第1回 この時代の子どもに重要な運動遊びを、より主体的に行えるために必要なこと
執筆担当:眞砂野裕(東京都昭島市立光華小学校校長)
(2024.02.08 公開)
東日本大震災以後10年以上にわたる活動からの気づき
2011 年の東日本大震災以後、未曾有の災害が子どもたちから奪った日常的な運動遊びを補填するべく、体育を専門分野にする有志(大学研究職、小学校教員、企業人など)が、主に福島県を拠点にして親子や保育士などの指導者向けに、室内でもできる運動遊びを展開してきました。
各専門家が知見を出し合い、実践を通して運動を遊びを精選していく中で抽出されたものこそが、「子ども自身が面白く、のめり込むためのポイント」でありました。それは、強制的に運動を行わせてしまうような、一部のスポーツ指導者や体育教師、保護者などの指導とは一線を画するものでした。子ども自身が生涯にわたって主体的に運動に親しむ資質や能力を育み、「結果的に」技能や体力の向上にもつながる運動遊びの提唱者=「この国における新しいプレイリーダー像」を具現化する道といえるものでした。
子どもたちのウェルビーイングをめざして
コロナ禍を経験した保護者やスポーツ指導者の多くは、子どもにとって運動遊びがどれだけ重要であるかを強く再認識しているだろうし、今後もその認識は続いていくものと思います。
自分の子どもや、学校、スポーツクラブなどで指導する子どもたちを目の前にしたとき、そうした大人たちを突き動かすのは、特定のスポーツ(その技能向上)や発達段階に沿わない体力向上ではなく、「体を動かすことを楽しませてあげたい!」「一緒に遊びたい!」というもっと原理的な保護者や指導者としての願いではないでしょうか。
体を動かして思いっきり遊んだり、遊ぶことを制限された不自由な時代を経験したからこそ、多くの大人たちは運動遊びを通した、子どものはじける笑顔を待ち望んでいることでしょう。それはまさに、子どもたちのウェルビーイングを感じられる瞬間に出会うことでもあります。
この連載では、そうした保護者や指導者のニーズに応えていきたいと考えています。
この連載で示す「運動遊びのアイテム」
この連載では、次のような運動遊びを、動画などを交えてご紹介していきます。
- 子どもの発育・発達や運動(運動遊び)における指導の各分野の専門家が、自らの研究や全国各地での実践を元に 10 年以上かけて精選してきた「運動遊びのアイテム」
- どの子どもにとっても面白くのめるこめる運動遊びであることはもちろん、小学校体育(例:マット運動)やこれから特化していく運動種目(例:サッカー)のスキルアップにもつながるポイントが内在した「運動遊びのアイテム」
- これらの「運動遊び」の内容だけでなく、子供と運動遊びを楽しむための指導技術(例:説明のポイント、遊びのプログラミング)
きっと、次のようなみなさんに、特に役立てていただけると考えています。
- 幼小の架け橋期や小学生のお子さんがいる保護者
→例:もっと子どもと体を動かして遊びたい、子どもに体育を得意になってもらいたいと願う保護者 - 教師・保育士(特に、新人〜指導歴 10 年/小学校教師で「体つくり運動」の授業が苦手/年長さんの運動遊びでさらなるアイデアがほしい保育士・園)
→例:何か子どもを盛り上げる遊びを知りたいと思う教師や保育士、学習指導要領や副読本の内容より一歩前進したいと思っている教師 - 指導の幅を広げたいと考えているスポーツ指導者
→競技種目の練習前に(その競技種目につながるような)面白いウォームアップを探しているコーチ
どうぞ、ご期待ください。
Profile ●東京・山梨動きづくり研究会
山梨大学学長中村和彦教授を中心に、東京都と山梨県内の小学校教員が中心となって組織する研究会。
小学校の教員だけでなく、企業、保育士、幼稚園教諭、運動指導関係者などさまざまな方が参加している。
https://ugokizukuri.amebaownd.com