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教育ジャーナル Vol.24-3
■声を聞こう/校長アンケート
子どもの考えや思い、アイデアを、
どう吸いあげて活動に落としていくか
学校が頑張れること、国に望むこと
第3回では取り組みたい教育、中教審に望むことについての意見を紹介する。
全4回(第3回)
■声を聞こう/校長アンケート
子どもの考えや思い、アイデアを、
どう吸いあげて活動に落としていくか
学校が頑張れること、国に望むこと
【全4回】(第3回)
教育ジャーナリスト 渡辺 研
コロナ禍は落ち着いた。教室には一人1台端末。〝学校の常識〟にはあちこちで変革が進む。
子どもたちが自分の意見をしっかり言えるようになった。でも、変わらぬものもある。
校長先生は2023 年度、新たな課題にどう取り組み、何を思ったのか。
第3回では取り組みたい教育、中教審に望むことについての意見を紹介する。
Q6 取り組みたい「〇〇教育」は?
◉ 自分事としての防災教育
想定していたよりも多様だった。実社会を見渡せば、そうだろうなとは思う。分類はせずにあげていただいたものを並べていく。まず、小学校から。
LGBTQ教育、ダイバーシティ教育、金融教育、デジタル・シティズンシップ教育、親の子どもへのかかわり方教育、環境教育、消費者教育、防災教育、人権教育(多様な見方・考え方を)、情報モラル教育、校区の自然学習(あまりにも遊びが少ない)、アントレプレナーシップ教育、ウェルビーイング教育(「学校が楽しい」から発して、実生活が楽しく充実する、生きる力や生きていく喜びをサステイナブルにもてる教育)。
◆総合的な学習の時間を、完成度を求めすぎずに自由に探究させてやりたい。〇〇教育にカテゴライズすると窮屈になり、発想が貧弱になると思う。(小学校)
次いで、中学校。
防災教育、福祉教育、食農教育、人間尊重の教育。
◆生徒には他者を意識した表現力を高めたいと考えています。(中学校)
◆防災教育に力を入れていきたいと思っています。能登半島地震を見ていると、他人事ではすまされないと感じます。子どもたちが自分の命をしっかり守ることができるように、そして、被災された方々の苦労に自分事として目が向くように導いていきたいと思っています。(中学校)
◆他人事ではなく「自分事」をテーマに防災教育に力を入れてきている。実感を得るために陸前高田市、気仙沼市への修学旅行を実施している。(中学校)
東日本大震災・津波では、地域における中学生の力が認識された。
Q7 児童・生徒の意見を聞く機会
◉ 〝きまり〟を子どもたちが決める
考え、議論する道徳とか、アクティブ・ラーニングとか、思えば、子どもたちが自分の考えを言える機会はたくさんできた。
◆コロナ禍で、行事の在り方について〝子ども大人会議〟を開き、一緒にやり方をつくった。総合の学習では、子どもたちの「やりたい」を実現できるよう話し合いを重ねている。(小学校)
コロナ禍での活動は、〝禁止〟や〝規制〟だけでは乗りきれなかった。
◆学校行事の内容についても、生徒会を中心に、できるだけ子どもたちの意見を取り入れるようにしています。校則・体育祭の種目・スマホの使い方などから始めています。(中学校)
◆生徒会を中心に常に話し合いの機会はあり、体育祭のやり方は、毎年、工夫されています。(中学校)
◆すべての活動で、決まっていることを教員が伝え、工夫や改善点などを子どもたちから吸いあげて検討する。(小学校)
当事者である子どものほうが、アイデアをもっているかもしれない。子どもたちと「その活動を何のためにやるのか」と話し合い、活動の意義を子どもたちが自覚すれば、より効果的になるのではないか。話し合う過程そのものも、子どもたちの学びだ。
◆端末のフォームを使って、放課後の「公園の使い方」についてのきまりを児童会役員本部で考えた。(小学校)
