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教育ジャーナル Vol.17-2
いじめ防止
学校からいじめをなくそう【前編】
── 子どもたちの活動、大人の備え
仙台市の取組を参考に
いじめ防止
学校からいじめをなくそう【前編】
── 子どもたちの活動、大人の備え
仙台市の取組を参考に
渡辺 研 教育ジャーナリスト
「生命や心身に被害が生じたり、犯罪に相当するいじめについては、直ちに警察に相談・通報を行い、適切に援助を求めなければならない」─永岡文部科学大臣の発言だ(2月7日の記者会見。同内容の通知が各学校設置者に発出)。
そうなる前に食い止めたい。
いじめは防げるのではないか
マスク、手洗い、黙食……子どもたちにもコロナ予防がすっかり身につき、学校にも少しずつ日常が戻ってきた。喜びの一方、こんな数値も戻ってきた。昨年10月に「令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」結果が公表された。調査期間は令和3年度間。そこに気になる数字(グラフ)がいくつかあった。
不登校児童生徒数は令和2年度から急増、中学校では1000人当たり50人に達した(実数は約16万3000人)。コロナ禍による休校や学級閉鎖も関係しているのだろう。
一方、いじめと暴力行為は2年度にいったん減少したが、3年度にはほぼ元年度と同じ数値に戻ってしまった。コロナ禍で徹底されていた“3密厳禁”がやや緩くなって、子どもたち同士の“接触”が戻ったからなのかもしれない(アクリル板を挟んだ関係よりも、子どもには自然だともいえるが)。
仮に背景がそうでも、この10 年(いじめ防止対策推進法施行以降)、小・中学校とも増加の一途だったいじめ(認知件数)が、一時的にではあっても減少した(暴力行為は中学校ではずっと減少傾向)。やりようによっては、いじめを減らしたり、防いだりできるのではないか。これを機会に、改めて努力の仕方を考えてみたい。
法律は学校に①いじめ防止のための基本方針の策定と見直し、②いじめ防止のための実効性のある組織の構築、③未然防止・早期発見・事案対処における適切な対応を行うことを義務づけている。
また、平成29年には国の基本方針の改定が行われ、改めて学校のいじめ対応の基本的な在り方が示された。中には「教職員が、いじめに係る情報を抱え込み、学校いじめ対策組織に報告を行わないことは、法第23条第1項に違反し得る」ことから、教職員間での情報共有を徹底することとも明記されている。“閉鎖的な学級王国(担任の抱え込み)”は法律違反…そういう時代になった。
考えていく上で、仙台市の取組を参考にさせていただいた(全20指定都市中、認知件数は3番目、1000人当たりでは2番目に多い)。昨年12月には「生徒指導提要」の改訂版も発表された(平成22年以来)。「第4章 いじめ」の内容も適宜、参照する。
仙台市が取り組む「いじめの防止・発見・対応」
まずは、あいさつ
仙台市役所のロビーの一画に、写真入りのA4サイズの“報告書”がずらっと並べて展示されていた(1月23日~31日)。タイトルは「仙台市児童生徒8万人のいじめ防止『きずな』アクション」。そして「『いじめをしない・させない・許さない』! 仙台市内の小中学校・中等教育学校の児童生徒全員が話し合い、取り組んだ活動を紹介します」と説明されている*(学校数全183校)。
*2月には各区中央市民センターに掲示された。
この説明で、これが何かはおよその見当はつくものと思う(きっとご想像のとおり)。
子どもたちが「どうすればいじめが起きない学校にできるか。自分たちがこう行動すれば実現できるだろう」と考え、議論し、決意し、実際に活動した、その報告だ。
せっかくの貴重な取組なのだからと思い、全校分を眺めてみた。
仙台市にかぎらず、児童生徒がこの課題を考えるとき、決まって登場する取組がある。「あいさつ(運動)」だ。興味をもって数えてみると、小学校21校、中学校が8校(見落としがあるかもしれないが)。子どもたちは「まずはあいさつ。それが、いじめのない良好な人間関係の始まり」と考えるのだろう(大人社会だって同様)。私事だが、住んでいるまちの町内掲示板に「明るい地域づくり運動」のポスターが貼られていて、運動のスローガンが「あいさつは 言われてうれしい 愛言葉」。作者は小学校6年生。
