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教育ジャーナル Vol.9-1

霞が関発! NEWS FLASH

「コロナ禍」の2020年度、小中高生3万人が30日以上の「自主休校」

霞が関発! NEWS FLASH

 新型コロナウイルス感染への不安から、全国の小中学生と高校生の計3万287人が2020年度、30日以上の長期にわたり登校を控えていた。文部科学省が10月13日に公表した20年度の問題行動・不登校調査で判明した。こうした「自主休校」に対する教育委員会や学校からの支援には、地域差があるとみられ、学習の遅れや子どもの孤立も懸念されている。

「コロナ禍」の2020年度、小中高生3万人が30日以上の「自主休校」

大久保 昂 毎日新聞記者

例年どおりの不登校調査に加え、コロナ禍での「自主休校」を調査

 文科省は毎年、国公私立の全ての小中学校・高校と特別支援学校を対象にいじめの把握件数を調べ、小中高については、暴力行為件数▽年間30日以上の長期欠席者や不登校の人数▽自殺者数――も集計している。20年度は新型コロナの感染拡大に伴う緊急事態宣言が繰り返されたことから、長期欠席者の調査の一環として、感染不安が理由の「自主休校」の人数も調べた。
 感染不安による長期欠席者は、小学生1万4238人▽中学生6667人▽高校生9382人――で計3万287人。小中高校には約1268万人が在籍しており、1000人に2~3人が長期間の「自主休校」を選んだ計算となる。
 都道府県別の人数では、東京が5,305人で全国最多だった。ただ、在籍する児童・生徒数に占める割合では、神奈川(0.50%)が最も高く、沖縄(0.49%)、東京(0.43%)、宮城(0.39%)、北海道(0.35%)と続いた。
 文科省は、登校が不安だと保護者や子どもが申し出た場合、校長が「合理的な理由がある」と判断すれば、「欠席」ではなく「出席停止・忌引等」の扱いとすることを認めている。「自主休校」への対応として、オンラインを活用した学習支援に取り組むよう求めてきた。一方、いじめの把握件数は全校種合わせて51万7163件で、前年度(61万2496件)比で15.6%の大幅減となった。

不登校も19万6000人超で過去最多を更新

 また、新型コロナの感染不安や病気、経済的理由などとは異なる要因で30日以上登校せず、「不登校」と判断された小中学生は19万6127人で過去最多を記録した。前年度に比べて1万4855人増え、13年度から8年連続の増加となった。
 「自主休校」の問題は現在進行形だ。「第1波」から1年半あまり学校に通えていないケースもあり、夏休み明けのタイミングと感染のピークが重なった今年の「第5波」では各地で登校自粛の動きも見られた。今後も懸念される感染拡大期に学習活動を止めないための備えが求められるが、オンライン授業などの体制は地域間で差があるのが実情だ。
 大阪府寝屋川市は「第1波」の長期休校が明けた20年6月から、希望者は自宅でオンライン授業が受けられる「選択登校制」を全小中学校(36校)でいち早く取り入れた。当初は「出席停止・忌引等」として扱っていたが、今年1月からは定期的に対面指導を受けるなどの条件を満たせば、市独自の措置として「出席」扱いとしている。市教委教育指導課は「不安を抱える保護者からは歓迎されている」としている。
 福岡市も20年6月から、感染不安のため登校を控える児童・生徒向けのオンライン授業を開始。「コロナ禍」前から不登校だった子どもたちも受けられるようにしている。「第5波」のまっただ中だった今年9月上旬は、市立学校に在籍する約12万人の子どものうち約1万人が自宅でオンライン授業を受けた日もあったが、大きなトラブルはなかった。
 全員がオンライン授業に切り替えた場合でも、通信環境に支障がないことが確認できているという。市教委の担当者は「再び感染が拡大して登校が難しい状況になっても、学びを止めない対応ができる」と話す。

オンライン授業を長期間受けられなかった児童も

 ただ、十分な対応が受けられなかった子供もいる。20年2月から登校を見合わせている埼玉県所沢市の小学3年の女子児童が、オンライン授業を受けられるようになったのは先月末だった。朝のホームルームと休み時間はオンラインで教室と自宅をつないでいたが、学校の通信環境が整っていないためか、授業の同時配信はなく、家族に勉強を教わっていたという。
 女子児童は算数のオンライン授業でコンパスの使い方を先生から褒められた。うれしそうにする様子を見た母親(53)は、「小学生は親が教えられるから、オンライン授業がなくても大丈夫だと思っていたが、やはりあった方がいい」とした上で、「進んだ地域の取り組みが全国に広がればいいのに」と話した。
 「一方通行のオンライン授業だけで内容を理解するのは限界があるのではないか」と心配するのは、東京都町田市の女性(44)だ。
 中学1年の長女は、小学5年だった19年度末から「自主休校」を続けている。小学生の時は学校のオンライン授業と民間の通信教育だけで、勉強についていけた。ただ、中学生になると内容が難しくなり、苦労しているように見える。女性は「中学2年になると、受験を意識し始める子も出てくる。感染への不安は今も拭えないが、いつまでも今の状態を続けられるのだろうか」と複雑な胸中を明かした。