第13回 運動遊びのアイテム⑫ ゲーム2
東京・山梨動きづくり研究会編
(2024.08.20 公開)
すり抜けたり、スペースを見つけたり生み出したりする運動遊び
○漁師と魚
川(スタートやゴール)を示すためのコーン、得点板を用意する。
①漁師役と魚役に分かれる。
②魚役は川の端から漁師につかまらずにゴール(目的地)にタッチできれば1点。
漁師は網を張って(決まった線の上だけを横に移動して)魚を捕まえる。
③漁師につかまった魚役は、スタート地点まで戻り再度ゴールを目指す。
④制限時間を設け、多く得点できたほうが勝ち。
《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
「どうやったら漁師につかまらないかな?」
漁師につかまらないためには、フェイントやスピードの緩急、仲間と協力して通り抜けられるスペースをつくるな
どの方法があります。これに子どもたちが気づくと、さまざまな動きや仲間を助ける動きなどが出てきて遊びが面
白くなります。
○すり抜け鬼(類似の運動遊び)
①スタートとゴール、鬼が動く線を引く。
②逃げる人は腰にひもをつけ、ひもを鬼に取られないようにゴールへ向かう。
③ひもを取られたら、新しいひもをつけて再スタートしてゴールへ向かう。
④制限時間を設け、多くすり抜けられたほうが勝ち。
→こんな発展ができます。
○線を増やす
漁師または鬼が動いてよい場所を増やす(線を2本にする)。これによって、逃げたと思ってもまた次の漁師や
鬼が待ち構えていることになり、より仲間との協力が必要になってきます。
すり抜け鬼では、線を十字型に引く(コート全体を「田」の字型にする)ことで、スピードだけで一気にすり抜
けることがとても難しくなります。これによって、さまざまな動きの工夫や仲間との協力が生まれます。
★プラスワン★ 簡単すぎたり難しすぎたりしてつまらなくなったり、ずるをされてしまったりすると、誰かのせいにするなどして遊び自体を否定してしまいがちです。そんなときは「どう工夫してみるといいかな?」と声をかけ、さまざまな楽しさのコートの形や大きさもみんなで見つけていきましょう。遊びをみんなでつくっていく経験を繰り返していくことで、遊びを通して豊かな人間が育っていきます。
○角取り鬼
小さな平たい輪(ケンステップ)など(人数分)を用意する。
①4人で1グループになり、その中の一人が鬼になる。
②2~3メートル間隔で平たい輪(ケンステップ)を四角形に配置する。
③鬼以外の3人で4つの角を守り、鬼は時間内にどこか1つの角を取れれば勝ち。
《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
「今のフェイントいいね!」
この運動遊びはいかに守り側の動きを崩すかが勝負です。そのために鬼はフェイントをかけて守りの裏をかく必要
があります。鬼のフェイントがうまくなってきたら、今度は守りがどう対策するかを考えさせていくと、より楽し
さが増します。
《このアイテムのよさやねらい》
この遊びは、バスケットボールやサッカーなどのドリブルで相手を抜く動きやマークを外す動きに似ています。そ
のため、遊び始めは運動経験によって勝敗に差が出てしまうことが考えられます。上手なフェイントの動きをみん
なと共有することで、技能の差が少しずつ埋まっていきます。
→こんな発展ができます。
○人数を増やす
平たい輪(ケンステップ)を6個、守り5人、鬼2人などにすることで、より複雑になります。
★プラスワン★ 運動が得意、スポーツをバリバリやっていた、そのような先生や大人たちは、子どものぎこちない動きを見るとすぐに最適な答えが思い浮かび、アドバイスをしてしまいがちです。しかし、答えを与えられてばかりの子どもは、自分で考えて運動しようとしなくなります。言いたいことをグッと胸の中に秘めて、子どもの可能性を信じてあげましょう。
ボールを使った、スポーツにつながる運動遊び
○ろくむし
ボール(当たってもいたくないようなもの)を用意する。
①2人が鬼になり、向かい合ってボールを投げ合う。
②他の人は、鬼どうしが5回投げ合う(ボールが5往復)する間に、鬼の間をすり抜けて両サイドの安全地帯を
