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教育ジャーナル Vol.31-5

■授業参観2025 授業を通して実現したいこと
こんな意図をもった授業づくり
教科分担制・チーム学年運営/若手教師の育成/教室に入れない児童の居場所

【全6回】(第5回)

■授業参観2025 授業を通して実現したいこと

こんな意図をもった授業づくり


教科分担制・チーム学年運営/若手教師の育成/教室に入れない児童の居場所


全6回【第5回】


教育ジャーナリスト 渡辺 研



3つめに紹介するのは、不登校傾向にある子どもや、在籍級に居続けることが難しい子どものために、学校内に“安心して過ごせる居場所”や“個に応じた学び”を提供する取組だ。



横浜市立荏田東第一小学校・「しなやかルーム」の授業

◆校内に、安心できる居場所を

 少し特別な授業参観だ。でも、「多様性の包摂」や「学びの多様化」が打ち出されている今(結果、「誰一人取り残さない」)、それは必ずしも特別ではなく、子どもの学び方の現実の例だ。なんらかの理由で登校が難しかったり教室に入れなかったりしている子どもたちが、この部屋にいて、会話を交わし、一緒に活動し、学んでいる。

 荏田東第一小学校(北村高則校長)、通称“えだわん”ではこの部屋を「しなやかルーム」(特別支援教室)と名づけている。“えだわん”には一般学級のほかに個別支援学級と通級指導教室もあり、「しなやかルーム」も多様な学びを実現する取組の一つ。
“この部屋”を少し説明する。

 横浜市では、不登校傾向にある子どもや、在籍級に居続けることが難しい子どものために、学校内に“安心して過ごせる居場所”や“個に応じた学び”を提供する「校内ハートフル」という取組を行っている。場所を設け、支援員を配置し、登校支援や学習支援など個別の状況に合った支援を実施する。市立中学校の全校に設置、小学校でも数年前からモデル校がスタートしている。

 パブリックでは市内4か所にハートフルスペース(遊び場的)、民間委託を含む11か所にハートフルルーム(教室的)を設け、不登校傾向の児童生徒の支援を行う。


 “えだわん”では、学校が目指す「多様性を包摂し、可能性を開花させる教育」と、それに共感した保護者からの提案により独自に「校内ハートフル」=「しなやかルーム」を設置した。「学校になかなか足が向かない子や集団になじまない子にも、多様性を包摂できる取組を強化したいと思ってきました」と北村校長はおっしゃる。
「しなやかルーム」は学習支援(取り出し学習)と登校支援の二つの機能を有しているが、児童が勝手にやってきて自由に過ごすわけではない。登校支援を説明しておく(「学校からの保護者へのお知らせ」より)。
〈しなやかルーム〜安定した登校につながる支援=教室以外にも安心できる場所を学校内につくりたい/静かな環境で過ごしたり、学習に取り組んだりしたい/一時的に教室を離れ、気持ちを整えたり、エネルギーをチャージしたりしたい
など、安定した登校につながるよう、登校支援を行う。登校から下校までのスケジュールを担当教諭と確認し、自習に取り組んだり、教室で授業に参加したりと、自分で立てた計画に沿って一日を過ごす。〉

 そういう部屋だ。子どもたちはそれぞれ一般学級に在籍しているが、保護者からの相談を受け、校内委員会で検討して判断する。その際、個別の教育支援計画や指導計画を作成し、ほかの子どもたちとは別の『あゆみ』(通知表)をつくることに子どもと保護者には同意してもらい、「しなやかルーム」で過ごせることになる。

 また、決定後も“いつでも自由に”ではなく、子どもと相談の上で個々に「何曜日の何時間目」を「しなやかルーム」で過ごすかを決める(取り出しの児童も同様)。「甘やかすばかりでは、学校ではなくなります」と北村校長。約束事があり、それを守って生活することは、その先を考えたときに重要だ。あとで紹介するが「しなやかルーム」内にも約束事はある。


◆「しなやかルーム」の約束事

 ここを“離れ”のような場所にはしたくないと、北村校長が気を配ったのが環境だ。

 場所は校舎1階の校庭に面した角部屋。部屋の外には出入り口があり、昇降口を通らずに部屋に来ることができる。学校に着いて、窓のそばを通って玄関に向かうときに部屋で自習する児童と目が合ったのだが、見られることを気にするでもない。
「子どもには『目立ちたくはないけど、見つけてほしい』という心理があるようです」


 子どもは孤立を望んでいるのではない。


 校舎内の位置は保健室やトイレにも近い。


 何かの原因で急に学校に行けなくなることは、どの子にも起こりうる。だから、「しなやかルーム」がいつでも子どもたちの選択肢になるようにしておきたい。


 室内は、中央に自習ブースが設けられ(自分の場所は決めてある)、それが間仕切りのようになって学習支援と登校支援のスペースを分けていた。学習支援には机・椅子が2セット(同時に学習する場合は原則2名)。登校支援は7名分のブースのほかに共用のテーブル、窓側のフロアにはマット。子どもたちはここにペタンと座ってゲームなどをする。


 壁には「しなやかルーム」での約束事が貼ってある。
「★よていがきまったら……30分をもくひょうに がくしゅうに とりくみましょう (そのあと、つかいたいひとは 15分間 タブレットがつかえます)」「★3じかんめは……みんなでがくしゅうするじかん たとえば…ずこう・しゃかい・りか・コミュニケーションのべんきょう など」「★4じかんめは……みんなでゲームのじかん トランプ・マンカラ・すごろくなど またはちょうせいのじかん 11時30分をすぎたら、タブレットをつかってもよいです」「★べんきょう じぶんのべんきょうしやすいほうほうをしる しゅうちゅうりょくアップ さいごまでがんばる」「★じぶんのこと とくいなこと・にがてなこと こまったときどうするか? コントロール」


 前期の様子を見て約束を決め、後期から実施した(学校は2期制)。これを嫌がった子もいたそうだが、ほかの教室と同様、「しなやかルーム」も社会とつながっている。

 






(第6回に続く)

次回の予定

4月27日(月)
授業参観 2025 授業を通して実現したいこと⑥