第5回 運動遊びのアイテム④ 模倣や想像を生かした運動遊び
東京・山梨動きづくり研究会編
(2024.06.18 公開)
動きをまねしたり、姿勢や力の入れ方を工夫したりしてみよう
○3時のおやつは?
①3種類の「おやつ」のポーズを確かめる。
○ショートケーキ、ドーナツ、シュークリーム(動画を参照)
②プレイリーダーが「3時のおやつは~」と言ったら、自分のおやつのポーズをする。
③プレイリーダーと同じポーズをとれたら勝ち。
《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
「おいしそうなおやつをつくるよ!」「おいしそうなドーナツだね。どんな味かな?」
味をポーズにするのはできませんが、雰囲気はつくることができます。
《このアイテムのよさやねらい》
○導入で行うことで、子どもの注意をひきつけることができる。声や動作を揃えたり、間をとったりするとよい。(このときに
子どもの気持ちが「キュッ」と集まる雰囲気を感じ取ることができれば最高のプレイリーダーです!)
→こんな発展ができます。
○フェイントを入れて
プレイリーダーは「ショートケーキ」と言いながら、「ドーナツ」の動作をする。
○おやつの数を変える。
はじめの3つのほかに、まんじゅう(しゃがむ)、ポップコーン(大の字ジャンプ)、ソフトクリーム(1回転)などを加
えてみる。
★プラスワン★ 動きは子どもの考えた動きを取り入れることも大切です。自分が考えたことがみんなの遊びにつながるという体験は、子どもの有能感を高めます。
○言うこと一緒、やること一緒(言うこと反対、やること反対)
①プレイリーダー「言うこと一緒」
子ども「言うこと一緒」
プレイリーダー「やること一緒」
子ども「やること一緒」
とリズムに乗って復唱し、動きの準備をする。
②プレイリーダーの動きの指示を見聞きし、同じ動きをする。
「前」(前に両足跳び)・「前」
「後ろ」(後ろに両足跳び)・「後ろ」
など。1指示1動作を繰り返す。子どもがタイミングをつかむまではゆっくり行う。
※「一緒」を「反対」に変えた場合は、反対の動きをする。
《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
「みんなすごくできているから、ちょっと難しくしてもいいかな?」
子どもたちの慣れに合わせて、少しずつ難易度を上げる(方向、速さ、回数など)。
《このアイテムのよさやねらい》
○プレイリーダーの指示どおりでも、初めての動きだとうまくいかない、間違ってしまうことも多くあります。それも楽しむことができます。
→こんな発展ができます。
○並んだり手をつないだりして行う
みんなとの一体感を味わうことができる。
○プールの中で行う。 水の中では動きが一変する。「下」は「潜る」に、「上」は水の抵抗を感じながら、「ジャンプ」に。
★プラスワン★ 誰でも初めてやることには不安や混乱がつきまといます。間違えることも「大丈夫だ」という雰囲気を大切にしていきたいですね。みんなで「失敗も面白いんだ!」という安心感の中で遊んじゃいましょう。
○大根抜き
①2人1組で向き合って座り、ペアの一人が片足(大根)を前に出す。
②プレイリーダーのリードで歌を歌い、かけ声とともにもう一人が足を引っ張る。
このとき、足を出している人は動かされないように踏ん張る。
《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
「どこに力を入れたらいいかな?」
《このアイテムのよさやねらい》
○日常で少なくなっている「ものを引っ張る」という動きを通して、力の入れ方を実感することができます。
○引っ張るとき、引っ張られないように踏ん張るときに、どんな姿勢がよいのか、体のどこに力を入れればよいのか、自分の体
と対話する時間が生まれます。
→こんな発展ができます。
○もっと大きい大根
一人が両手両足を広げてうつ伏せに寝ているのを、もう一人が引っ張る。
○さかさま大根
一人が両手を床に突っ張り仰向けに寝ているのを、もう一人が引っ張る。
★プラスワン★ 「えー? その姿勢でいいの?」足を引っ張る直前に、あえて一時停止して子どもたちに問いかけます。子どもたちはそこで再度考え、手や足の位置を動かし始めます。正しい答えでなくてもよいのです。自分で考え、気づき、試して、実感する。このプロセスを大人が奪わないようにしましょう。
動きを合わせたり、仲間と協力したりしてみよう
○もどってこれるかな?
