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教育ジャーナル Vol.31-4

■授業参観2025 授業を通して実現したいこと
こんな意図をもった授業づくり
教科分担制・チーム学年運営/若手教師の育成/教室に入れない児童の居場所

【全6回】(第4回)

■授業参観2025 授業を通して実現したいこと

こんな意図をもった授業づくり


教科分担制・チーム学年運営/若手教師の育成/教室に入れない児童の居場所


全6回【第4回】


教育ジャーナリスト 渡辺 研



白新中学校(金山光宏校長)の社会科の授業について、さらに続きを見ていこう。



新潟立白新中学校 若手教師も育てる1年生・社会科の授業

◆将来、取り組むことになる課題

 竹山教諭は、発言の内容を発言者に確認し、ときに一瞬間考え込んだりしながら丁寧に板書していた。こんな教師の姿が生徒には暗黙知なのかもしれない。

 食糧の自給、悪質な違法伐採、雇用と貧困、エコツーリズムの先住民の雇用、日本の物価への影響、動植物の生態系への影響、水力発電による電力供給の割合など、多様な視点からの発言が途切れることなく続いた。


 そんな中、データを示しながらAの政府代表から「開発と保護のバランス。持続可能な経済と環境保全。両立が図れるはず」という発言が出てきた。


 設定した30分があっという間に経過し、お互いの意見に対して気づきや質問を交わす時間が設けられた。そこでも「そもそも先住民は開発にかかわっていない」「その場合、言語はどうするの?」「それ、矛盾してない?」など熱気も発言も尽きなかった。
「続けるべきか、やめるべきか」という、いわば二者択一のテーマで始まったこの時間の授業。「アマゾン開発を続けることで、ブラジルの経済発展につながる。一方で、経済的・社会的格差の拡大や環境面での問題が起きている。また、アマゾン開発は、ブラジルに限らず日本や世界の様々な国や地域の経済、環境に影響を与えるものである」(指導案の「まとめ」より)ことを、本気で語り合った「模擬サミット」を通して生徒たちは理解した。


 でも、本気で語り合ったあとだからこそ、生徒の間には「いや、待てよ。この問題は必ずしも二択ではないよ。バランス。両立。……」という空気が漂っていた。この気づきが学習の深まりであり、次の課題への主体的なかかわりにつながっていくはずだ。
「あと一回、この課題を話し合って、単元を終わります」


 最後の第6時の学習内容は「~模擬サミットを通して得た新たな視点や気づきをもとに課題に対して再度検討し、自己の考えをまとめる」(指導案より)。


 単元が終わっても、おそらく納得解は見つからないだろう。自分たちで気づいた第三の選択肢「両立できるはず」が、生徒たちが将来にわたって取り組むべき課題になる。
「経済か、環境か」だけではなく、この種の問題は現実社会に山ほどある。「熊と人間」でさえ、容易に答えは出せなかった。中学生はそのどれも、それこそ「(原因に)自分たちは関与していない」。でも、10年後、20年後には、前の世代がやり残した課題の解決に自分たちが取り組むことになる。


 社会の出来事はどれも他人事ではない。この日の授業や単元の学びには、そんな気づきがあったのではないだろうか。


◆ 授業者と学習者との協働

 授業後、竹山教諭にお話を伺った。

 サッカーぐらいしか南米やブラジルとの接点がなかっただろう中学校1年生を、どうやってあんなに本気にさせていったのか。
「やっぱり、はじめはサッカーが強いとか、そういうイメージでしたね。南アメリカ州の国も、ブラジル以外はなかなか出てこなくて、他の国はチリくらいでした」


 さすがにあの特殊な地形は印象的。
「そこからスタートして、気候、地形、ブラジル以外の国、世界にいろいろな貢献をしているとか、動物とかそういうことを取りあげました。そんな中に先住民も出てきました。先住民は弱い立場の人だっていう見方をする生徒が多く、先住民のことを書いた本で生活の様子などを学ぶうちに、独自の文化に興味をもった子たちもいて、今日も、先住民の立場に立った子が多かったですね」


 教材とかかわる過程で共感をもった。


 生徒の認知度や地球的課題(アマゾンの森林減少)からブラジルに目を向けた。
「次に経済発展の面にふれて、鉱物資源や大豆やコーヒー豆を通して日本とかかわりが深いことも学習して、ブラジルに焦点を当てていきました」


 開発をやめようと、データに基づいて発言した生徒についても伺った。
「考えるヒントは与えましたが、情報を収集してプレゼンみたいに作りあげたのは子どもたちです。あそこまでやってきたのには、私も驚きました。この単元では、私自身、資料をたくさん読んで、『これを子どもたちは読み解けるかな?』と思った資料もたくさん用意しました。学習の幅を広げたり深めたりするのは、やはり教材研究しだいだと、すごく感じた単元でした。子どもたちもそれに応えてくれて、プラスアルファの資料を自分たちで調べて授業に臨んでくれました」


 生徒たちの本気度は、教材とのかかわりを丁寧に進めていった成果なのだろう。


 参観者には気づけない手応えもあった。
「ふだんの授業ではあまり発言しない子どもたちが、今日は発言してくれたのが、すごくいい姿だなと思って、うれしかったです」


 続ける派の前列にいた数人の男子生徒が積極的に授業に参加していた。
「話し合いという形式が合っていたのかなと思います。講義のような授業だと、なかなか子どもたちの考えを引き出す機会をつくれないということもありました。今日は、前の段階でヒントを与えた上で、あとは子どもたちに任せたので、あんなに話し合える授業になったのかなと感じました」


 生徒を本気にさせたなら、この日の授業は生徒たちに任せておけばよかった。「主体的」や「学びに向かう力」がさらに育てば、教師の役割も変わっていく。


 授業は教師だけが頑張るのではなく、単元を通して授業者と学習者との協働によってつくっていく、そう感じた授業だった。






(第5回に続く)

次回の予定

4月13日(月)
授業参観 2025 授業を通して実現したいこと⑤