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教育ジャーナル Vol.18-2
校長アンケート
教師という仕事「なりたい職業トップ3」を目指そう!①
学校の役割・教師の喜び
校長アンケート
教師という仕事「なりたい職業トップ3」
を目指そう!➀
学校の役割・教師の喜び
教育ジャーナリスト
渡辺 研
コロナ禍はまだ続いているが、「人が足りない」「働き方は改善できない」など、
学校の努力だけではどうにもならない難題が降りかかってきた。
今年の校長アンケートでは、日常の教育活動と併せて、
この少し大きな問題を一緒に考えていただいた。
アンケートの質問
Ⅰ コロナ対策――判断を任されたが
Q1 2022 年度の卒業式でのマスク着用はどう判断されましたか?
Ⅱ 授業改善(学習指導要領実施の状況)
Q2 ①先生方の授業は変わりましたか? 子どもたちに変容は見えますか?(特に「主体的に学びに向かう姿」や「学びに向かう力」)
② 授業改善が進まないのは、何が壁になっているのでしょう。
その要因にはどんなことが考えられますか?
(①か②かのいずれかを回答)
Q3 保健体育について=運動が苦手な子どもたちが「体育嫌い」にならないように、体育の授業に工夫をしていることはありますか。
Q4 道徳について=「考え、議論する授業」は実現していますか。実施にあたり、難しい点はありますか。教科書以外の教材も活用していますか。
Ⅲ 特別支援教育
Q5 調査では10 年ぶりに「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒」の数値が更新されました(6.5% → 8.8%)。数値と比較して、学校の実際は?特別な教育的支援において、行政や外部機関などからのどんなサポートが必要ですか。
Ⅳ 学校の未来
Q6 中教審等で行われている議論や、依然として続くコロナ禍での子どもたちの様子、少子化など、校長先生として気にかかること、関心をもって見ていることはなんですか。
Q7 教員不足が深刻化しています。どうすれば少しでも改善できるでしょうか(予算や現行制度の壁などは度外視してください)。
Q8 実践者の視点で「学校とは何?」と見つめ直してみたいと思います。学校に託される役割が増え続けてきましたが、〝絶対に〟学校・教師が担うべき役割は何でしょう。2つ以上5つ以内で教えてください。
Ⅴ 教師という仕事の魅力
Q9 22年度、一番感激した出来事はどんなことでしたか。
Q10 23 年度、学校で何を実現したいですか。
退職される先生方へ。お疲れさまでした。長い教職生活で実感できた「教師という仕事の喜び」を教えてください。
Ⅰ コロナ対策 ――判断を任されたが
Q1 2022年度卒業式でのマスク着用の判断は?
子どもと教師は外すことに
学校の判断を集約すると、おおよそこういうことになる。
◆児童と教職員はマスクを外すことを基本としたが、強制はしなかった。ただ、国歌と校歌、卒業の歌を歌う際にはマスクを着用するようにした。保護者にはマスク着用を求めた。(小学校)
◆歌唱のときのみ着用。あとは個人の判断。(中学校)
◆区の方針に従って、来賓・保護者には着用をお願いし、児童は個人(家庭)の判断、教職員は着用しないこととした。(小学校)
国や教育委員会の指針が示されていたので、“苦悩”や混乱はなかったようだ。
中学校の卒業生は結局、入学以来ずっと、マスクのままで学校生活を過ごした。卒業式に晴れやかにマスクを外せたのだろうか。別れ別れになる友達の“素顔”をしっかりと記憶に残せたのだろうか。
Ⅱ 授業改善(学習指導要領実施の状況)
Q2 ①授業の変化・子どもの変容は? ②何が壁に?
授業は変わってきている
早くも「次期学習指導要領に向けて……」といった言葉が聞こえてきた。しかし、現状で教師の最優先事項は授業改善。単に授業スタイルを変えるだけではなく、改善によって資質・能力が育っているかどうかの検証もしなければならない。
昨年も同じ質問を設けたが、進み具合はどうなのだろう。まずQ2①から。
◆授業づくり、指導方法は少しずつ変わってきたように感じます。その要因は校内研究のテーマを「自ら学びに向かう子どもの育成」とし、授業研究を通して、児童が主体的に学びに向かう指導について追及していることが考えられます。(小学校)
◆先生方の授業は変わりました。子どもたちの意見やつぶやきを生かす授業が多くなった。(小学校)
◆多くの授業は変わっている。教師からの講義形式の授業は年配の一部の教員だけで、ほかはグループでの活動や対話を多く取り入れている。生徒の学びの姿勢は年々改善されているように思う。(中学校)
◆研修により、子どもの主体性を重視するよう授業改善が進んだ。子どもたちにも、自ら行動する場面、伸び伸びと学習に取り組む姿が見られる。(小中学校)
授業は「教師による講義の静聴型」から「児童生徒の積極参画型」に変わってきた。きっと子どもたちは楽しいし、教師にとっても講義型にはなかった手応えを得られる授業ができているのだろう。“年配の一部の教師”はQ2②にも登場する。
◆授業は変わってきている。自分の課題を見いだし、課題解決に取り組み、学習を振り返る、次の課題を見いだすという学びのサイクルで学習活動を展開するように変わってきている。この学習を進める上で、タブレットを効果的に活用することで、子どもたちは主体的に学びに向かうよう変容してきている。(小学校)