①2人1組で向き合い、両手をパーにして合わせ、位置を覚えておく。
②目をつぶって、その場で5歩で1回転する。
③目をつぶったまま、最初の手の位置でまた手を合わせられたら成功。
《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
「5歩で戻ってこれるかな?」
目をつぶって回るだけでなく、5歩という具体的な制限を加えることで、
ドキドキ感を味わいながら動きのコントロールをしていくことができます。
○ハイドン
①2人1組で向き合って立つ。
②(1)「せーの」のかけ声のあと、
(2)「ハイ」で、両手で膝を打つ。
(3)「ハイ」で、両手の親指を右・左・上のいずれかに出す。
同じ方向に親指を出したら、「ドン」と言いながら両手でお互いを指さす。
違う向きの場合は、(2)から繰り返す。
③できるようになってきたらスピードを上げる。
《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
「はじめはゆっくり、ゆっくり。」安心感を持たせて遊びに入るのもプレイリーダーの役目です。
★プラスワン★ 手の形を変えたり、さらに難しい課題に挑戦したり、達成目標を子どもたちに委ねることができます。これによって、遊びの主体性をはぐくむことができます。うまくできているペアをみんなに紹介して(そっと許可をもらってから)、「みんな、あの二人すごいよ(面白い動きを試しているよ)! みんなもできるかな?」などと誘うことで、遊びの世界を継続させながらのめりこませていくことができます。
○いもむしリレー
①2チームに分かれて手をつないで横1列になる。
②列の外側の人から順番に大きく1周走り、1周し終えたら列の内側につく。
③前の走者が内側についたら、一番外になった人が同じように走る。
④手をつないでいる人は、味方が早く回れるようにしたり、相手の走る距離が長くなるようにしたりするために、
つないでいる手を縮ませたり伸ばしたりしてよい。
⑤先に全員走り切ったほうが勝ち。
《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
「どうしたら相手より早くゴールできるかな。」味方が来たら縮んで、相手が来たら伸びることに、子どもたちが気づくまで待つことが大切。
《このアイテムのよさやねらい》
○①勝ち負けにつながる原理を知る、②勝つための作戦を立て、共通理解を図り実行する、③実行するために声を掛け合ったり
する場面が生まれます。
→こんな発展ができます。
○3チーム、4チームでの対決
3チームでは120度間隔、4チームでは十字型に配置します。作戦もより複雑になります。
★プラスワン★ 単純な足の速さの合計で勝ち負けが決まらないのが、いもむしリレーの特徴です。工夫しだいで誰もが活躍できたり、勝敗が予測できないようになったりすることで、遊びの魅力がより高まります。
宇宙をキーワードに動いてみよう
○UFO
①5~6人程度で1組になり、リーダーを一人決める。
②手をつないで円をつくり、リーダーが円の中心に入る。
③リーダーは人さし指を真上に上げて、動きを指示する。
○真上に上げる:リーダーの周りを回る。
○進みたい方向を指示する:手をつないだまま、その方向に移動する。
※止まるときは、リーダーが人さし指を真上に上げる。
《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
「ぶつかったら宇宙事故だぞー。」安全確保のためにもリーダーが上手に指示を出す意識づけが大切。役割を交代して、全員がリーダーを務めるとよい。
《このアイテムのよさやねらい》
○意図的にさまざまな方向に動く、走ることができるようになる。
○空間認知が高まる。ボール運動の「ボールを持っていない動き」につながる。
→こんな発展ができます。
○プールの中で
プールでは、指を下に向けると潜ります。水の苦手な子も、いつのまにかできてしまうこともあります。
○人工衛星
①4~7人程度で1組になる。
②手をつないで円をつくり、「人工衛星、人工衛星」の合図で手をつないだままぐるぐる回る。
③「と・ま・れ」の合図で、手を放してポーズをとる。5秒間ポーズを崩さない。
《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
「ぐらぐらしたら、(足の指を)ぎゅっと踏ん張れ!」どこに力を入れたらよいか、声をかけてみる。
《このアイテムのよさやねらい》
○バリアフリーが進んだ現代の生活ではバランスを崩す場面がそう頻繁に訪れません。体のどこを使うとよいのかを、遊びを通
して経験することができます。
→こんな発展ができます。
○手をつないだまま
手を放さずに踏ん張る。足が動いたら負け。まずは両足をついて、片足で、グループでポーズを工夫して、などに発展。
★プラスワン★ 6人程度のグループをつくろうと言ってもすぐにはできません。2人組、3人組、その組み合わせと増やしていくとよいでしょう。ここでは「宇宙」をキーワードにしましたが、「遊びの国にレッツゴー」「ここは恐竜の島だぞー」など、設定をつくって遊びの世界に子どもたちを没入させられる指導者はプロです。指導者自身も何かになりきってやってみましょう。
Profile ●東京・山梨動きづくり研究会
山梨大学学長中村和彦教授を中心に、東京都と山梨県内の小学校教員が中心となって組織する研究会。
小学校の教員だけでなく、企業、保育士、幼稚園教諭、運動指導関係者などさまざまな方が参加している。
https://ugokizukuri.amebaownd.com