小学校の取組の中に「ナイさつデー」というものがあった。「ナイスなあいさつデー」の略だが、一瞬「あいさつをしない日?」と思ってしまった。間違いには気づいたのだが、それも妙な効果がありそうだと思った。
例えば、ある一日、児童生徒同士、教師や来客へのあいさつを“禁止”する。「おはようございます」も授業始めの「お願いします」も「あ、ごめん」も「いただきます」も「さよなら」もなし。こんな集団生活に子どもも教師も下校まで耐え切れなくなって、あいさつの大事さを再認識できる。お勧めはしないが、つい、そんなことも考えた。児童生徒自身が考え、行動する、あいさつ以外の行動を紹介する。
★小学校・小学生★
・一人一人の目標に安心して取り組める学校にしよう
・全校自己紹介カード(いじめをなくすには、相手をよく知り、つながりをつくる)
・「こどものまちプロジェクト」(高学年がまちの仕組みをつくり、低中学年が市民として活動する→社会生活に必要な資質・能力を身につける)
・勉強や遊びを教え合う活動
・差別やうわさを、しない させない ひろげない
・「いじめ防止の行動目標」①優しい言葉を使う、②人がいやがるようなことはしない、言わない、③仲良く楽しくすごす、④困っている人がいたら助け合う
・友達の「いいところ」を集めよう
・相手がうれしくなるような話し方や行動を心がけよう
・みんなでいじめについて考えよう(クラスごとにめあてや活動を考える日をつくった)
誰でもが継続して実行できる小さなこと、当たり前のことの積み重ねだ。
★中学校・中学生★
・自分や他人のよさを認め合おう
・無自覚ないじめについて考えてみよう(スローガン=「救われる ささいな君の 思いやり」)
・「いじめ防止のキーマンはこんな人」(“いやなことを言わない口”“困った人に差し伸べる手”などを持ったキーマンが描かれている)一人一人がキーマンに
・考動会議―考え行動する(全校を縦割りグループに分けて道徳)
「縦割り道徳」や「p4c」でいじめ防止に取り組む学校は、ほかにもあった。現在の道徳には「いじめについて考え、議論する」役割がもたされている。認知件数を全国の数値で見ると、中1約5万件→中2約3万件→中3約1万5000件と、成長につれて減っていく。なぜ3年生になるといじめなんかしなくなるのか、先輩が内省しながら縦割りや全校で話し合ってみるのも有効だろう。
当事者である児童生徒自身が、いじめはいけないことで、どうすればなくせるかを考え、行動する。法律が義務づけた「いじめの未然防止」の取組はそこから始まる。
子ども一人ひとりの問題として
仙台市教育委員会で、この課題を担当する教育相談課でお話をうかがった。仙台市では教育委員会のほかにも子供未来局いじめ対策推進室が置かれ、社会全体で子どもたちをいじめから守る取組を進めている。
教育相談課では鶴岡勝彦主幹、及川悦彰主任指導主事、佐々木匠指導主事に対応していただいた。未然防止、早期発見、適切な対応について、取組を取りあげていく。
【未然防止】
「いじめ防止『きずな』アクション」は、未然防止の中心となる取組だ。5月と11月をキャンペーン(いじめ防止「きずな」キャンペーン)月間として、児童生徒や保護者への啓発活動を実施。5月は道徳の授業や児童生徒の集会などでいじめ防止を取りあげる。
「子どもたちの問題行動が起きやすいのが5月と11月です。GW明けで新しいクラスになじんで緊張感が薄れてきた頃や、夏休み明けから行事が続き、それがひと段落して少し気が緩む11月頃です。そこで隙ができて何か起きやすくなる。そういうことを踏まえた設定です」(鶴岡さん)
全国どこの学校にも共通することだろう。タイミングを見計らえば、同じ取組でもより効果的になる。
「いじめ防止『きずな』アクション」は令和3年度からこの形になった。それ以前は各校の代表が集まる「サミット」形式で話し合っていたが、コロナ禍で“集まる”ことが困難になったことで、今の形に変更された。ただ、コロナだけが理由ではない。
「サミットでは、代表者が行動目標を決めて、それを各校に持ち帰って具体的な実践に移していました。しかし、いじめの防止については、児童生徒一人ひとりが自分の行動を振り返りながらしっかり考えて、学級や学校で取り組むことを決めることが重要だろうと考えました。話し合っている時間そのものがいじめ防止につながっていきます。自分たちが出したアイデアで活動が決まるので、子どもたちが主体的に活動するようになり、いじめ防止につながるという、先生方の声をいただいています」(佐々木さん)
