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子どもを運動好きにするために大人が大切にしたいこと

第6回 運動遊びのアイテム⑤ 模倣や想像を生かした運動遊びその2

東京・山梨動きづくり研究会編

(2024.06.25 公開)

みんな大好き、忍者シリーズ!

忍者修行【基本の身のこなし①隠れ身の術】
 ①2人1組になり、一人(A)が長座で座り、もう一人(B)がAの足の横に立つ。
 ②Aが手をたたいている間、BはAの周りを走る。
 ③Aが「ストップ!」と言ったら、Bはその場でピタッと動かずに止まる。
  ぐらぐらせずにピタッと止まれたら成功。
 何度か繰り返し、続けて成功して忍者城への到達を目指す。

《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
 「あれ? 見えない?」「もうすぐ忍者城に着く! その調子!」
 ピタッと止まることができたら、プレイリーダーが声をかけることで、「隠れ身の術を使える忍者」として認める 
 ことができ、ファンタジーの世界に誘い、忍者になりきる楽しさを引き出すことにつながります。

《このアイテムのよさやねらい》
○この遊びの面白さは静と動のメリハリ。一定のリズムで動く・止まるを繰り返したら、動く時間を長くしたり短く
 したりすることで、楽しさが増していきます。

→こんな発展ができます。
○オンリー隠れ身の術
 自分で考えた走り方やポーズで、動いたり止まったりする。
 ・走り方の例:サイドステップ、両足跳び など
 ・ポーズの例:木や岩になりきる など


○忍者修行【基本の身のこなし②トンネルくぐりの術】
 ①2人1組になり、一人(A)がトンネル役、もう一人(B)がくぐる役。
 ②Aは腕や脚、体全体を使っていろいろな形のトンネルをつくり、Bはそれをくぐる。
 ③プレイリーダーの終わりの合図があるまで続けてくぐる。
  10秒間で何回くぐれるかなど、制限を加えて発展させることもできる。

《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
 「このトンネル、面白い!」
 トンネルの形が変われば、くぐる動きも変わります。トンネルの素敵なところを具体的に褒めていきましょう。


○忍者修行【基本の身のこなし③素早い身のこなしの術】

 ①2人1組になり、一人(A)が先導役、もう一人(B)が反応して動く役。
 ②Aが上下左右いろいろなところに手を出し、Bがそれに反応してその手にタッチする。
 ③途中にAが声を出して別の動きを加える。
  「カラスが来た!」→しゃがむ。「ヘビが来た!」→跳ぶ。「雷!」→へそを隠す。など
 ④プレイリーダーの合図で終了する。

《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
 「おっ!速い! もっと速く!」
 素早く反応できていることを認めて声をかけていきましょう。「タッチが速い!」「素早くしゃがんでいる!」な
 ど具体的に言葉をかけられるともっとよいです。

★プラスワン★ 忍者シリーズでは、頭や手首にバンダナを巻くなど、少し着飾るだけで、子どものなりきりスイッチが発動します。なりきり力が発揮できれば、より研ぎ澄まされた動きを引き出すことができます。実際に親子で行った際、トンネルくぐりのときに親が腕立て伏せをしながら(自主的にトレーニングを交えて)トンネルをつくったり、素早い身のこなしで体のあちこちでタッチする子どもの姿が見られたりします。プレイリーダーの言葉のかけ方で、動きや楽しさが変化し広がることがわかります。


みんな大好き、忍者シリーズ! もっともっと忍者らしく!

ぐらぐらの術
 ①手を広げて片足で立ちバランスをとる。10秒間片足で立っていられたら成功。
 ②次に、反対の足でも立ってみる。


《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
 「どうしたら上手にできるかな?」
 動きのコツを言語化させましょう。言語化は動きだけでなく、行動のコントロールにもつながります。言語化の習
 慣をつける手掛かりにしていきましょう。

→こんな発展ができます。
 ○場面やストーリーを加えて、バランスをとる姿勢を変える。
  「つかまってしまった!」→手を後ろで組んでバランスをとる。
  「暗いところに入ったよ!」→目をつぶってバランスをとる。  など
  これらの動きの指示に、「忍者ならどうするかな?」「さらに上級忍者を目指して……」「いよいよ最終奥義に
  挑戦!」などとストーリーを加えて、動きの精度やバリエーションを高めていくことができる。
 ○手をつないで二人の忍者で
  一人がバランスを崩すともう一人もバランスが崩れる。ドキドキ感を楽しみ、さらにうまくバランスをとる方法
  を考えるようになる。


影の術
 ①2人1組になり、一人(A)が動く人、もう一人(B)がその影(忍者役)となる。
 ②BはAの背中に手を当てて立つ。
 ③Aはゆっくりいろいろなところへ歩き、BはAの背中から手が離れないようについて歩く。
  慣れてきたら、Aは歩くスピードを速めたり、途中で変えたりしながら歩く(緩急のつけすぎは安全上注意が必 
  要)。



