第8回 運動遊びのアイテム⑦ ペアから集団へ広がるつながる運動遊び
東京・山梨動きづくり研究会編
(2024.07.09 公開)
じゃんけんから広がる運動遊び
○ドンじゃんけん
①2チームに分かれ、チームの間にS字の線を描く(*)。
チームのスタート地点には、タッチ用のコーンと次の人のスタート用のフープを置く。
*屋内:長縄・平均台3~4台などを用いる。グラウンド:白線を引く など
②S字の線に沿って歩き(走り)、相手チームと出会ったところで「体じゃんけん」をする。
③負けた人は自チームの最後尾に並び、次の人が同様に線に沿って進む。
勝った人は相手チーム側に向かってさらに進み、また相手と出会ったらじゃんけん。
④勝ち進んで、相手チームのコーンに触ることができたら得点。
⑤得点が入ったら、両チーム次の人がスタートする。
時間内に得点の多いほうが勝ち。
○ドンじゃんけん☆バトル
基本は、ドンじゃんけんと同じ。
じゃんけんで勝ったら、負けた人を自チームに連れていく。
相手全員を自チームに連れてくるか、制限時間を終えて人数の多いほうが勝ち。
《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
「見ている人はどうしたらいい?」
応援だけでなく、指示や助言をできるように促してみましょう。
「全員仲間にしちゃおう!」「こっちの仲間が増えてきたよ!」「全員連れていかれちゃう!」
指示は多く必要なく、実況のようなかけ声で、主体的な遊びに拍車をかけることができます。
→こんな発展ができます。
○2方向ドンじゃんけん
2チームの間を2本の線で結び、同様のルールで行う。
片方ばかり見ていると相手が近くまで来てしまっていることもあり、仲間の声による連係プレーが必要になってきます。
○ほかの遊び(伝承遊びなど)との組み合わせ
「Sケン」や「花いちもんめ」のような「知っている遊び」と組み合わせる。
※花いちもんめとの組み合わせは、実際に子どもたちから出てきた提案です。自分たちが知っている運動遊びと組
み合わせることができると、遊びはさらに楽しくなります。
○陣取りじゃんけん
①2人1組になってスタートラインに並ぶ。
②「体じゃんけん」をして、勝ちは3歩、あいこは2歩、負けは1歩、ゴールラインに向かって進む。
③先にゴールラインを越えたら勝ち。
《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
「大またでいくと早くゴールに着くね!」
大またにすることで、子どもたちの動きが大きくダイナミックになります。
→こんな発展ができます。
○向かい合ったり、背中合わせになったりして
ゴールラインに向かった体が横になり、歩き方も変わります。背中合わせでは、じゃんけんをするために姿勢の
工夫が生まれます。
○歩き方を変えて
ケンケン、両足跳び、サイドステップなどを取り入れることで、苦手な運動と思っていても楽しく取り組むこと
ができます。
○じゃんけんすごろく
①コーンでいくつか(4つ程度)の場所(すごろくのマス目にあたる地点)をつくる。
②近くにいる人と「体じゃんけん」をして、勝ったら次のコーンにスキップで進む。負けたら次の相手を見つけ、
どんどん「体じゃんけん」をしていく。
《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
「相手を素早く見つけてどんどんじゃんけんをしよう!」と促し、さっと見つけて動いた子には、「誰とでもチャ
ンピオン!」と称賛することで、気軽に声をかけられる人間関係づくりにもつなげることができます。
★プラスワン★ 授業の前半で取り入れる場合には、移動の動きが主運動につながるようにするとよいでしょう。走ることが大事なら「くねくね」「ぐるっと」などのように工夫することで、遊びの中で目的となる運動を経験させることができます。(ほかの工夫例:「スキップ」「ケンパー」「大また」など)。体が「あっ! この動きを知っている!」と思うような場面が出てくるように、いろいろな動きを幅広く経験することが大切です。
みんなで協力して動く運動遊び
○人間知恵の輪
①全員で手をつないで大きな円になる。
②手をつないだまま、適当にぐちゃぐちゃに入り乱れて動く(つないだ手の上をまたいだり、下をくぐったり)。
プレイリーダーのかけ声で動くのをやめる。
③プレイリーダーの指示で、協力しながら元に戻る。
「じゃあ、1分間で元に戻ってみるよ。みんなで協力してね!」。
《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
「どんどん声をかけ合おう!」
元に戻すためには協力が大切。積極的なコミュニケーションを促していきましょう。
→こんな発展ができます。
○目を閉じて
リーダーを決め、リーダー以外は目を閉じ、リーダーのかけ声を頼りにゆっくり動いて元の形に戻ることを目指
す。
