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子どもを運動好きにするために大人が大切にしたいこと

第10回 運動遊びのアイテム⑨ 用具を使った運動遊び その2

東京・山梨動きづくり研究会編

(2024.07.23 公開)

身近なものを使った運動遊び

○ペットボトル・ボウリング
 ペットボトル数本とボールを用意する。
 ①ペットボトルを数本並べる。
 ②適当な距離からボールを転がして、たくさんペットボトルを倒したほうの勝ち。
 (距離は場所の広さや発達段階などに応じて)

《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
 「どんな投げ方がたくさん倒せるかな?」
 ボウリングのような投げ方のほか、両手で投げたり、少し横から投げたり、試行錯誤して自分で最も多く倒せる投 
 げ方を見つけられるようにしましょう。

→こんな発展ができます。
 ○ペットボトルを変える
  500mL、1.5L、2Lなどさまざまな種類を用意する。いろいろなサイズを混ぜてみても面白い。
 ○ペットボトルの中に水を入れる。
  いろいろな量で、あるいはそれを組み合わせて試してみるとよい。(ペットボトルの大きさの3分の1を超える 
  と、かなり倒れにくくなってしまう。)

《このアイテムのよさやねらい》
 水の入ったペットボトルを倒すときには、ボールの勢いが必要になります。一方で確実に当てるためにはコント
 ロールが必要です。勢いとコントロールを両立させるためには、自分で試行錯誤しながら力を調整することが求め 
 られます。


○レーダーをくぐり抜けろ!(「ミッション・インポッシブル」風 運動遊び)
 平ゴムを数本用意する(鈴をつけてもよい)。
 ①ゴムをレーダーに見立てて、数本張る。
 ②ゴムに触れないように、くぐり抜けながら反対側のゴールまで行く。
 ③ゴムに触れ、鈴が鳴ったらもう一回チャレンジ。

《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
 「絶対、さわらないようにね!」
 さわらないという条件を共有することで、体の細部にまで気を付けるようになります。マット運動などで、手足の 
 先を伸ばすなどの感覚につながっていきます。

→こんな発展ができます。
 ○コースの形を変える
  ゴムの張り巡らし方を変えてみる。または、1~2か所必ず通るところを決める。プレイリーダーが「ここを通
  っていけるかな?」と指示することで、自分の体をどのように動かして通っていたのかをさらに意識するように
  なっていきます。

★プラスワン★ 毎回ゴムを結んでいると面倒なうえ、子どもたち自身でコースを作るのも大変になります。ゴムの端に目玉クリップをつけておくと、クリップを留めるだけで簡単に違うコースを作ることができます。


○バランス棒
 さまざまな長さの棒を用意する。
 ①棒を手のひらに乗せる。
 ②一定時間棒が倒れないようにバランスをとる。

《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
 「手のひらのどこに棒を置くといいかな?」「どこを見ると棒は倒れないかな?」
 何も考えずに棒のバランスを保とうとしても難しいです。手のひらでの位置(中心部や指先など)と視線(棒の先
 端など)に意識を持っていくことで、徐々にバランスがとれるようになります。

《このアイテムのよさやねらい》
 テニスや卓球、野球など、ラケット・バットなどの用具を操作して行うスポーツは数多くあります。用具を介して
 思い通りにボールを扱うには、用具が体の一部となるような感覚があることが有効です。

→こんな発展ができます。
 ○反対の手や手以外の部分で。さまざまな種類の棒(ほうき、傘、バット、割り箸など)で。
  反対の手で行う(両側性)ほか、プレイリーダーが「手以外にもできるかな?」と促すことで、額や肩、足な
  ど、もっと難しいことにチャレンジする子も出てきます。共有して、みんなでやってみるとよいでしょう。どこ
  がやりやすくて、どこがやりにくいか、自分の体の気づきにもなります。


身近なものを使った運動遊び(軽さをコントロール)

○うちわで勝負
 うちわ数本、紙数枚を用意する。
 ①表と裏の2チームに分かれる。
 ②数枚の紙を半分は表、半分は裏にして置く(紙は表裏の違いがわかるようにする)。
 ③紙に触れず、うちわであおいで相手の紙をひっくり返して自分のチームの向きにする。
 ④制限時間(1分程度)で、自分のチームにたくさんひっくり返したほうの勝ち。

《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
 「どこからあおぐとひっくり返るかな?」
 力任せにあおいでもなかなかひっくり返りません。「どこから」という視点を示すことで、うちわの使い方や使う
 方向を意識するようになります。

→こんな発展ができます。
 ○紙の大きさや種類を変える。
  紙を大きくしたり、小さくしたり、形を変えたりしてみる。また、厚い紙や薄い紙などにしてみることでひっく
  り返すためのあおぎ方が変わります。
 ○紙をあおいで動かしゴールに入れる
  2チームに分かれてゴールを決め、紙をあおいでサッカーのようにして対戦する。紙をボール状にするなど工夫
  するとよい。