この課題を児童生徒が「自分事」と考える。「自分は絶対にいじめはしない」と一人ひとりが決意して実行すれば、本当にいじめはゼロにできる。
「そういう気持ちをもてるような子どもを育てたいと思います。しかし、無自覚に嫌なことをしてしまうとか、悪気はなく言った言葉が相手には嫌だったとか、そういうこともあるので、どうしても認知件数はゼロにはなりませんが、子どもの『いじめをゼロにしたい』『気づいたら助けてあげたい』という気持ちは育てたいと思います」(佐々木さん)
中学生からも「無自覚ないじめを考える」という取組が出されていた。純粋な正義感を信じたい。
学校2学期制を採用している仙台市では、11月の決意を、年度をまたいで継続することになる。それはそれで意味がある。一方で、年度ごとの活動になるよう、5月に「きずな」アクションを実施するという考え方もありそうだ。何がよりよいのか、児童生徒サミットでも開いて一緒に考えてみたいテーマだ。
「いじめたことがあるか?」
理想的には「きずな」アクションだけで「いじめゼロ」を実現したいところだが、現実にはまだそこまではいかない。残念ながら起きてしまったいじめ(無自覚も含め)の早期発見が次のステップになる。
【早期発見】
全国調査では、発見のきっかけは小・中学校とも「アンケート調査など学校の取組」が最も多く、次いで「本人からの訴え」。中学校では「本人」に「本人の保護者からの訴え」を加えればアンケートなどを上回る。学級担任による発見は小・中とも約10%、学級担任以外の教師による発見は、中学校でも7%程度。本人以外の児童生徒による発見は小3%、中5%。本人が訴えなければ、なかなか発見が難しい状況を物語っている。
現状では、いじめを受けている(そう感じる)子どもたちがそれを訴える有効な手段が、アンケートだ。仙台市では、毎年11月に「仙台市いじめ実態把握調査」を実施している。それに加えて、学校ごとに年間数回、独自に実施して早期発見に努めている。
「市の調査では、封筒に入れたアンケート用紙を児童生徒に渡して、それを家に持ち帰って保護者と一緒に記入します。そして封をして、学校に提出しています。保護者と一緒に書くことの意義を大切にしてほしいので、このやり方で続けています」(鶴岡さん)
厳重に管理して実施。一人で悩んでいた子が、まずは保護者に打ち明けるきっかけになる。
調査票の質問項目は大きく分けて「いじめられたことがありますか?」「いじめたことがありますか?」「いじめを見たり聞いたりしたことがありますか?」「自由記述」。
2つ目の質問にはちょっと驚いたが、意外に正直に書いてくるのだそうだ。保護者と話をすることで無自覚ないじめに「あ、あれは嫌だったんだ」と気づくこともあるのだろう。3つ目は、じゃあどうしたらいいか、保護者からのアドバイスも受けられる。
学校独自のアンケートは、この調査の質問項目(いじめの態様や加害者の分類等)を参考にそれぞれ工夫しているが、「提要」にはこう書かれている。
〈アンケートを実施するに当たっては、いじめを受けている児童生徒が「見られたらどうしよう」といった心配をせずに記入できたり、具体的ないじめの態様ごとの項目を設けて体験の有無を尋ねるなどして精度を高めたりする工夫が必要です。なお、アンケート実施後には、速やかに内容の確認とダブルチェック(人を変えて、複数人で再確認する。)を行い、少しでもいじめに関係すると思われる内容が見いだされたときには、時を置かずに対応することが肝要です。〉
十分に承知されているものと思う。
最後に書かれているように、いじめの気配を見つけたら、聞き取りなどすぐに対応することは言うまでもない。
仙台市では、こうして各校が認知したすべての事案について学校と教育委員会が情報を共有し、必要な連携を図っている。
誰かが助けてくれる
早期発見の取組の一環として、毎年4月に「いじめ防止『学校・家庭・地域連携シート』」を各家庭・地域に配布している。「3つのキーワードで学校・家庭・地域が連携しましょう」というもので、キーワードは「見守る─いじめのサインを意識してみんなで見守りましょう」・「受け止める―気になる様子があったら話をじっくり聴きましょう」・「認める─それぞれの立場で子どもを認める場面をつくりましょう」。
内容は「子どもの小さなSOSを見逃さないための いじめのサイン『発見シート』」。
