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教育ジャーナル Vol.31-1

■授業参観2025 授業を通して実現したいこと
こんな意図をもった授業づくり
教科分担制・チーム学年運営/若手教師の育成/教室に入れない児童の居場所

【全6回】(第1回)

■授業参観2025 授業を通して実現したいこと

こんな意図をもった授業づくり


教科分担制・チーム学年運営/若手教師の育成/教室に入れない児童の居場所


全6回【第1回】


教育ジャーナリスト 渡辺 研



授業のスタイルは以前とは大きく変わった。
教師はしゃべりすぎず、子どもたちの声が教室内に響く。
ずいぶんチョーク&トークからの転換を図れた。
授業改善は順調に進んでいるようだ。
だから改めて、子どもたちの資質・能力の育成とともに、授業を通して何を実現するか、そういう視点をもった授業づくりもされるようになってきた。
p4c もそうだし、リーディングスキルもそうだ。
今年度は、特別な意図をもった授業を見てきた。



横浜市立港北小学校 教科分担制の3年生・社会科の授業

◆ 新たな小学校文化として根づく

 港北小学校(伊藤智樹校長)の「教科分担制を伴うチーム学年経営」は2018年度から始まった(横浜市の最初のモデル校として第6学年で実施)。当時から、専科教師による教科担任制ではなく、チーム学年経営に主眼を置いていた。小学校文化では画期的な改革であったが、その後も、学級経営に支障をきたすとか、改善困難なネガティブな課題もなかったのだろう、今では全学年に拡大して実施している。
 
 文部科学省は教科担任制を推奨する教科として理科や体育など、従来から専科による授業も珍しくはなかった教科をあげていたが、現場では切実感も伴い、もっとダイナミックに進められている。
 
 本誌では、19年度に港北小で教科分担制の仕組みとメリットを取材した。その時点でも、他校の実践とも併せて次のようなメリットや課題があがっていた。

・学級担任が授業を行う教科数が減る
・同じ内容の授業を短期間に繰り返し行える
・1年間、まったく授業をしない教科が出る
・学級担任+αの複数の教師が授業を通して子どもたちに関わる⇨子どもたちには相談できる相手が増える
・他のクラスの学級経営やそれによる子どもたちの育ちを感じ取れる
・教師たちのチーム意識がおのずと高まる⇨学級の問題を担任が抱え込まない。何かのときは誰かが代われる。若手育成にもつながる


 はじめに、前回の取材から6年経ってその点はどうなのか、伊藤校長に確認した
「保護者にもすっかり浸透しており、特に問題もありません。日常的に複数の教員が子どもを見て、何か起きたときも複数で対応できるので、むしろ安心しておられます」とおっしゃる。チーム学年経営のメリットは継続されているようだ。
 
 教科分担はどうか。
「同じ内容の授業を繰り返し行えるだけでなく、それぞれのクラスの児童の雰囲気に合わせて授業をすることになるので、授業力向上には有効だと思います」
 
 特に若手には貴重な機会だ。

「それに、分担する教科については、学年間で評価を統一できます」

 学級間格差も生じにくくなる。
 
 ほかの学級担任の教室で授業をすること自体も、教師には学びの機会になる。

「なぜこんなにスムーズに授業が始められるのだろうとか、掲示とかノートの取り方とか物の置き方とか、そういう具体的な細かいことが、教員にはいい教材になりますね」

 小学校の教科担任制導入は、背景には「働き方改革」の視点があった。授業・教材研究の教科数が減り、一定規模の学校なら“空きコマ”もできる。
「業務負担は減りました。本校でも残業時間が減っています。単に教科数が減ったことだけでなく、教職員に時間管理の意識が生まれてきたことが大きいと思います。例えば、授業も正確に45分で収めなければならないし、空き時間の45分間で事務仕事を済ませてしまおうと。ただ、この仕組みの根本は児童理解と教員の技量向上。その結果、働き方の改革につながっているということでしょうね」

 授業をしない教科については、教師の声をあとで聞かせていただくが、小学校の学級担任制の“制度疲労”を補いながら、教科分担制は新たな小学校文化として根づいているといってもいいだろう。


◆ 分担にさまざまな工夫が見える

 導入当初は高学年がメインの取組だったが、その後の中教審の「中学年でも実施を」とのメッセージもあり、各校で対象学年が広がっている。現在、港北小学校では、第1~6学年で次のような授業分担が行われている。

◆各学級担任の担当教科及び専科による教科(①は「1組の学級担任」。②~④も同様。学級数は第1~3学年は3、第4~6学年は4)
【1年生】 ①体育(校庭)、②図工、③音楽
【2年生】 ①音楽、②国語(小単元)、③体育(体育館)・書写/専科=図工
【3年生】 ①図工、②社会、③理科/専科=音楽、外国語(英語。以下同)、書写
【4年生】 ①理科、②図工、③理科、④図工/専科=音楽、外国語、国語(小単元)
【5年生】 ①図工、②理科、③総合、④社会/専科=音楽、家庭科、外国語、体育(1クラスのみ)
【6年生】 ①図工、②理科、③社会(歴史分野)、④総合/専科=音楽、家庭科、外国語
(今年度の重点研究教科の体育は、なるべく学級担任が授業を行う。1年生、2年生も、領域によって学級担任が授業を行い、研究に生かすことができるよう配慮している)
 
 ほかに、算数(4年生少人数授業、5年生TT)、サポート授業(2~6年生)、国際教室(1~6年生)を級外の教師が担当。組み合わせは学年内で考えて工夫している。原則、学級担任が授業をするのは道徳と今年度の体育。国語と算数は学級担任が授業をしているが、分担してもかまわない。
「タブーはつくらず、“無理なく、できる範囲で、みんなで子どもを見る”という大枠だけを決めています。そのベースがしっかりしていれば、細かいところは先生たちが話し合って決めればいい。道徳も、内容によって分担したほうがいいかもしれませんね」(伊藤校長)


 例えば、6年生では、自分の学級で授業をするのは国語、算数、体育、道徳、学級活動及び分担で担当する1教科だけ。取組を継続し、その間に検証・改善を図っていけば、かなり大胆な工夫ができる。今年度の分担を見ても、いくつも気に留まる。

 4年生はいわば“授業交換”。時間割はつくりやすそうだ。理科と図工は、それぞれ得意な教師がいそうだし、“ダブルキャスト”になれば、教師同士の連携は自然に密になる。教師のキャリアによってはメンター&メンティ的な関係もつくれるかもしれない。

 5、6年生の総合。学習指導要領の改訂では「探究的な学び」としてアップグレードが求められそうなので、興味深いやり方だ。

 また、改訂で「裁量的な時間」が導入された場合、現状でこんな実践ができていれば、有効な学校内調整ができるのではないか。

 国の方針では低学年にまでは言及しておらず、特に学級集団づくりに重点を置く1年生での実施には懸念もなくはなかった。でも、スタートカリキュラムの取材で1年生のクラスを見ても、それこそ多様な子どもたちの集団で、もはや学級担任一人で学級運営全部を担える状況にはないように思う。そもそもスタカリでは複数の大人が子どもたちにかかわるので、そのまま自然に発展させていけば、“学年の先生”は子どもたちに違和感はなく、学級集団づくりと相いれないわけではないだろう。






(第2回に続く)

次回の予定

3月2日(月)
授業参観 2025 授業を通して実現したいこと②