学研『教育ジャーナル』は、全国の学校・先生方にお届けしている情報誌(無料)です。
Web版は、毎月2回本誌から記事をピックアップして公開しています。本誌には、更に多様な記事を掲載しています。
教育ジャーナル Vol.24-4
■声を聞こう/校長アンケート
子どもの考えや思い、アイデアを、
どう吸いあげて活動に落としていくか
学校が頑張れること、国に望むこと
最終回の第4回で2024年に実現したいこと、教師という仕事の魅力について紹介する。
全4回(第4回)
■声を聞こう/校長アンケート
子どもの考えや思い、アイデアを、
どう吸いあげて活動に落としていくか
学校が頑張れること、国に望むこと
【全4回】(第4回)
教育ジャーナリスト 渡辺 研
コロナ禍は落ち着いた。教室には一人1台端末。〝学校の常識〟にはあちこちで変革が進む。
子どもたちが自分の意見をしっかり言えるようになった。でも、変わらぬものもある。
校長先生は2023 年度、新たな課題にどう取り組み、何を思ったのか。
最終回の第4回で2024年に実現したいこと、教師という仕事の魅力について紹介する。
Ⅳ 学校経営・教師という仕事の魅力
Q9 24年に実現したいこと
◉ 本当に大事なことを回復
学校それぞれの個性にあふれている。
◆コロナ禍を経て、子どもも大人も低下している力として、「コミュニケーション力」「コミュニティ形成力」「コメント力」の3つの「C」と考え、この3つの力を特別活動のよりいっそうの充実を通して育む。(小学校)
◆縦割りでの活動。(小学校)
◆異学年交流授業(教科の同領域など)、教師や保護者が生徒役になる授業など。(小学校)
◆対話を大切にした人間関係。(中学校)
◆コロナ禍も様相が変わり、教員の異校種交流を再開しました。
幼・小・中・高の環境が周りにあり、それを活用して教員の人材育成を豊かにしていく機会を実現したいと思います。(小学校)
学校も〝ウィズ・コロナ〟のステージに入ったようだ。コロナ禍で停滞した〝本当に大事な〟ことを回復したい。
◆梅干を使ったレシピづくりから商品化にこぎつけたいと思っています。(中学校)
◆現在よりも、さらに自ら学びに向かう子どもの育成。(小学校)
◆〝ブカツイノベーション〟でNITS大賞をいただきました(NITSのHP参照)。そこで紹介した実践内容が、さらに深化していきたいと思っています。(中学校)
◆子どもたちでホームページを作成し、閲覧できるようにすること。(小学校)
学校に元気が出てきた。
◉ 学校教育目標を意識した活動を
チャレンジングな構想もある。
◆生成AI活用教育。(中学校)
◆朝のモジュール学習と家庭学習に、自己調整学習を取り入れる。(小学校)
◆自動答案採点システムの導入。3年前から市教委へ申請をしていますが、セキュリティ問題があるとのことで、許可が下りません。すでに、他の市町村で導入されて好評ですが、本市は予算化が進んでおらず、まったく進みません。何とか実現したいです。(中学校)
4月に参観した小学校1年生の授業では、3日前に配布された〝一人1台端末〟を、子どもたちが学校たんけん時のメモ替わりに自在に使い、友達と情報交換していた。この子たちが6年生になったとき、学校はどんな風景になっているのだろう。
一方、こんなオーソドックスな構想も。
◆特別支援教育のさらなる充実。(小学校)
◆教育の目的がこれまで、それぞれの教員によって異なっていると感じている。今、教員の中で学校教育目標が強く意識され始めたので、あらゆる教育活動をその視点で捉え直していきたい。(小学校)
学校教育目標には「こんな子どもを育てたい」と書いてある。それを〝お飾り〟にせず、全員で共通理解すれば、たとえ人の入れ替わりがあっても、ブレはないはずだ。
◆創立50周年を子ども主体のものとしていくこと。子どもたちの考えやアイデア、思いをどう吸い上げて活動に落としていくか、心に残るものにできるか、実現していきたいと思っています。(小学校)
創立51周年は、子ども主体元年に。校長先生には来年のアンケートで「理屈抜きに感激した」声を聞きたい。
Q10 理屈抜きで感激した出来事は?