《このアイテムのよさやねらい》
 紙をひっくり返すには毎回同じでうまくいくとも限らないし、紙が軽ければ1回転してしまうかもしれない。相手
 がいたり、道具を使ったりするスポーツでは、毎回同じ動きをしているように見えても実は少しずつ調整していま   
 す。そんな調整力を高めていくことができます。

★プラスワン★ 暑い季節になるといろいろなところでうちわが配られます。集めてみると大きさが違うものもあります。うちわの大きさを選べるようにしてみるのも面白いですね。下敷きなどでも代用できますが、あおぐのに一生懸命になりすぎると割れてしまうことも……。


○くるくる紙飛行機
 紙コプター(作り方によって折り紙、はさみ、クリップなど)、バケツ などを用意する。
 ①折り紙を用いて「紙コプター」を作成する。
 ②紙コプターを投げ落とし、バケツに何個入るかを競うなどして楽しむ。
 ※紙コプターの作り方はさまざまあります。
 
 参考となるウェブサイトなど
 ※リンク先は、弊社以外が運営するサイトに接続します。
 ・東京都北区豊島児童館「紙コプター」のページ
 ・富山科学文化センター「くるくるヘリコプター」のページ
 ・広島県教育委員会「紙コプター」のページ
 ・YouTube群馬大学公式チャンネル【群馬ちびっこ大学】最強の紙ヘリコプターを作ろう!

《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
 「うまく入れるコツは?」
 たくさん入れられた子どもに、コツや工夫したことをみんなに伝えてもらいましょう。聞かれた子どもは有用感が
 高まります。
 また、みんなで楽しむときのポイントは「一体感」。「せえの」のかけ声で、みんなで同時に投げてみましょう。

→こんな発展や変化ができます。
 ○ペアなどでチャレンジ
 ペアで向き合って立ち、1人が紙コプターを肩の高さから落とし、もう一人が素早くキャッチする。同様のことを
 2人同時に落とし、お互いの紙コプターをキャッチする。1分間で何回キャッチできるかなど、互いに協力して成
 功体験を重ねることで仲間意識が高まります。


○かさ袋シュート(かさ袋ロケット)
 かさ袋、布テープ、得点ラインを用意する。
 ①かさ袋ロケットをつくる。かさ袋を膨らまし、空気がパンパンに入ったら口をねじり、布テープ
  で2回ほど閉じる。貼ったテープはおもり代わりになる。
 ※かさ袋ロケットの作り方参考
 ※リンク先は、弊社以外が運営するサイトに接続します。
 ・YouTubeあそび庁 かさ袋ロケット

 ②数メートルおきに1点、2点、3点の得点ラインを設置し、その方向に向かってかさ袋ロケットを投げる。
 ③1分間投げて、何点取れるかを競う。

《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
 「すごいね! 見本を見せて!」
 3点まで投げられた子どもや、1点を何回も投げられた子どもに、見本で投げてもらったりコツを聞いたりする
 と、いろいろな投げ方や工夫があることを知ることができます。

→こんな発展や変化ができます。
 ○的当て
 かさ袋ロケットの先端に布テープの輪(粘着部分を外側にして輪をつくる)をつけると、壁などにくっつけられる
 ようになります。これを用いて、壁やボードなどに的を作り、点数などを競ってみましょう。

★プラスワン★ 投げ方のコツは、わかりやすい表現方法で伝えます。「肘をシュッ!」のように、ポイントとなる体の部位とオノマトペを組み合わせると、動きを共有しやすくなります。


○ドキドキ風船バレー
 風船、スーパーボールを用意する。
 ①風船を膨らまし、1人で落とさないように弾く。
 ②2人で風船を落とさずにラリーをする。
 ③風船にスーパーボールを入れて膨らまし、2人で落とさないようにラリーをする。

《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
 「スーパーリベロ!」
 バレーボールのバレーとは「ノーバウンドで打ち返すこと」の意味。この遊びで風船がすぐに落下してしまうとつ
 まらない。手だけでなく足も使うなど、バレーボールのリベロのように落下を防ぐことができた子どもには、褒め
 褒めパワー全開で!

→こんな発展や変化ができます。
 ○スーパーボールを2個入れる
  風船の動きがさらに変則的になります。
 ○グループで円形になって
  移動する先(ゴール)を決め、グループで円形になり、みんなでラリーをしながらゴールまで移動する。

★プラスワン★ 遊びに慣れてきたときは、用具にちょこっと工夫を加えると、遊びそのものの楽しさがぐっと増します。


キラキラシリーズ アルミホイルを使った用具の運動遊び

アルミホイル(50cmほど)と新聞紙(1枚)で作れる楽しい用具
1.キラキラボール:新聞紙1枚をくしゃくしゃに丸め、その上からアルミホイルで包み込んでボール状にする。
2.キラキラビーム:新聞紙1枚を横にしてくるくると細長く丸め、先端にアルミホイルをかぶせてとがらせる。
3.キラキラUFO:新聞紙1枚を縦にしてくるくると細長く丸め、円形になるように曲げていき、一方の先端をもう
  一方の先端(筒状になっているところ)に差し込む。そのつなぎ目にアルミホイルの半分を巻き付け、円の反対
  部分にも同様にアルミホイルを巻き付ける。円形に整えたら床に置き、足で踏んで平らにしたら完成。つなぎ目
  は取れないように「ぎゅっとね!」と声をかけながら作る。
4.キラキラハンマー:【要かさ袋】キラキラボールを作り、かさ袋に入れて膨らませて口を縛る。
 