《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
 「同じようにまねしてみて!」
 スポーツで「まねをすること」は、動きの上達にとても大切な要素です。前の人の動きを見ながら、手で感じなが

 らまねすることを楽しみます。

→こんな発展ができます。
 ○いろいろな動きをまねする。
 前を歩く人が、しゃがむ、ジャンプする、寝転ぶ、などの動きをしてみる。ほかのペアがしている動きをさらに取

 り入れてみる。など。

○畳返しの術
 ①2人1組になり、一人(A)が畳(忍者)役、もう一人(B)がひっくり返す役。
 ②Aはうつ伏せになって床に張り付いて待つ。
 ③BがAをひっくり返せたら勝ち。
  ※腕や服を強く引っ張ったり、くすぐったりするのは禁止。
  慣れたら、Aがあお向けになって行う。

《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
 「そのポーズでいいの?」「手や足はその位置でいいの?」
 この遊びでは日常にない体への力の入れ方を経験します。自分の体の使い方と新しい出会いをするチャンスです。

→こんな発展ができます。
 ○時間の制限を設ける。
 「今から10数えるよ。」プレイリーダーの10カウントで、遊びにリズムやドキドキ感、メリハリなどが出てきます。


みんな大好き、忍者シリーズ! 家庭で楽しめる!

○縄抜けの術
 ①子ども(A)が長座で座り、大人(B)が後ろから「両手の縄(だっこ)」で捕まえる。
 ②プレイリーダーが10数える間に、「両腕の縄」から抜け出せたら勝ち。
  ※腕を叩いたり、ひっかいたりなどけがをさせるような動きは禁止。子どもは靴を脱ぐ。


《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
 「体全体をうまく使って抜け出そう!」
 「両腕の縄」からうまく抜け出すためには、腕を外そうとするだけでなく、体全体を使ったほうがうまくいきま
 す。このかけ声で、全身の動きを意識させましょう。

《このアイテムのよさやねらい》
 ○親子ならではの直接的なスキンシップを大切にすることができます。
 ○遊びという「しかけ」があるからこそ、思いきり抱きしめる(抱きしめられる)ことができます。この経験は、
  子どもの心の奥深いところで成長の土台になることでしょう。子どもが恥ずかしがってこの遊びをしてくれなく 
  なる前に(できるうちに)、ぜひ!

○丸太渡りの術
 ①大人が丸太役になりうつ伏せで寝転ぶ(腕は体側につける)。子どもはその背中にうつ伏せでしがみつく。
 ②大人はゆっくり回転し、子ども(忍者)は、落ちないようにしがみつく。
 ③大人の体が1回転するまで落ちずに(体が床につかずに)しがみついていられたら成功。
  大人2人で「2本の丸太に挑戦」とすることもできる(途中で別の丸太に移る)。


《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
 「どうすれば落ちない?」
 体をずらしながらしがみつくことに気づかせる。気づく⇔やってみるの繰り返しが大切です。

《このアイテムのよさやねらい》
 ○親子ならではのスキンシップを大切にしながら、大人の体の大きさや筋肉の動きなどを実感することができます。

○木登りの術
 ①大人が木の役になり、倒れないようにどっしりと構える。
 ②子どもは木に登り、体の周りを1周できたら成功。


《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
 「(次は)どこをつかんだらいい?」
 次はどこに手と足を置くかを考えながら挑戦できるようにしましょう。自分の体との対話にもなります。

《このアイテムのよさやねらい》
 ○少し高いところに体を持ち上げる体験につながります。登り始めから子どもに動きを任せることで、体全体を使
  って(体に力を入れる)よじ登る経験ができます。少し高い鉄棒に跳びつき、腕支持をするまでの動きにもつな
  がります。

★プラスワン★ 家庭で楽しめるシリーズは、布団の上などでも遊ぶことができるものです。運動遊びは広い公園に行かなくても大丈夫です。もっと気軽に運動遊びを日常化することができます。家族構成などを基に、自由に縄の本数を変えたり、捕らわれた忍者の数を変えたりさまざまに工夫ができるのも家庭での楽しみのよさです。また、力の入れ方がわからない(入れすぎてしまう)なども、家庭内だからこそ安心して「試して」みることができるのです。ここで紹介した運動遊びを通して、自分の体への自信をつけていってほしいと思います。



Profile ●東京・山梨動きづくり研究会
山梨大学学長中村和彦教授を中心に、東京都と山梨県内の小学校教員が中心となって組織する研究会。
小学校の教員だけでなく、企業、保育士、幼稚園教諭、運動指導関係者などさまざまな方が参加している。
https://ugokizukuri.amebaownd.com