◉ やっぱり卒業式、合唱
やはり学校はこの日に6年間・3年間のすべてが集約されるのだろうか。
◆卒業式です。6年生の成長ぶりに感激しました。(小学校)
◆近い経験がどうしても印象に残ります。卒業式での在校生代表の送辞に感激しました。素晴らしい生徒の語りでした。(中学校)
◆卒業式での合唱。すばらしかったです。(中学校)
◆4年ぶりに全校児童が体育館に集まって実施できた卒業式は、児童一人ひとりの気持ちが歌声に込められ、全校合唱に感激しました。コロナ禍を乗り越えて成長した卒業生の姿がよかったです。(小学校)
コロナ禍で真っ先に禁止の例に挙げられ、最も制約を受けたのが合唱だった。
そのコロナ禍から少し解放され、久しぶりに気持ちを開放できたようだ。
◆卒業式は理屈抜きに感動。子どもが本気の思いでつくりあげた「自分たちの卒業式」になっていた。(小学校)
◆不登校、不登校傾向等により教室に入れない子が23年度の卒業生には8名おり、校長と、将来についてなどを語り合う個人面談を数回重ねた。卒業証書授与式リハーサルには参加できず、校長室での証書授与と覚悟していたが、当日、全員が最初から最後まで参加し、保護者とともに巣立っていったこと。(小学校)
子どもたちの背中を見送る涙が、すべての苦労を洗い流してくれるのだろうか。
◉ ベテランと若手が語り合う姿に
さらに学校には、日々の感激や感動があふれている。
◆朝会で私の話を聞いて、子どもたちがその感想を伝えてくれたこと。(小学校)
◆卒業式練習で、式の目的を自覚してやり遂げていることを、担当教諭が褒めたときに、自分たちを称える拍手が響き渡ったこと。(小学校)
◆感染症が落ち着いて、大きな声で合唱祭が実施されたこと。(中学校)
◆秋の新人戦で、ほとんどの部活動が地区3位以上に入ったことです。部活動のガイドラインをしっかり守っている中での入賞でした。子どもたちの頑張りと先生方の努力に感謝しています。(中学校)
◆子どもたちは常に全力、本気でしたので、そんな姿を見ているとたくさん感動をもらいました。(小学校)
◆「桜ライン311」(*)のプロジェクトが大成功したこと〈修学旅行の内容に組み込み2年生が陸前高田市で桜の植樹を行った〉。生徒たちは山を登り、海を見下ろせる高台に立ち、本当にこの高さまで津波が来たことを思い知ったと、自分事として捉えている様子だった。(中学校)
(*)陸前高田市の津波到達点上、ラインにすると170㎞に10m間隔で桜を植樹し17,000本の桜並木をつくる活動。津波が来たら、桜並木よりも高く、遠くに逃げようという意味が込められている。
校長先生の目は、ちゃんと教師たちにも向けられている。
◆春休みになり、児童と保護者が転出する先生方を訪ねてきて、感謝の言葉を伝えていた。信頼される実践ができていたからこそだとその様子に感激した。(小学校)
◆Q9につながるが、教職員が、これまでの教員生活で本当の意味で学校教育目標を意識していなかった。私自身もそうであったのだが、教員のほうから教育目標を語り始めた。そのことが私にとって感激であった。自分の教員生活を反省しなければ、と思った。(小学校)
◆ベテラン教員と若手が融合して語り合い、笑い合っている姿。(小学校)
そもそもそれが教師の仕事を成り立たせてきたのではないだろうか。
【了】
次回の予定
12月9日(月)
福島県立ふたば未来学園を訪ねて思うこと