○キラキラボール
 こんな遊び方
 ①キラキラボールでキャッチボール。
 ②かさを開いて逆さに立てた「サカサ・ターゲット」にキラキラボールを投げ入れる。
 ③「サカサ・ゴルフ」:サカサ・ターゲットを番号付きで複数設置し、ゴルフコースのように順に狙っていく。

《このアイテムのよさやねらい》
  上手に投げることよりも、「投げること」そのものを楽しみましょう。その意味でも、1人一つのボールを何度
 も投げられる「的当て(ターゲット)型」がおすすめです。「サカサ・ターゲット」「サカサ・ゴルフ」は、開い
 たかさがターゲットになるため的が大きく、誰でも狙いやすくなります。一方で強すぎると勢い余ってボールが出
 てしまうため、偶然性も出て楽しめる遊びになりやすいのが特徴です。


○キラキラビーム
 こんな遊び方
 ①キラキラビームを遠くに投げてみる。
 ②「剣の達人」2人1組になり、一人が投げたキラキラビームをもう一人が空中でチョップで叩き落す。
 ③「剣の達人2」:②と同様にし、チョップのかわりに空中でキャッチする。

《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
 「スーっと投げてみよう!」
 キラキラビームは力任せに投げても飛びません。紙飛行機を飛ばすように、手首を使って
 飛ばす感じを子どもたちにつかんでもらいましょう。

《このアイテムのよさやねらい》
  キラキラボール・キラキラビームは投げることそのものを楽しむことが大切です。ただ、その中で「よりよい動
 き」が出てきたら、ぜひそこを褒めて伸ばしていきましょう。投げることに慣れていない子は、肘が下がり肘から
 先だけで投げようとします。キラキラビームのようなものを上手に投げようとすると、自然に肘が上がったよいフ
 ォームになっていきます。その姿が見えたときは、ぜひ褒めてあげてください。

★プラスワン★ キラキラビームを作るときは新聞紙の向き(縦か横か)で全体の長さが変わってきます。1年生ぐらいまでは、短いほうが投げやすいようです。


○キラキラUFO
 こんな遊び方
 ①フリスビーのような横投げで投げてみる。(2人1組で離れて投げ合うなど)
 ②「手を入れられるかな?」飛んでくるキラキラUFOの輪の中に手を入れてキャッチしてみる。
 ③「足を入れられるかな?」②と同様に、手の代わりに足のつま先を入れてキャッチしてみる。

《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
 「少し肘を上げてごらん!」
 フリスビーのような横投げでなかなか飛距離が伸びない子には、このコツを伝えてみましょう。

《このアイテムのよさやねらい》
 ラケット・バットのような道具を使うスポーツでは、体を横にひねる動作が少なくありません。しかし小学校体育
 ではこの動きはとても少ないのです。円盤状の用具を投げる運動経験は、体をひねる動きにつながるものです。大
 いに遊びながら経験を積ませていってください。


○キラキラハンマー
 こんな遊び方
 ①縛った口の部分を持って投げる。(下から)
 ②「思いっきり高く!」「思いっきり遠くに!」などを目指して投げる。
 ③キラキラハンマーでキャッチボールをする。

《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
 「できないから面白い!」
 キラキラハンマーは、初めてではなかなか思うように操作できません。大人でもこの「できなさ」に出会い、面白
 くのめりこんでいきます。ぜひ「できないから面白い」世界を味わってください。
 この運動遊びはどこに行っても好評ですが、不思議なのはなぜかぐるぐる回して後方に飛ばしてしまう子どもたち
 が多いことです。子どもたちの何かをくすぐるのでしょうね。

《このアイテムのよさやねらい》
 キラキラハンマーは、面白くのめりこみながら、投げ方を会得していきます。「あ! こうすればうまくいくん
 だ!」。その気づきこそ遊びの醍醐味であり、生涯にわたる運動意欲につながる体験です。一方で、大人に叱られ
 ながら発達段階に沿わない技術指導を叩き込まれる子どもたちもいます。読者の皆さんは、どちらが大切なことだ
 と考えますか?

★プラスワン★ このキラキラシリーズは、福島県の親子遊びから生まれました。東日本大震災直後、福島の子どもたちが室内で遊べる安全で手軽な遊具はないかと考え、新聞紙とアルミホイルで作ってみたのが始まりです。



Profile ●東京・山梨動きづくり研究会
山梨大学学長中村和彦教授を中心に、東京都と山梨県内の小学校教員が中心となって組織する研究会。
小学校の教員だけでなく、企業、保育士、幼稚園教諭、運動指導関係者などさまざまな方が参加している。
https://ugokizukuri.amebaownd.com