、2泊3日を1泊2日に変更しても、きっとねらいは達成できる。

◆本町は小規模校が多く、行事も連合で行うことが多い。体育大会、音楽会、宿泊研修、修学旅行等、来年度以降の実施について、感染対策を考慮しながら検討していく必要がある。(小学校)

 連合で行うことそのものにも意義を見いだすのであれば、大掛かりでなくても代わりの何かを新たに創り出せる。

その気づきを、未来に生かす

 コロナだけでなく、新たな視点も生じている。

◆ピンチをチャンスと捉える。本年度より新教育課程が始まったが、なかなかスクラップ&ビルドが進まない。教育は〝捨てる〟ことを悪いことと捉えがちである。新しいものが増えても、「あれもこれも大事」とこれまで行ってきたことを削らない傾向がある。
 例えば、近年の気象状況を考えると、運動会、水泳(屋外プール)、長時間の外での活動は危険を伴う。体験から学ぶことは子供の学ぶ意欲を高めるが、学級定数も変わらないまま、これまでと同じように行うことは安全と教育効果を考えたとき、そのリスクは大きい。保護者の安全意識も近年高くなってきている。
(小学校)

 宿泊行事の際、宿泊先での食物アレルギー児童への、安全の確保についても懸念されておられる。たとえ運動会や修学旅行などの伝統行事であっても、これまでどおりの形で継続していかなければならないわけではない。

◆今年度は、本当に必要な行事とは何かを考える機会にしたい。 (小学校)

◆なくてもそれでよかったものも多くあり、あえて復活しないようにしていきたい。(中学校)

◆行事のねらいや必要最低限の目標、目指す資質・能力について、十分吟味することで、誰のための行事なのか、子供を主体に見直すことができた。(小学校)

◆教育活動として実施する意義と効果を再度見直し、できるだけ安全に実施できる方法を検討しました。やらなくてもなんとかなる行事や会議もあるのではないかという気づきがありました。もっとシンプルにすることで、子供との授業づくりに時間をかけることができるという気づきもありました。(小学校)

 子供たちに気の毒だから「もっと行事を減らそう」とは言えない。でも、練習など手間ひまのかけ方には、改善の余地があることに気づけたのではないだろうか。

◆昨年度の卒業式が練習なしのぶっつけ本番だったにもかかわらず、大きな問題もなくできたことで、これまで余計に練習時間を取り過ぎていたことがわかった。このことにより、学校行事の内容とともに、学校行事を実施するまでの準備(練習)時間の見直しの必要性を強く感じた。(小学校)

 手間ひまかけるのは、本当に子供たちのためなのか、それとも教師の満足のためなのか。様々な気づきを未来に生かしたい。

教育ジャーナル Vol.4

特集

がんばれ!公立校!!/職員室改造
計画

こんなときだからこそ、教師自身の働き方も見つめ直してみよう

横浜市の取組を通して考える

第2特集

校長アンケート/学校行事編

行事の本質的なねらいを、改めて認識できましたか?

①こんな工夫、こんな議論で行事を
 実施

②代わりにどんな行事を考えました
 か

③行事を見直す過程で気づいたこ
 と、考えたことは?

ほか

今後の予定

12月7日 菅内閣誕生で「教育デジタル化」急浮上

※次回のタイトルは変更になることがあります。ご了承ください。

バックナンバー

コロナに負けない! 教師の姿、学校の風景

~学校教育に空白をつくらないために~

8月7日 第1回 突然の一斉休校要請~学校現場の思い~
8月24日 第2回 長期休業を学校の業務改善のきっかけに
9月1日 第3回 ポストコロナ社会の学校教育を考える
9月14日 第4回 ウイズコロナだから見えるポストコロナ

あかはなそえじ先生の「ひとりじゃないよ」 特別編

10月6日 ケアする人のケア ~教師自身のケアはどうするの?~

コロナ禍を 行事のねらい再確認の好機に

~コロナに負けない―ピンチをチャンスに~

10月19日 第1回 いつもとは違う行事の風景
11月2日 第2回 行事中止の代わりに実施したこと
11月17日 第3回 行事見直しを通じて気づいたこと