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子どもを運動好きにするために大人が大切にしたいこと

第7回 運動遊びのアイテム⑥ ペアで動く・動かされる運動遊び

東京・山梨動きづくり研究会編

(2024.07.02 公開)

操られる、身を任せる。不思議で新鮮な感覚が味わえる運動遊び

○フィンガー・アイ・ムーブメント
 ①2人1組になり、一人がリーダー(動かす人:A)になる。
 ②向き合って立ち、Aはもう一人(B)に人さし指と中指を向け(ピースサインの手の形)、Bはその指を見つめ
  る。
 ③Aは二本の指をさまざまな方向に動かし、Bは指から目を離さないように体の向きを変えていく。
 2~3分間で役割交代する。


《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
 「体をリーダーの指とリンクさせてね。」
 顔だけでなく、体全体を連動させてダイナミックに動くようにしましょう。

《このアイテムのよさやねらい》
 ○指に集中していると、向きを変えたりバランスをとったりするために意識せずに体がいろいろな動きをします。
 ○リーダーは立ったまま指を動かすだけでなく、体全体を使って指を移動させると、ダイナミックな動きが生まれ
  ます。リーダーも体をさまざまに動かすことができる運動遊びです。

→こんな発展ができます。
 ○3人で
 リーダーは1人で両手を動かし、ほかの2人がそれについて動く。


○脱力ストレッチ
 ①2人1組になってじゃんけんをし、負けたほう(A)が長座になって力を抜き、バンザイをする。もう一人(B)
  がAの手を握る。
 ②BはAの手や体をさまざまな方向にゆっくりゆらゆら動かしてあげる。
  数10秒~1分間程度行ったら交代する。


《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
 「うまく力を抜けなかったら、口をポカーンと開けてごらん。」
 顎の力を抜くことで、上半身の力が抜けやすくなります。完全脱力の心地よさを味わう秘訣です。

《このアイテムのよさやねらい》
 ○脱力した人から身を任せられると、相手の重さが伝わります。相手の重さを感じること、相手の動きに身を任せ
  ることは、ノンバーバルコミュニケーション(非言語コミュニケーション)につながります。

→こんな発展ができます。
 ○足でも挑戦
 Aがあお向けで寝て脱力し、BがAの足を持ってゆらゆらとゆっくり揺らす。

★プラスワン★ 運動にとって、力を抜くことは力を入れることと同じぐらい重要です。完全に力が抜くことができると、その心地よさから子どもたちは笑顔になっていきます。


感覚やタイミングを合わせる運動遊び

○ハンドミラーリング
 ①2人1組になり、動きをする人(A)とついていく人(B)を決め、向かい合って両手を合わせる。
 ②Bは「離れない」「反発しない」ことを条件に、両手を合わせたまま、Aの動きについていく。
 ③Aはさまざまな方向に手を動かし、Bはそれについていく。
 2~3分間で役割を交代する。


《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
 「(ついていく人は)自分で体を動かさないように。」
  動きをする人の動きに委ね、ついていくようにしましょう。自分からついていこうとするよりも体がうまくつい
  ていけるようになります。

→こんな発展ができます。
 ○目を閉じて/2人の人さし指の間に割り箸などを挟んで
 目を閉じたり、接点を小さくしたりすると、より繊細に相手の動きを感じるようになります。「動きをする人き
 っかけ」で動作を始めることができるようになります。


○背中を合わせてアップダウン
 ①2人1組になり、背中合わせになり、手をつないで立つ。
 ②その状態のまま、タイミングを合わせて座る。
 ③成功したら手をつながずに背中合わせで立ち、同じようにそのままタイミングを合わせて座る。 


《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
 「お互いの体重を感じて!」
 お互いに体重や重心の移動を感じながら、タイミングを合わせるところが魅力の運動遊びです。体重をかけ合う後 
 押しをしてあげましょう。

《このアイテムのよさやねらい》
 ○相手に体重をかけながらチャレンジするには信頼関係が必要です。相手の動きに合わせることも含めて、コミュ
  ニケーションの土台となる感覚を育てていくことができます。

→こんな発展ができます。
 ○首をくっつけて
 お互いに頭を右側にずらし、互いの首がくっつくような姿勢のまま座る。
 ○座ったり立ったり
 スムーズにできるようになると、力を入れることなく同じ姿勢のまま立ったり座ったりできるようになる。座った 
 姿勢から立つほうが比較的難しい。

○ウォーキングビンゴ
 ※体のパーツビンゴカードを用意する


 ①2人1組になり、2人でカードをめくる。
 ②カードに書かれた体のパーツをくっつけ合って次のカードまで歩く。
 ③カードをすべて制覇できたら終了。



《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
 「相手と呼吸を合わせてごらん。」
 呼吸を合わせると、体の動きも合わせやすくなります。

★プラスワン★ 相手に体重を預け、一人では立っていられないくらい、体重をかけるほうがスムーズに進むことができます。スムーズにいくと相手への信頼も高まっていきます。その一方、慣れてくると早くビンゴを達成しようと、動きが「雑に」なる場合があります。そうすると倒れてしまうことも考えられます。安全のためにも、「丁寧に行うこと」をしっかり意識させましょう。


相手を見て、緩急や駆け引きを楽しむ運動遊び

○タッチ&エスケープ
 ①2人1組になり、先に動く人(A)とついていく人(B)を決める。
 ②BがAの背中に手を当てて、待つ。
 ③音楽が鳴ったらスタート。AはBの手から瞬間的に逃れようとし、BはAの背中に手を当て続けようとする。


《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
 「一瞬で逃れよう!」「スピードに変化をつけてみよう!」
 背中に手を当てさせてからが勝負。一瞬の攻防を楽しませるようにしましょう。

《このアイテムのよさやねらい》
 ○逃れ続けることが目的ではなく、ついていく人との駆け引きを楽しむのがポイント。これは、相手の反対をとっ
  たり、フェイントをかけたりする動き、主観的にスピードを上げる動きなど、サッカーやバスケットボールな 
  ど役立つ動きになります。


→こんな発展ができます。
 ○3人で
 背中に手を当てる人を2人にする。

★プラスワン★ サッカーやバスケットボールが上手な人は、ずっとトップスピードで走っているわけではありません。周囲の状況に応じてスピードを変化させてプレーしています。このようなスピードの緩急を「グレーディング(強さの調整)」といいます。遊びの中でこの感覚を身に付けられるとよいですね。



Profile ●東京・山梨動きづくり研究会
山梨大学学長中村和彦教授を中心に、東京都と山梨県内の小学校教員が中心となって組織する研究会。
小学校の教員だけでなく、企業、保育士、幼稚園教諭、運動指導関係者などさまざまな方が参加している。
https://ugokizukuri.amebaownd.com