起床~登校前(家庭)→登校(地域)→朝の会(学校)→授業中(学)→休み時間(学)→給食時間(学)→清掃時間(学)→放課後(学)→放課後(児童館)・下校(地)→帰宅後~就寝(家)+休日・長期休業中(家、地)という日常に沿って、それぞれに具体的な「小さなSOSの視点」があげられている。
例えば、「体の具合が悪いと言い、学校を休みたがる(朝)」といった直接的なものもあれば、「遠回りしている(登校)」、「グループ決めのとき、なかなか所属が決まらない(授業中)」「教職員の目の届く範囲から離れようとしない(放課後)」「異学年の子とばかり遊んでいる(児童館)」「スマホの着信音などに過剰に反応する(帰宅後)」など、「えっ、こんなことも?」といった視点もある。*
*仙台市教育委員会のホームページで見ることができる。
「低学年の子どもたちは、言葉で伝えるのが難しく行動でサインを出すことがあるので、それを大人が細やかに読み取ってあげましょうということで、家庭・地域に投げかけています。先生方にも“丁寧に子どもを見てください”ではなく具体的な視点を示しています。そうすることで、アンケートなどによる意思表示に実際の場面が結びついて早期解決につなげられると思います」(及川さん)
「いじめで苦しむ子どもの姿を見たくない」という思いを大人たちは共有してほしい。そういう取組だ。
早期発見のもう一つ重要な取組が「24時間いじめ相談専用電話」だ。24時間、電話の向こうに人がいる(ほかにもメールによる受け付けや教育委員会以外の市の相談電話もある)。窓口の存在や電話番号はしおりの形にして全児童生徒に配布している。本当に深夜、保護者に知られないようにして電話してくるケースもあるのだそうだ。
「かなり重たい話もあり、内容はさまざまです。学校名を教えてもらえれば、こちらから学校に伝えて対応を依頼し、情報提供をするなどの動きもとります。子どもが『学校には伝えないで』と言った場合は伝えることはできませんが、その後の学校対応が適切に行われるような助言を行うようにしています」(佐々木さん)
もちろん、電話で解決できなければ、保護者とともに相談室を訪れるケースもある。
「相談担当の者がカウンセリングして、子どもの気持ちに寄り添った解決の方法を考えます。子どもも保護者も納得していただけるケースが多いです。聞いてもらえる、わかってもらえる、自分一人で抱える問題ではないとわかってほしい。そこを大事にしています」(及川さん)
子どもが声をあげてくれれば、それこそ、時をおかずに対応している。
鈍感より過敏なほうがいい
そう遠くない昔には“認知件数は少ないほどいい”と考える風潮もあった。それゆえの不幸も起きた。だから法律をつくり、積極的な認知を進め、一人で苦しむ子どもを一刻も早く見つけて、苦しみから救ってあげようという姿勢を学校・教育委員会がもつようになった。法律の制定はわずか10年前のことだ。
問題行動等調査によれば、学年別の認知件数が多いのが小2→小1→小3の順。中学年が多いのはわかるが、ついこの間までみんなで仲よく遊んでいた1年生がそんなに意地悪だとは思えない。仙台市でも学年別の分析はしていないそうだが、子どもが「先生、○○ちゃんが、おもちゃを貸してくれないんだよ」「○○ちゃんがぶつかってきたんだよ」など訴えてくれば、程度はどうあれ、それもいじめとカウントしたのだろうか。
「子どもから『嫌なことをされた』と訴えがあれば、“いじめ認知1件”になるので、学校は対応のスタートになります。法的にはそうなります」(佐々木さん)
鈍感より過敏なほうがいい。
【早期対応】
電話相談では、訴え(発見)と同時に対応も始まっていたが、「提要」はいじめへの対応の原則として4ステップをあげている。
①いじめられている児童生徒の理解と傷ついた心のケア=対応の第一歩として、何より被害者保護を優先し、二次的な問題の発生を未然に防ぐ。
その際の留意点として、次のことが書かれている。
「誰も助けてくれない」という無力感を取り払うこと/いじめに立ち向かう支援者として「必ず守る」という決意を伝えること/大人の思い込みで子供の心情を勝手に受け止めないこと/「辛さや願いを語る」ことができる安心感のある関係をつくること
②被害者のニーズの確認=対応の第二歩は、「力になりたいのだけれど、何かあれば言ってほしい」と被害者のニーズを確認。
③いじめ加害者と被害者の関係修復=対応の第三歩は、いじめの加害者への指導と加害者と被害者との関係修復を図る。加害者の保護者にも協力を要請し、加害者が罪悪感を抱き、被害者との関係修復に向けて自分ができることを考えるようになることを目指して働きかける。
