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教育ジャーナル Vol.8-5
校長アンケート/働き方改革編
働き方改革のためになんでもできるとすれば、
何をどう変えたいですか?(3)
~学校の業務改善・働き方改革~
校長アンケート/働き方改革編
どんな出来事からも学ぶものがあるとすれば、2020 年度の大変だった学校経営から何かを得なければならない。
本誌では、3月下旬に、ここ数年間に本誌にご支援いただいた小中学校の校長先生にアンケートを実施した。アンケートに記された校長ならではの苦労を共有しながら、業務改善の視点を見つけていきたい。
働き方改革のためになんでもできるとすれば、
何をどう変えたいですか?(3)
~学校の業務改善・働き方改革~
渡辺 研 教育ジャーナリスト
質問内容は、以下の6問。今回は、Q3の回答を紹介する。
Ⅰ 学校の業務や働き方の改善について
Q1 2020年度はコロナ禍により、授業時間の削減や行事の中止・縮小など、教育活動や学校経営に様々な制約を受けました。
① 仕方なく取りやめた行事や業務のうち、「なくても支障がなかったもの」や「(今後も)縮小が可能だと思ったもの」はなんですか?(いくつでも)。
② 様々な制約を受けた2020年度の1年間を、「業務改善」「働き方改革」の視点で振り返ると、どのような気づきがありましたか? また、そうした気づきを職員間で共有する機会はありましたか?
Q2 多忙な現状、超過勤務の常態化の根本原因はなんだと思われますか?
もし、なんの制約もなしに、業務改善・働き方改革のためになんでもできるとしたら、何をどう変えたいですか?(例えば、保護者対応のための人を増やす。何かの業務を丸ごと外部に委託する。学級担任の主・副2名体制にするなど)
実現の可能性は度外視して、根本的な問題点を改善するためには何が重要なのか、お考えをお聞かせください。
Q3 何かにつけて「例年どおり」にはいかなかった2020年度。ともすれば「これまでどおり」になりがちな学校文化において、何かを変えるには校長のリーダーシップが欠かせません。「 何かを変えざるを得ない」場面で、教職員の意識を変えるために、どんな工夫をされましたか? また、教職員の意識改革を図る際、キーパーソンにするのはどんな人ですか?
Q4 コロナの不安が解消されたら、思いきり取り組みたい教育活動(「やはり学校教育や子供たちにとって絶対に必要だ」と思う教育活動)はなんですか?
Ⅱ この状況でも進めていかなければならないこと
Q5 授業改善にはどのように取り組んでいますか? また、「学びに向かう力」や「深い学び」の実現に手応えを感じていますか? それはどのような場面でしょうか?
Q6 GIGAスクール構想で、タブレット端末などICT環境整備が急速に進んでいます。この環境をどのように活用していますか?
Q3 教師の意識を変えるには? キーパーソンは誰?
自分の時間がどれだけある?