◆学校のきまりやそのときどきの課題などを、子どもたちの代表委員会(学年、クラス、委員会の代表で構成)で話し合って決めている。学級会での話し合い活動を大切にしている。(小学校)
物事の決定を責任ごと委ねれば、子どもたちは無責任なことはしない。
◆年度末には、次年度の児童の生活目標を自分たちで決めている。それをもとに、児童会で互いの声かけを促している。また、避難訓練等の行事の振り返りでは、児童の意見をグーグルのフォームで集約して、担当が次の計画に反映させている。(小学校)
◆教育課程についてのアンケートをとった。(小学校)
今は、端末を通して意見を集めることも可能。うまく使えば、教師の手間も最小限に抑えられそうだ。
◆生活のきまりを、22年度に生徒会中心に議論をして全面改定し、昭和時代から続いていた細かい規定をなくした。そのうねりが、制服フルモデルチェンジにつながった。〈LGBTQについて学んだ結果、生徒会からの要望で2年間かけて実現〉(中学校)
教師も望んでいる子どもの姿だろう。
Q8 中教審に議論を望むこと
◉ 教員の増員、授業時数の削減
「一つだけ聞かせて」と書いたら、この問題が優先順位のトップだった。
◆教員の増員。(中学校)
◆教職員の給与アップと地位の向上。人材確保。(小学校)
◆教師の業務に関するブラックなイメージを払拭する策。勤務時間の軽減よりも外部からのクレーム対応策がほしい。教員は、超過勤務よりもクレーム対応で疲弊している。(中学校)
ここ数年、ずっと働き方改革の議論が続けられている。それは救いだが、だんだん論点がずれているような気もする。
◆教育の質に大きな影響を及ぼす教員の勤務、特に45分の休憩が実質とれていないことへの言及がほしい。(小学校)
そんな現実に立った議論を願いたい。
優先順位2番目もトップとも関係する。
◆小学校学級担任の週当たり持ち時数の削減。(小学校)
◆教科数の削減・授業時数の削減。教科数が多く、授業準備が大変です。休日に授業準備を行っています。(小学校)
◆年間の授業時数を削減して週25 時間にし、余裕のある教育課程の編成ができるようにするか、教員の定数を増やして、授業の準備時間を確保したい。(小学校)
現在の年間授業時数は、〝学校隔週5日制〟時代と同じ。なおかつ、授業で扱う内容は増えている。計算は合っていない。給特法うんぬんで解決できるとは思えない。せめて、教科担任制の推進……そこにも人は必要だが。
◉ 日本の実情に合った施策を
これもまた現実。
◆支援を要する児童が増えているが、人手が足りないのが現実。学級人数を30人にするとか、特別支援に携わる教員を増やすなど、もっと丁寧に子どもを見てあげられる仕組みをつくってほしい。(小学校)
◆個人差が大きく、一斉授業が難しくなっている現状があるため、学ぶ内容を精選し、柔軟性を持たせ、一つのことにたくさん時間をかけられるようにする。(小学校)
◆不登校傾向の生徒に対する特例の教育課程を編成することを許可していただきたい。すでに現在の授業スタイルや学校という枠組みが合わないのではないかと考える。各自治体に対し、中小規模校となった学校の空き教室を活用し、学区を超えて特認校とすることを、国をあげて推奨してほしいです。再任用の職員もそこに配置するなど、雇用問題も解決できるのではないかと考えます。(中学校)
もはや、さまざまな場面で従来の学校の仕組みが現状に合わなくなっているのではないか。そんな大局的な議論を期待したい。
◆全国学力・学習状況調査をやめるか、抽出校にしてほしいと思っています。加えて、多くの施策がOECDの調査〈PISAなど〉結果を意識したものになっていると感じているので、それにとらわれない日本らしい施策を示してほしいです。(中学校)
学習指導要領にどんなに理想的なことを書いても、それを具体的に子どもたちの成長につなげるのは、現場の教師たち。「さまざまな状況を捉えて、包括的な議論をしてほしいと思います」(中学校)というのが現場の声だ。
【第4回へ続く】
次回の予定
11月25日(月)
声を聞こう/校長アンケート④