④いじめの解消=対応の第四歩は、いじめの解消を目指す。その際、何をもって「解消」とするのかについての共通理解が求められる。
解消の2*条件を満たしているかどうかを、本人や保護者への面談などを通じて、継続的に確認する必要がある。また、対応に当たっては、教職員自身が「いじめに耐えることも必要」「いじめられる側にも原因がある」など、いじめを容認する認識に陥っていないか常に自己点検することが重要。そうでないと、被害者が自分の辛さを受け取ってもらえないと感じて孤立感を深め、二重三重に苦しむことにもなりかねない。
*①いじめに係る行為が止んでいること②被害者児童生徒が心身の苦痛を感じていないこと
仲間外れにされたり、誹謗中傷されたりすることは、教師(大人)だってつらいはずだ。
必ずチームで対応する
仙台市では、早期対応として、次の取組を行っている。
●いじめ対策担当教諭研修 市内全小中学校、中等教育学校、特別支援学校に設置した「いじめ対策担当教諭」を対象とした研修会を年4回実施。年度初めの初回は、いじめ対策担当教諭の役割や、いじめの初期対応についての研修を行った。
●いじめ対策支援員配置事業 いじめ事案を抱え支援が必要な小学校20校に、元警察官や元教員等の「いじめ対策支援員」を一定期間配置し、学校職員への助言や関係児童への声がけ指導等を行いながら、いじめの早期改善を図る。
●スクールロイヤー事業 学校が直面する諸課題への対応等について、学校からの相談に幅広く応じ、法を踏まえた適切な対応の在り方等の助言指導を行う/令和2年度に作成した「いじめ対策ハンドブック」の付属資料として動画を作成し、各校の研修会等で活用できるようにした(引き続き改定)。
●いじめ対策推進室連携 子供未来局いじめ対策推進室及び仙台市いじめ等相談支援室「S-KET」との連携を図る(情報共有シートの活用など)/児童館の館長などを対象に、いじめに関する研修会を実施。
「いじめ対策担当教諭研修」は職能研修にあたるが、一般的な年次研修でも、「いじめ防止対策に係る研修」が実施されている(初任~5年経験は毎年度)。「求められる教員の姿」が次のように示され、研修を通してその姿を実現していく。
○自校のいじめ防止基本方針を理解するとともに、いじめの未然防止のための取組を学級経営に取り入れる。
○日常的な観察や会話を通じ児童生徒の変化に気付き、気持ちに寄り添いながら情報を集めるとともに、いじめに結び付く事案を把握したら、管理職や先輩教員等に報告・連絡・相談を確実に行い、組織対応につなげる。
「一人で判断したり対応したりしようとはせずに、組織対応が大事だということは、研修で繰り返し伝えています。小学校では、自分がしっかり対応してあげたいという思いで一生懸命取り組まれる担任の先生もいらっしゃいます。けれども今は、インターネット上のトラブルなどさまざまないじめの形がありますので、一人で対応しようとしても限界があります。ベテランの先生も含めて、『組織対応が大切です』という助言はします。管理職の意識も変わってきて、校内を巡回して児童生徒の状況を把握している校長、教頭が多くなってきました」(佐々木さん)
小学校で導入が進んでいる教科担任制も、早期発見や子どもにとって相談できる相手が増えるというメリットがある。
せっかくの機会なので、もう一つ伺っておく。
いじめの発見や児童生徒の相談相手としてSC(スクールカウンセラー)等があまり機能していないように思える。全国調査の数値を見ると、発見では小・中ともゼロに近く、相談では児童1%程度、生徒1%未満。対応チームのメンバーとしては重要な存在であっても、もっと子どもたちに認知されるよう何らかの手立てが必要なのではないか。
「子どもたちが悩んだときの相談相手はたくさんいたほうがいいので、SCやSSW(スクールソーシャルワーカー)もそういう存在であってほしいと考えています。勤務日には校内巡視して子どもたちと接する機会を設けたり、お便りをつくって児童生徒や保護者に発信したりして周知を広げるようにしています」(佐々木さん)
子どもたちを大事に思う仙台市のいじめ防止・対応の努力を伺った。
今回は「重大事態」(件数、対応)にはあえてふれなかった。子どもたちの「自分はいじめをしない」という決意を信じ、早期発見・早期対応の段階で食い止めたい。
後編へ続く