学習指導要領実施と重なって出現したコロナが、授業改善を停滞させかねない状況だった。実際に“対話的な学び”は影響を受けた。そこに登場したのが“一人1台”のタブレット端末。コロナ対応で四苦八苦の教師の仕事を、容赦なく増やすというネガティブな側面の一方で、少なくとも子どもたちには、大いに刺激になったようだ。
「タブレットを使うと、学習が楽しくなる」という“学習者”の新鮮な気持ちが、参画型授業への改善を進める力になってくれたのかもしれない。
子どもたちも変わってきた
子どもたちの変容にもタブレットの活用は表れている。
◆(授業は)大きく変わりました。GIGA端末を利用した「深い学び」「個別最適な学びと協働的な学び」を目指してきたことで、主体的に学びに向かう姿が全児童に見られるようになった。(小学校)
この学校の子どもたちは、もともとよく話し合いができていた。そういうベースがあると、タブレット端末というツールがより効果を発揮するのかもしれない。
◆以前であれば、教師が端末を使って児童の作品を撮影して評価に活用したり、児童の発表を録画したりしていた。今は、児童自身が端末を使って自分の作品を撮影してコメントをつけて教師に提出したり、児童自身が発表を録画して互いに見合ったりする活動を行っている。教師が個を生かすというよりも、児童が個々に進めているように見える。(小学校)
子どもたちが楽しく学べれば、やがて学ぶことを楽しめるようになり、自立した学習者へのあゆみになるだろう。そこに、「仲間と一緒に学ぶことは楽しい」という協働的な学びの要素も加えておきたい。
◆本校では2年間をかけて「学びに向かう力」の実践化を研究してきました。学びに向かう力を高めるための協働的な学びを求める教員の授業実践では、目に見えるような指導方法の改善ができるようになりました。子どもたちの「主体的に学びに向かう力」は、振り返りの際の記述内容から見てとれるようになりました。(小学校)
この学校では、子どもたちが学びを自覚できるように振り返りを工夫していた。「学びに向かう力」は非認知的な力で、見えにくくはあるが、見える工夫はできそうだ。
◆話し合い活動や発表する機会(プレゼンも含めて)を多くもち、そのためにどのような準備が必要なのか、子ども自身が主体的に考えるようになりました。(小学校)
機会を設ければ、子どもたちも思考し、判断し、表現(行動)しようとする。〝授業をジッとして静かに聞いている〟よりも、成長の姿が見取れるのではないだろうか。
経験が新たなチャレンジの壁に
先行した小学校には授業改善の成果が見えつつあるが、中学校にはまだ“壁”があるようだ。ここからQ2②を見ていく。
◆先生方の〝学び〟が壁になっていて、新しいことにチャレンジできないベテランの先生の心に、いかに火をつけるのかが課題です。(中学校)
次に進むことを、過去の成功体験が邪魔することは、ほかの分野にもある。まして、教師が相手にするのは成長途上の子どもたち。失敗の恐れもあるチャレンジよりも、無難に経験を踏襲したいという気持ちも理解できる。でも、経験は生かせるはずだし、生徒とともにつくっていく授業は楽しいはずだ。
◆一人1台端末を活用したり、授業スタイルを変えたりして授業改善を図ろうと取り組んでいる教員がいる一方、これまでに確立させてきた学習指導のスタイルを変えられない経験年数の長い教員や、多くの指導内容があることで生徒主体の授業への転換に不安を抱える理科や社会科の教員がいる。(中学校)
◆理科及び社会科は指導内容が多いため、公立高校入試までにすべての範囲を指導しきることが、絶対条件という感覚が教員に染みついている。教科書の内容が終わっていないことで保護者のクレームを受けた経験のある教員も多い。そのため、生徒の学習活動の〝伴走者〟という発想は生まれにくいのが実情である。(中学校)
授業改善は、一応の出口である入試の改革とセットだったはずだ。できるだけ早く、目に見える改革が望まれる。また、学び方を変えようというのだから、“何を学ぶか”の部分にも調整が必要だろう。
授業改善に取り組めるゆとりを
Q2の②は「教員の働き方改革」の“遅れ”にも影響を受けている。
◆教材研究など、授業に対しての時間がなかなかとれない。保護者対応、提出物など、授業以外にかかわる時間がとても多い。(中学校)
中学校ではまず、劇的な部活動改革を進めたい。国の議論が本質からズレてきていることが気にかかる。
当然、小学校にも影響する。
◆一人1台端末の活用により、授業は大きく変化している。ただし、主体的に学びに向かう力については単元レベルでの授業改善の意識に大きな差があり、ICT活用自体の目的意識の共有が課題といえる。また、授業の質を上げるための教材研究の時間を生み出すことが壁の一つ。(小学校)
一歩進んだら、またそこで新たな課題が見つかる。学校にはゆとりが必要だ。
◆しっかりと研修できていないこと。教科ごとの見方・考え方や資質・能力の捉えと、授業展開という具体が捉えられる校内研修を行ったが、足りないと思う。教員に研修を保障する時間や時期が必要。教員は授業改善に向けた意欲はあり、努力もしようとしている。それをしっかり後押しできる体制が必要。(小学校)
授業を変えることは教師ではない人間が想像する以上の大改革だ。成否や質の向上は子どもたちの未来に大きく影響する。この重大事に腰を据えて取り組める“職場の環境整備”が現実に進められなければならない。
【②へ続く】
次回の予定
8月7日(月)
校長アンケート
教師という仕事「なりたい職業トップ3」を目指そう!②
※次回のタイトルは変更になることがあります。ご了承ください。