長年、学校文化(例年こうしてきた、キリがない仕事、残業代をもらっているわけではない、全ては子供たちのために)の中で仕事をしてきた教師たちの意識を変えることは、管理職にとってかなりやっかいだと想像できる。教師自身にそれを促すにはどうすればいいか。言ってみれば「校長が、教職員に~」から「教職員が、自ら~」への転換。
(必ずしも「働き方」に限定した質問の仕方になっていないので、「当たり前に行ってきた何かを変えるときに、教師の意識をどう変える」という問いへの回答になっている)
まず引き続き、働き方に対する教師の意識をどう変えていくのか。
◆職員一人一人の意識改革を図る取組の工夫は、①教職員評価システムにおける校長の目標(働き方改革の推進)を受けて、職員一人一人に具体的な取組を行わせている、②校長だよりを通して「業務改善」「働き方改革」に関する資料提供をして、意識改革の必要性を促している。
その際のキーパーソンは、①学校運営の要である教頭が推進役(声掛け、出退勤管理システムのチェック・助言等)、②事務職員(教師の相談役、業務改善を別の視点からアドバイスしてもらっている)(小学校)
業務改善には、教師とは異なる立場の人の目が有効。それにしても、教頭(副校長)や事務職も複数体制が必要。
◆時間外勤務の実態を知ることから始まる。月80時間を超えることが健康面でよくないことを知る。コロナ禍での行事の縮小を機会に働き方を変える。時間の使い方が上手な人がキーパーソン。(小学校)
学校それぞれの事情を考えれば、このキーパーソンの人選はとても妥当だ。仕事の優先順位のつけ方、効率化、準備の仕方など、きっとまねるべき点は多い。
◆帰りの時間設定をしっかり示し、根拠を挙げてその理由を説明する。教頭と学年主任がキーパーソン。(中学校)
退勤して、明朝、出勤するまでの時間から、通勤時間や睡眠時間を引いた“自分の時間”がどれだけあるのか。それを直視すれば、働き方を変えなければいけないと痛感するのではないだろうか。子供たちだけでなく、教師自身の人生を大切にしたい。
学校運営協議会も校長の味方
では、教育活動全般。コロナ禍では、誰がどう頑張っても“これまでどおり”にはできないのだから、Q1のように行事や活動の実施形態の変更とともに、変化することに慎重な教師たちの意識を変える絶好の機会になる。
◆様々な教育活動の目的、ねらいを再確認すること。キーパーソンは教務主任、研究主任や各主任。(中学校)
◆不易と流行を意識しつつも、取組の意義を再確認する。前年踏襲よりも必要性を重視する。チームで一体となって取り組む。ボトムアップを歓迎することを繰り返して意識化を図った。教務主任、各指導部長などミドルリーダーが中心。(小学校)
前年踏襲より優先するのは、今いる子供たちへの必要性。
◆学校教育の役割を再確認し、その中で最も大事な「学び」「安全」を最優先にして意識変化を促した。(中学校)
◆学校教育目標に立ち返り、重点項目を絞って研究主題を設定し直した。子供にとって何が最も大切なことかを、職員で共有することができた。あれもこれも大切と考えて指導すると、結局、中途半端になる。核とする中心項目を一つに絞り、全校で取り組むことが、本来の学校教育の姿だと感じた。キーパーソンは、研究主任、教務主任、高学年担任。(小学校)
あれもこれも大切で、それがバラバラに積み重なっているのが日本の学校の現状。それぞれ個別に取り組むより、何かをハブにしてそこから派生させたほうが効率的で効果的なのではないだろうか。
◆はじめに「将来につながる学びを保障していこう」というビジョンを示した。「学びを止めない」ために何を大切にしていきたいか、何が必要かということを、まず主幹に伝え、次に教務会で伝えた。その後、職員全体、そして学校運営協議会、PTA役員に伝え、共通した「子供への思い」と「取組の方向性」を持ちながら、様々なことを具体的に考え、実践につなげた。キーパーソンは、主幹教諭と学校運営協議会の三役の方たちだと感じている。副校長とはビジョンについてよく話し、管理職が一枚岩になっていることを、職場環境として作ったことも、職員の安心につながり、チーム力につながったと思う。(小学校)
危うく忘れるところだったが、学校運営協議会やPTA役員も学校や校長の味方。一人で苦悩せず、苦しいときは助けてもらえばいい。
◆「~だからできない」ではなく、「工夫して~する」へと転換していけるよう、子供たち(高学年)から発信することを工夫した。研究主任と4部長(授業研究部長、学力体力向上部長、児童理解部長、人間関係づくり部長)をキーパーソンとしてカリマネを進めた。(小学校)
学ぶ子供たちの視点も、教師の意識を変えてくれることだろう。
◆コロナ禍でほぼ行事等を精選したので、この先も本当に必要と思うものを残して、ほかは行わないようにする。校長がリーダーシップを取り、キーパーソンとして動くことが大切である。(小学校)
新たな学校文化の始まりにしたい。