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GIGAスクール構想とICT活用

キーワードで再確認! GIGAスクール構想とデジタル教科書・教材

(2021年10月21日更新)

キーワードで再確認!
GIGAスクール構想とデジタル教科書・教材

学研教育みらい編集部

はじめに

新型コロナウイルス感染症の感染拡大による臨時休校措置を起点とし、令和2(2020)年度に1人1台端末の整備が一気に進みました。本来、令和6(2024)年度に向けて段階的に進められていくはずだったGIGAスクール構想が、一足飛びに端末整備となったために、構想全体や学習指導要領との関係、目的や期待される効果などが見えにくくなっているように見受けられます。
本稿では、いくつかのキーワードを基に、GIGAスクール構想やデジタル教科書などについて、再確認できるように整理します。

キーワード1 GIGAスクール構想

「GIGA」は、「Global and Innovation Gateway for All」の頭文字をとったものです。
文部科学省が出したリーフレットなどでは、次のようにまとめられています。

1人1台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備することで、特別な支援を必要とする子供を含め、多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化され、資質・能力が一層確実に育成できる教育ICT環境を実現する

これまでの我が国の教育実践と最先端のICTのベストミックスを図ることにより、教師・児童生徒の力を最大限に引き出す(下線は編集部)

1人1台端末が一気に実現したものの、高速大容量の通信ネットワークはそれに見合うだけの整備が進められていない自治体や学校もあるようです。先に挙げたまとめにある「個別最適化」と「これまでの我が国の教育実践」という言葉から、1人1台端末を用いる場面とそうでない場面、一斉に(みんな同様に)用いる場面と個々に見合った学習活動に用いる場面などを考える必要があることがわかります。

効果的な場面、効果的な活動で、1人1台端末を活用することが求められているのですね。

キーワード2 デジタル教科書

ひとくちに「デジタル教科書」といっても、制度上いろいろな決まりや区分があります。

(文部科学省『学習者用デジタル教科書の効果的な活用の在り方等に関するガイドライン』平成30年12月より作成)

児童生徒が使用する「学習者用デジタル教科書」は、紙の教科書の内容の全部をそのまま「電磁的記録」したものです(学校教育法第34条第2項及び学校教育法施行規則第56条の5を参照)。動画や音声、アニメーションなどの教材を付けることは認められておらず、これらの教材があるものは、教科書ではなく「教材(一体型)」と呼ばれます。同様に、「指導者用デジタル教科書」も制度上は「教材」扱いです。
しかし、2021年6月に文部科学省から出された「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議 第一次報告」では、「教科書」と「教材」の両方が連携することでデジタルのよさが生かされるとの期待が示されたように、今後は、デジタル教科書の法律上の定義などが変わっていく可能性もあると言えそうです。また、同報告では、紙かデジタルかの二項対立の議論に陥らないようにすべきとの課題も挙げられています。

デジタル教科書でできること、その他の教材や授業支援システムなどでできることなどを正しく知ることが大切ですね。GIGAスクール構想で挙げた課題と似ていますね。

キーワード3 教育データの利活用

GIGAスクール構想における1人1台端末や、デジタル教科書は、教育にどのように関わっていくのでしょうか。

令和2年7月から令和3年3月にかけて、「教育データの利活用に関する有識者会議」が開かれ、「誰一人取り残すことなく、全ての子供たちの力を最大限に引き出すことに資するよう、教育データの効果的な利活用を促進するために必要な方策について具体的な検討を行う」という観点から議論されました。

(文部科学省「教育データの利活用に関する有職者会議」資料より作成)

ここでは、デジタル教科書や教材を活用した学習履歴(スタディ・ログ)、健康生活面などのライフ・ログ、教師の指導・支援履歴(アシスト・ログ)などを利活用し、質の高い授業をデザインすることが必要とされています。定量的なデータに当てはめて、その通りにするということではありません。児童生徒の理解や主体性などの定性的なものや、どんな指導・支援を行ったか可視化することで、データに基づいて授業や指導を改善していくことにつなげるのが、第一義的な利活用といえます。これは、小中学校で、令和2年度・3年度から完全実施となった学習指導要領に示された、主体的・対話的で深い学びを実現する授業改善につながるとともに、これからの学習評価の在り方につながります。つまり、教師が指導の改善を図るとともに、児童生徒自身が自らの学習を振り返って主体的に次の学習に向かうことができるようにするためのものであり、教育データの利活用は、これを支えるものになると考えることができます。

教育も、医療などのように「データ駆動型」になることが必要という議論もあります。
今はまだ、個人情報としての取扱いや、データの所有権の問題など、さまざまな課題もあるようです。

おわりに

デジタル教科書などに関わる施策は、学習指導要領をはじめとする日本の教育の目指している方向などとリンクするように考えられています。1人1台端末が実現した令和3年度を、これからの学校教育の大きな転換点とできるよう、学校での小さな一歩の積み重ねが起こることを望んでいます。