行ったり来たりする。
③ボールに当たらずに反対の安全地帯に行けたら「1むし!」と言い、3往復できたら「6むし」となり、鬼の負
け。
④移動中にボールに当たったら、鬼と交代するかコート外に抜ける。
《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
「どんなタイミングで走ればいい?」
すぐにボールに当たってしまう子どもには、走り出すタイミングや走るスピード(緩急)などを一緒に考えましょ
う。
《このアイテムのよさやねらい》
鬼のボールに当たらないようにするためには、鬼がボールを投げた瞬間や、ほかの子に注目した瞬間を狙って走り
出すことがポイントとなります。タイミングをつかめば、6むしを達成することができます。このような、タイミ
ングを見計らって走り込む動きは、タグラグビーなどのゴール型ゲームにつながっていきます。
○スパイダードッジボール
通常のドッジボールコート、ボール2個を用意する。
①基本のルールはドッジボールと同じ。
②内野は両手または片手が地面に着いた状態で逃げる。
③外野はボールを「転がして」当てる。
※途中で、ボールを増やすこともできる。
《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
「自分の技を考えよう!」
ボールからよける際に、自分だけの技に挑戦してみましょう。よけることそのものが一つの遊びになっていきま
す。
さまざまなよけ方の例
・スピード:とにかく速く動いてよける。
・ブリッジ:両手・両足を着いて腰を高く上げて、ボールは体の下をくぐらせる。
・カエルジャンプ:両手・両足を着いた姿勢からジャンプしてよける。
・忍者:両手を着いたまま足でジャンプ、体をひねってよける。
《このアイテムのよさやねらい》
ドッジボールの「ドッジ」は「よける」という意味です。自分のよけ方をつくり、試していくことで、よけること
そのものに積極的になり、ドッジボールがより楽しくなっていきます。
★プラスワン★ 新しいよけ方、新しい遊び方などを考えたら、そのネーミングも子どもたちに任せましょう。遊びを子どもたちのものにしていく、子どもたちを遊びの主役にしていく一つの指導技術です。
○バレーサッカー
ソフトバレーボール、サッカーゴールを用意する。
①ゴールキーパーは1人で、他はプレイヤー(4~5人など。1対1の対決も可)。
②ゴールキーパーが手で自由にボールをはじいてスタート。
③プレイヤーはボールを手ではじいてゴールを決める。
※遊びなので、細かなルールを設けず、とにかく「手ではじいてゴールを決める」だけ。
《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
「高いパスだと入りやすいね!」
どうすると入るかを言うのではなく、ゴールにつながったよいプレーを称賛するようにしましょう。
《このアイテムのよさやねらい》
ボールを蹴ってはいけない場所でも気軽にできる運動遊びです。気軽にできるうえに、バレーボールとサッカーの
要素を含んでいます。手で操作するのとゴールが広いのとで、得点した喜びを味わいやすいのが特徴です。複数で
行う場合は、仲間の位置やゴールの位置などの空間認知や、それに合わせて動く調整力も高めていくことができま
す。
→こんな発展ができます。
○チーム戦にする
4人対4人でゴールは1つ。点が入ったら攻撃と守備を交代するなど。ボールに触ってよい回数や、バウンドし
てよい回数などは子どもたちで話し合って決める。
★プラスワン★ このバレーサッカーは高学年の子どもたちに人気。その秘密は、「次はこうして(こういうルールで)遊ぼう」と、やるたびに自分たちで遊びを進化させられるところにあります。
Profile ●東京・山梨動きづくり研究会
山梨大学学長中村和彦教授を中心に、東京都と山梨県内の小学校教員が中心となって組織する研究会。
小学校の教員だけでなく、企業、保育士、幼稚園教諭、運動指導関係者などさまざまな方が参加している。
https://ugokizukuri.amebaownd.com