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授業実践・読み物 詳細

SDGs実践紹介① すてきいっぱい都の郷

(2022年4月20日更新)

SDGs実践紹介①
すてきいっぱい都の郷
奈良市立都小学校 教頭 岸下哲史
学習指導要領にも盛り込まれているSDGs。SDGsの解説をはじめ、「取り入れたい!」と思えるような学校現場における実践などをご紹介します。
SDGs×道徳

はじめに

(つげ)は奈良市の北東部にある大和高原の中央に位置し、豊かな自然に囲まれている。大和高原最大の前方後円墳や、かつてこの地域で作られていた凍豆腐を平野部に届けるための、何十キロメートルにも渡る安全索道(ロープウェイ)など、興味深い地域遺産が多く存在する。そんな地域をポジティブに捉えるために、道徳科や生活科、総合「なら」科のカリキュラム・マネジメントを図り、6年間を見通した教育活動を展開している。
地域をポジティブに捉えるために、本校が大切にしているのは次の視点である。

○郷土のよさを調べて発信(プレゼン等)するだけでなく、得た情報を基に、持続可能な社会として、くらしの課題と改善点を考える。

○プレゼンの聞き手も自らの生活に目を向け、都のよさを感じるためには、どのようにすればよいのかを考える。

本実践と道徳との関わり

小学校学習指導要領では、道徳教育を進めるにあたって、「各学校においては、児童の発達の段階や特性等を踏まえ、指導内容の重点化を図ること。その際、各学年を通じて、自立心や自律性、生命を尊重する心や他者を思いやる心を育てることに留意すること。」(総則 第1章第6の2)とされている。本校においても、このことを踏まえながら、「SDGs×道徳」をデザインした。

○育みたい力

・郷土のよさを愛する心(郷土愛)

・互いの考えを受け止め、協力し合える力(相互理解)

・「 正確性」を基にした伝える力(情報リテラシー・情報収集能力)

これらの力を育むために、縦横二つの軸(AXIS)とそれを包み込む球(SPHERE)をイメージして教育活動を展開している。

縦軸(AXISα)……6年間を系統立てた教育活動

 五感で感じ取ったことを素地に、確かな情報を取捨選択し、地域や社会の課題に取り組む態度を育む。

横軸(AXISβ)……社会とのつながりを意識した教育活動

 学びの発信先を広げることで、社会で生きる人間として、社会をよりよくしようとする態度を育む。

球(SPHERE)……多様な課題に触れる全校朝礼

 毎週1回時間を設けて、多様な文化や考え方に触れ、グローバルな社会で生きるための素地を育む。

実践例

『すてきいっぱい都の郷:都の宝物で 世界の宝物を』(第4学年)

(1)ねらい

大和高原に降った雨は、布目川(奈良県)、木津川(京都府)、淀川(大阪府)を流れ、流域の人々のくらしの向上を支えてきた。川や水源地を校区の宝物と捉え、4年生で取り上げた。

(2)主な学習活動

STAGEⅠ
縦軸(AXISα)
・水源地を訪れ、五感で水を感じる。
・pHや透明度を測定し、水源地の水を身の回りの色々な水と比べる。
横軸(AXISβ)
・ 外国語学習の時間に、JICAルワンダの協力のもと、世界の水事情について学ぶ。
球(SPHERE)
・「 いじめ防止教育DAY」や「国際理解DAY」というテーマで全校朝礼を行い、世界の現状や課題について学ぶ。

水源地を訪れ水温を測る

STAGEⅡ
JICAルワンダとの学習の中で、「都の宝物」である水と地域の特産品を組み合わせて、世界の水問題の解決に貢献できないか探った。児童たちは、水源地の水と特産品のお茶を使って「グリーンティー」を作り、参観日に保護者に販売して、その収益をルワンダの井戸造りのために募金することを計画した。
縦軸(AXISα)
・都の特産品のお茶について学ぶ。
・地域で茶葉を栽培する「健一自然農園」の伊川さんに協力してもらい、都の水に合う茶葉のテイスティングをする。
横軸(AXISβ)
・学んだことや感じたことを多くの方に伝えるために、パンフレットやポスターを作る。
・同じく水問題に取り組む鹿児島県屋久島市立八幡小学校とオンラインで交流を行う。

何種類ものお茶をテイスティング

STAGEⅢ
学習のまとめとして、鹿児島県屋久島市立八幡小学校とともに、水問題について考える「水サミット」を開催した。

おわりに

近年IoTの導入が進み、様々な「もの」がネットワークでつながった。これからも進むであろう技術革新の中で忘れてはならないのは「人は感性をもった生き物であり、その感性を幼少期に思う存分育むこと」。これは、本校が学習活動を計画する上で最も大切にしてきたことである。
そうした教育活動で学んだ児童たちは、多文化共生社会の中で生きるための人権道徳意識や、他国の人々や文化について理解し、日本人としての自覚をもって国際親善に努める「持続可能な社会の創り手」として頼もしい成長を遂げるだろうと期待している。今後もさらなる高みを目指し、教育活動をアップデートしていきたい。

小学校の実践のポイント

小学校では、地域と世界、自分と他者をつなげる学習活動、そして知識を深めるだけではなく、五感で感じたことから児童一人一人が自分たちにできることを考え、行動につなげる学習活動を行っています。また、これらの活動を全校(ホールスクール)で実践している学校です。
社会で起きていることを全校朝会で紹介するなど、授業以外でも常に「世界・社会」を学び、「世界の中の自分」という意識づけを行なっています。児童が学びに没頭するための仕掛けとして、実際に何かを作り、製作物を外に向けて発信したり、資金を集めて国際支援に使ったりといった実社会につながる活動を中心に行っている点も特徴的です。

小学校がホールスクールで実践できている理由の一つに組織体制が挙げられます。カリキュラム・マネジメントチーフを置いた推進体制の強化、教員間の連携を促す体制、そしてスクールリーダーのバックアップができています。SDGsの目指す「持続可能な社会」という目標に対し、教員間の視座・視点を合わせること、新たな取り組みを応援する姿勢、その実践で成功したこと、課題点を次につなげるといった、組織的にチャレンジしやすい環境づくりが特筆すべき点です。教員が失敗から学ぶことを許容し、悩みながら前に進むことをよしとする組織文化が革新的な実践につながっています。

「持続可能性」を扱うときに、地域学習・郷土学習は非常に相性がよいといえます。しかし、地域や日本の「持続可能性」を考えるに留まってしまう、あるいは「地域」と「世界」を切り分けた学習になってしまいがちです。

SDGsが目指す視点は世界であり、「Think Globally, Act Locally」の実践が求められています。世界で起きていることが私たちの日常とどうつながっているのか、自分たちは何ができるのか考える必要があります。「世界」と「地域・自分」をつなげ、試行錯誤を重ねながら行う活動として、都小学校から学ぶ点は多いのではないでしょうか。

一般社団法人グローバル教育推進プロジェクト(GiFT) 調査・研究統括 木村大輔