○脱出ゲーム
①3チーム(A、B、C)をつくり、2チーム(A、B)が合体して大きな円をつくり、もう1チーム(C)の人
はその円の中に入る。
②プレイリーダーの合図で、Cの人は輪の中(脱出ゲート:手と手の間)から脱出しようとし、A、Bの人は、つな
いだ手を縮めたり、お尻をくっつけたりしながら、抜け出しを防ごうとする。
※足で防ぐのは、危険なので禁止とする。
③時間内に何人が脱出できたかで勝敗を決める。
《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
「いつ脱出ゲートが広くなる?」
誰かが脱出をしようとするときに、円の人たちは阻止しようとするので、その場所とは違うところが広くなりま
す。協力して誰かを脱出させるなどの作戦や一体感が生まれてきます。
→こんな発展や変化ができます。
○脱出するチームの動き方を変える(難易度が上がる)
自由な移動ではなく、「クマ歩き」や「クモ歩き」のように姿勢を変える。
○円の人は外を向いて手をつなぐようにする(難易度が下がる)
脱出する人の動きが見えにくくなるので、脱出しやすくなる。
※これらの組み合わせで、その場にいる子どもの年齢や遊びの経験などに合わせることができ、より遊びを楽しめ
るようになる。
○人間サーフィン
①5~6人で、隣り合わせでうつ伏せになる。(10cmほど隣の人との間隔を開ける。)
②その上に垂直方向に1人がうつぶせで寝転がる。
③下の5~6人がいっせいに同じ方向に転がり(波をつくり)、上にいる人を移動させる。
《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
「上の人は何もしないで身を任せるんだよ。」
他者に身を任せるのは、なかなかできない体験です。
《このアイテムのよさやねらい》
下で波をつくる子にもねらいがあります。隣の人の動きを見ながら動かないとうまく波をつくることができませ
ん。他者とシンクロし、動きを調整する能力やコミュニケーション能力の向上が、そのねらいです。
★プラスワン★ 体がかなり密着するため、恥ずかしがったり嫌がったりする場合があります。上に乗る子には、大きめの段ボールを持たせ、サーフボードに見立てて体の下に敷いて載ってもらうとよいでしょう。
子どもが小さいうちであれば、子どもが保護者の背中に乗って立ち、ゆっくりと保護者が動いても落ちないように立つといった、バランスの運動遊びをしてみるのもよいですね。
波に乗るためにも必要? バランスをとる運動遊び
○バランス崩し
①2人1組になり、しゃがんで向き合う。
②相手の手のひらだけを押したり引いたりする。
③バランスが崩れて足が動いたほうの負け。
→こんな発展ができます。
○倒れても転がって戻ってこられたら復活
バランスが崩れても、後転のように背中で転がって、前転のようにしゃがんだ姿勢に戻ってこられたらOKとす
る。どのように転がるとよいか考えながら動くようになり、遊びながら前転・後転などの動きのコツをつかむこ
とができます。
★プラスワン★ 人間の体には、頸反射というものがあります。顎を引くと背中が丸まり、顎を上げると背中が伸びます。後ろに転がるときは顎を引くようにすると安全にできます。
○つんつんゲーム
①2人1組になり、一人(A)が両手両膝をつき、片手と片足(手と反対の足)を地面と水平に伸ばす。
②もう一人(B)が、Aの地面についている手の肩口あたりをつんつんと押す。
③Aは倒れないようにバランスをとる。
《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
「体の中にキュッと力を入れてみよう!」
いわゆる体幹の運動です。瞬間的に力を入れる感覚を味わわせたいですね。
《このアイテムのよさやねらい》
雑巾を固く絞る、きつく締まっている蛇口をひねる、重い石をひっくり返すなど、生活の中から瞬間的に体に力を
入れる場面がなくなってきています。スポーツなどでは、そのような場面が頻繁に出てきます。体の中にキュッと
力を入れる体験を、この運動遊びの中で取り入れていくことができます。
→こんな発展ができます。
○両手・両膝つけて+両手押し
こらえるほうは両手・両膝をつけて、押すほうは両手で。どちらもさらに大きな力が入るようになります。
★プラスワン★ 1年生ぐらいのお子さんとそのお父さんがつんつんゲームを体験した際、お父さんがわが子の筋肉がキュッと締まる感じに感激していました。お子さんも同様に実感したようです。ペアでそのような感じを確かめ合ってみるのもいいですね。
Profile ●東京・山梨動きづくり研究会
山梨大学学長中村和彦教授を中心に、東京都と山梨県内の小学校教員が中心となって組織する研究会。
小学校の教員だけでなく、企業、保育士、幼稚園教諭、運動指導関係者などさまざまな方が参加している。
https://ugokizukuri.amebaownd.com