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SDGs実践紹介② 新聞紙レジ袋で地域を一つに

(2022年6月30日更新)

SDGs実践紹介②
新聞紙レジ袋で地域を一つに
福島県只見町立只見中学校 教諭 目黒英樹
学習指導要領にも盛り込まれているSDGs。SDGsの解説をはじめ、「取り入れたい!」と思えるような学校現場における実践などをご紹介します。
SDGs×道徳

はじめに

本校を含む只見町内の小中学校4校では、海洋教育の視点を付加したESDを行っている。令和元年度より、校長をはじめ担当教師が町内外の実践例を学び、子どもたちが意欲的に学ぶ姿を他校で目の当たりにした。これをきっかけにESDを取り入れた活動に本格的に着手した。結果から言えば、海洋教育の視点を入れたことにより、本校では俯瞰的に物事を見たり、身近なことに目を向けて行動したりできる生徒が増えてきた。また、地域住民からの応援が、生徒の学習意欲の向上にもつながった。

海洋教育の視点を付加したESDの活動

①海浜のクリーンナップ作戦

海洋教育への取り組みのきっかけとして、海辺のゴミ拾いと、海での魚釣り体験を行った。海辺のゴミ拾いでは、生徒が予想していたようにペットボトルなどのプラスチックゴミ(以下プラゴミ)が多く、ゴミ袋13袋分のゴミを回収した。海辺に住む人たちが捨てたゴミだけでなく、上流の河川から運ばれるゴミが多いのではと考える生徒もいた。河川の上流地域で生活する自分たちが注意することが、海の環境を良くすることにつながると考えられるようになった。この体験が地球環境を考えるきっかけになり、もっと学び、深く関わりたいという探究心に火がついた。

②新聞紙でレジ袋作り

海辺で見たゴミは生徒たちにとって非常に印象深く、どうにかしなければならない、と考えるようになった。学校に帰ってから「ペットボトルを購入しない」「レジ袋はもらわない」などと宣言し教室に掲示していた。只見町は海から遠く、気軽に足を運ぶことはできないが、自分たちの町からゴミを減らすことで、何らかの改善ができると考えた。しかし、自分や家族だけでは減らせる量に限界があり、良い手段を見つけることができず、手をこまねいていた。
只見町では2月に大規模な雪まつりが開催される。来町者が最も多い期間であり、訪れる人たちに海の現状を知ってもらうことにした。ビラを配って来町者に周知する計画だったが、生徒の一人が「新聞紙で作るレジ袋」をインターネットで見つけてきた。ビラを入れた新聞紙レジ袋を、雪まつり会場の近くのコンビニで使ってもらうことを発案した。新聞紙なら手に入りやすく、プラゴミも減らせるなど、生徒たちのねらいに沿ったものとなった。
この新聞紙レジ袋は、形や強度など試行錯誤して現在の形になった。残念ながら当時は既存のプラレジ袋より濡れに弱く、レジ袋が無料配付されていた時期にはあまり広がらなかった。
しかし、2020年7月からレジ袋が有料化され、新聞紙レジ袋が注目され始めた。県内のマスコミに取り上げられたことで、注目度は上がっていった。当初単学年で作っていた新聞紙レジ袋だったが、下級生にも協力してもらい、たくさんのレジ袋を作ることができるようになった。現在では月間約300枚の新聞紙レジ袋が本校から出荷され、町内10店舗に置いていただき、海洋プラゴミ削減のメッセージを広めている。

お店に新聞紙レジ袋を置いてもらう交渉をする生徒。

学校におけるSDGsと道徳

この活動は、道徳との関連が強く「D 主として生命や自然、崇高なものとの関わりに関すること」の学びにねらいを定めていたが、実際に取り組む中でさらに広がりが見られたことに驚いた。生徒たちの活動が広く知られるようになり、たくさんのメールや電話など励ましの連絡をいただいた。その中でも、手紙での励ましが道徳的な心情や実践意欲と態度をより育んだ。人の優しさに触れることにより、思いやりの心をもつと共に、自分たちの考えや意見を入れて、お礼の返信を出すこともできた。また、社会から注目されることで、学校の一員として自信と自覚をもって生活できるようになり、校内外での挨拶が以前にも増して向上するなど相乗効果を生み出すことができた。

おわりに

新聞紙レジ袋を作り海洋ゴミを減らす活動は、環境教育のねらいを果たす他に町を活気づける潤滑油として機能した。中学生に刺激されて、何か環境活動をしなければならないと考えた只見町の大人は多い。また、教育委員会も「新聞紙レジ袋作成教室」を開催し、中学生を先生に立て、町民と中学生の交流の場となった。それからというもの、町民の作成した新聞紙レジ袋が、定期的に学校に届けられている。
今後の展開として、自分たちの活動を積極的に発信したいと考えている。町の映像担当者の指導を受けながら、活動を映像化し、より多くの人に伝えていきたい。

新聞紙レジ袋作成教室の様子。

只見中学校の実践のポイント

只見中学校は小学校から続く海洋教育の学びを継続し、発展させています。その活動の3つの特徴について紹介します。

①Think Globally, Act Locallyの実践

海洋教育の一環で始まったESD活動において、海辺のゴミ拾いを起点として、地域の河川から世界の海へというつながりを意識した上で、「今自分たちができることは何か」という問いの答えを探りました。その結果、新聞紙レジ袋の作成にたどり着き、地域と連携して、予測〜行動〜振り返り〜発展という学びのプロセスを通して実践を少しずつ広げました。これは、「地球規模のことを考え、地域で実践する」というESDの大切にしている価値観を実践した活動です。

②パートナーシップの実現

只見中学校は、教師が主体的に地域と関わって、生徒たちの活動が広く受け入れられる環境をつくり、「社会に開かれた教育課程」を実行しています。毎月300枚の新聞紙レジ袋を10店舗へ継続して出荷できていることも、その成果でしょう。
また、只見中学校では生徒にコンクール等への挑戦を促し、入賞したものを町の広報誌や新聞で丁寧に発信してきました。それによって、地域の理解が深まり、協力が増えました。結果、この活動を中心として、世代を超えた交流や、小学校からの学びの継続といった多種多様なつながりが生まれています。
昨年始まったレジ袋有料化など、今まさに起きている本物の課題に関わることで、生徒や地域の人が社会に参画している実感を得られます。これが学習意欲やさらなる発展への動機付けになっていると考えます。

③感謝の気持ちを大切に

只見中学校の実践では、SDGsを教育で扱う上で重要な「知識・思考力」、「社会・感情」、「行動」という3つの領域をまたいだ学びを実践しています。活動を通して様々な感情を扱い、行動や学習意欲につなげています。
地域の人たちからの励ましや応援の言葉に対する感謝の気持ち。この感謝の気持ちが、誰かのために何かをしようという原動力になります。感謝の気持ちを相手に伝える行動を重ねると、主体性が発揮されます。この普遍的な学びのデザインはどのような規模の学校においても参考になるでしょう。

一般社団法人グローバル教育推進プロジェクト(GiFT) 調査・研究統括 木村大輔