第14回 運動遊びのアイテム⑬ (最終回)
東京・山梨動きづくり研究会編
(2024.08.27 公開)
家庭でもできる運動遊び(親子ならではのスキンシップを含む遊びなど)
○電気ビリビリ
①親子で(大人と子どもなどのペアで)向き合い、親(大人)が両手で輪をつくる。
②子どもは、その輪に触れないように頭や足からその輪を抜けようとする。
③輪に触れずに抜けきったら成功。
《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
「触ったら大変! 電気ビリビリだよ!」
空想の設定を強調することで、子どもたちに「物語の世界」で遊んでもらいましょう。このストーリー性=ごっこ
遊びは、子どもたちが大好きな世界です。
→こんな発展ができます。
○目をつぶってやってみる
目をつぶることで、当然動きは難しくなります。そこを補うために親子(大人と子どもなどのペア)で「言葉か
け」を多用することになります。この言葉かけは、遊びの動きの質(両手の輪に触らない)を担保することにつ
ながり、また悪ふざけ(動きの質の低下)を防ぐことにもつながります。
★プラスワン★ プレイリーダーが手本を示すときは、「失敗」を見せることも有効です。電気ビリビリに失敗して感電したふりをする。「いやぁー、難しい!……みんなはできるかな?」などと示すと、遊びの本気度が1段階上がります。
○きゅうりの塩もみ
①親子(大人と子どもなどのペア)で、一人が力を抜いてうつ伏せに寝転ぶ。
②もう一人は、寝転がっている人(きゅうり)を
・よく洗って(ゴシゴシ洗う動き)、
・塩を振ってもみ込む動きをして、
・切って(優しくチョップ)、
・食べて(指先でつまむ)、
・お皿を拭いて(手のひらでさする)、
・最後に「ごちそうさまでした!」
③役割を交代して行う。
《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
「ごちそうさまでした!」
楽しい動きが日常生活にもつながるように、大きな声でしっかり言うようにしましょう。
★プラスワン★ 親子などでの運動遊びの場合、「面白いこと」は、まず子どもから体験させましょう。実際に体験したことは理解しやすいものです。このスキンシップも先に体験することで、食べる順番や手の動かし方、(くすぐったさも含めた)心地よさの理解が深まります。そして、「さあ、今度は自分が食べる番!」と意欲も高まるのです。
小学校4年生のお子さんを持つ保護者の方から「毎週末、お布団の上でやっています。」とお話しいただいたことがあります。スキンシップが難しくなってくる年齢でも、遊びとしてなら習慣化しやすいですね。
○宇宙船
①親(大人)はあお向けに寝て、両腕はまっすぐ上に突き出す。(両膝は曲げる。)
②子どもは、親のお腹の上に座り、親の両腕を操作レバーのように持つ。
③親は「宇宙嵐だ!」の声とともに体全体を揺らし、子どもは落とされないようにバランスをとる。
④親の「隕石だ!」の声で、子どもはレバー(親の両腕)を前後に動かしてビームを発射し、隕石を破壊する。
《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
「ようこそ2100年宇宙の旅へ! 途中何があっても、絶対、宇宙船から落ちないように!」
子どもと一緒に、空想の世界へ旅立ち、運動遊びを楽しみましょう。
→こんな発展ができます。
○親子で空想の世界を広げていく
話し合いながら、空想の世界を広げていきましょう。
・もっと宇宙っぽく
例:親「もっと宇宙っぽくしてみよう」
子「部屋を暗くしてみない?」
親「いいね!」
・無重力の世界で
例:ゆっくり大きく歩く。手は平泳ぎのような動きで、足を大きく上げて。
このほかにも、宇宙空間っぽいBGMをかけるなど、家の中でできることを親子で一緒に考えるのも楽しいもので
す。「次の冒険は?」オリジナルの新しい冒険にワクワクしてみてください。
★プラスワン★ ある親子は、無重力歩行の浮遊感を出すために、親が子どもの両手を握り、一歩踏み出すたびに大きくジャンプをさせていました。子どもも両腕に力を入れ、親の動きにシンクロさせて、大きく高くジャンプ。実に楽しそうでした。
まだまだあるじゃんけんシリーズ 再び!
○後出しじゃんけん
①プレイリーダー 対 みんなでじゃんけん
②プレイリーダーがじゃんけんのかけ声をしながら【グー/チョキ/パー】のいずれかを出す。その後に続いて、
プレイリーダーが出した手と同じものを出す。
③慣れてきたら、プレイリーダーに勝つものや負けるものを出す。(負けるものを出すのがいちばん難しい)
《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
「すばやく、パッと出してね!」
この後出しじゃんけんは、動作にすぐ反応できるかどうかが面白い遊びです。楽しみながら、テンポやスピード感
をアップしていきましょう。
《このアイテムのよさやねらい》
集団遊びのスタートに最適です。集団遊びでは、全員が心を開いて遊び始めるわけではありません。まずは一人一
人の姿が目立ちにくく、なじみのあるじゃんけんからスタートすることで「心の壁」を下げていくことができま
す。「思ったように手が動かない=できない」ことを楽しむ雰囲気づくりが大切です。
→こんな発展ができます。
○反対の手(いつも使っていない手)で行う。
右も左も同じにできるようにする。(両側性)
○反応する声を変えてみる。
じゃんけん、「ポン!」と言ったら、「ポン」と言いながら出す。
じゃんけん、「ポイ!」と言ったら、「ポイ」と言いながら出す。 など
○じゃんけんの替わりに「体であっち向いてホイ」
プレイリーダーが両足で跳ねながら「あっち向いて、あっち向いて、あっち向いて、ホイ!」と言って体を動か
す(左右を向く、しゃがむ、ジャンプする など)。子どもはそのタイミングに合わせて、プレイリーダーと同
じ/違うように体を動かす。「あっち向いて、……」のときの跳ね方もいろいろと工夫できる。
○ひっこぬきじゃんけん
①2人で向かい合って、お互いに片方の手を差し出す(握手の直前のような感じ)。
②空いているほうの手でじゃんけんをする。
③勝ったら相手の手を握る。負けたら握られないように手を引っこ抜く。
④どちらかがつかめたら勝ち。勝敗がつくまで続ける。
《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
「あれ? 勝ったらどうするんだっけ? 負けたらどうするんだっけ?」
遊びの主役は子どもです。遊び方の説明は1回が原則。確認のための2回目は、できるだけ子どもに言ってもらう
ようにしましょう。
《このアイテムのよさやねらい》
集団遊びの中でもなかなかコミュニケーションが取れない、もしくは特定の友達としか遊べない子がいます。そん
なときに、ペアワークの延長として集団遊びを仕掛けていきましょう。そのポイントは、
・遊び方が簡潔で明確なこと
・誰でも勝てるチャンスがあること(勝敗の偶然性)
・勝負のチャンスが複数回あること
などです。
→こんな発展ができます。
反対の手でもやってみる(両側性)、いろいろな子と遊んでみる(意図的にコミュニケーションを増やす)。
など
★プラスワン★ 足じゃんけんで勝負をしていた子どもたちがいました。両手を重ね合い、足じゃんけん(グー=足を閉じる、チョキ=足を前後に開く、パー=足を左右に開く)で遊ぶ姿は、とても楽しそうでした。
○「あいこ」じゃんけん
①2人で向かい合って座る(体育座り)。
②じゃんけんをして、「あいこ」になったら素早く立ち上がる。早く立ち上がったほうの勝ち。
《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
「どんなポーズから始めたら面白そう?」
慣れてきたら、最初のポーズを子どもたちに考えさせてみましょう。正座、うつ伏せなど、さまざまなポーズを考
えることができます。自分たちで決めることで、遊びが主体的になっていきます。
《このアイテムのよさやねらい》
「動きを工夫する」ことに慣れていない子どもも少なくありません。主体的に考え、実行する(変化させていく)
機会が「遊び」の中にも少なくなっているのでしょう。プレイリーダーは、子どもたちが自分で考えた動きをキャ
ッチし、大いに称賛していきましょう。
★プラスワン★ ある子どもたちが「手を使わずに立ち上がる」ことを条件に勝負していました。これがとても面白い! 普段使っていない体の動かし方を体験することにもなります。大人でも難しいですよ。
○じゃんけんフラッグ(「あいこ」じゃんけんからの発展)
①2人で向かい合って座る(体育座りや正座)。
②じゃんけんをして、「あいこ」になったら、走って旗を取りに行く。
③旗を先に取ったほうの勝ち。
《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
「どっちが速いかなー?」
速さを競い合う遊びは、どっちが勝つのかやってみないとわからない! そんなワクワク・ドキドキ感を保つこ
と。このかけ声で、速さを競い合う楽しさに誘いましょう。
《このアイテムのよさやねらい》
じゃんけんの「あいこ」がスタートなので、いつスタートが訪れるかわからない。このわからなさが、子どものワ
クワク・ドキドキ感を引き出します。そのためにも、じゃんけんは大きな声で、はっきりした動作で行うようにし
ましょう。
→こんな発展ができます。
○動きを自分たちで工夫する(オンリーじゃんけんフラッグ)
フラッグまでハイハイやスキップで移動する など。
プレイリーダーは、「○○で勝負するのも面白いね!」などと、子どもたちが考えた工夫を称賛しましょう。
★プラスワン★ 速さを競うので、初めのうちは「あいこ」になっていないのに走り出してしまう子どもの姿が見受けられます。遊ぶ機会を重ねていくことで、走り出したい気持ちをおさえて、「あいこ」になるまで気持ちをコントロールするようになります。こうした心の育ちも要チェックです。
○負けたほうが面白い! 「ごめんなさい」じゃんけん
①2人で向かい合ってじゃんけんをする。
②負けたほうは、「ごめんなさい」を連呼しながら相手の周りを回る。
※別の言葉でもよい。
③回るときは、「ギリギリ相手にぶつからないところ」を「相手を見ないで(前だけを見ながら)」を回る。
④1周したら、相手の目を見て「ごめんなさい」と言って終了。
《子どもを育てる!「魔法のかけ声」》
「絶対、ぶつからないようにね!」
「ぶつからない」という条件を共有することで、子どもたちは安心して遊びにのめり込むことができます。
《このアイテムのよさやねらい》
「相手にぶつからないギリギリのところを回る」ことは、自分と相手の距離感をコントロールした動きになりま
す。サッカーやバスケットボールなどでも、自分と相手との距離感を一瞬でつかむことは大切な技能の一つです。
その感覚をつかんでいけるようにしましょう。
→こんな発展ができます。
1周するときに、それまでと反対周りで回る(両側性)。
2人の距離を離す。負けた子どもが相手のところまで走っていってから回る。 など
★プラスワン★ 本来、「遊びの面白さは分析できないもの」と言われます。「面白いから遊ぶ」のです。この世界を大人(指導者)も一緒に味わうことで、子どもと柔らかい人間関係をつくることができます。
Profile ●東京・山梨動きづくり研究会
山梨大学学長中村和彦教授を中心に、東京都と山梨県内の小学校教員が中心となって組織する研究会。
小学校の教員だけでなく、企業、保育士、幼稚園教諭、運動指導関係者などさまざまな方が参加している。
https://ugokizukuri.amebaownd.com