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教育ジャーナル Vol.18-4

校長アンケート

教師という仕事「なりたい職業トップ3」を目指そう!➂
学校の役割・教師の喜び

校長アンケート

教師という仕事「なりたい職業トップ3」
を目指そう!➂

学校の役割・教師の喜び


教育ジャーナリスト
渡辺 研

校長アンケートの第3回目。
今回は特別支援教育と未来の学校のために今できることについてのアンケート結果をお届けする。


アンケートの質問

 コロナ対策――判断を任されたが
Q1  2022 年度の卒業式でのマスク着用はどう判断されましたか?

 授業改善(学習指導要領実施の状況)
Q2 ①先生方の授業は変わりましたか? 子どもたちに変容は見えますか?(特に「主体的に学びに向かう姿」や「学びに向かう力」)
② 授業改善が進まないのは、何が壁になっているのでしょう。
その要因にはどんなことが考えられますか? 
(①か②かのいずれかを回答)
Q3 保健体育について=運動が苦手な子どもたちが「体育嫌い」にならないように、体育の授業に工夫をしていることはありますか。
Q4 道徳について=「考え、議論する授業」は実現していますか。実施にあたり、難しい点はありますか。教科書以外の教材も活用していますか。

 特別支援教育
Q5 調査では10 年ぶりに「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒」の数値が更新されました(6.5% → 8.8%)。数値と比較して、学校の実際は?特別な教育的支援において、行政や外部機関などからのどんなサポートが必要ですか。

 学校の未来
Q6 中教審等で行われている議論や、依然として続くコロナ禍での子どもたちの様子、少子化など、校長先生として気にかかること、関心をもって見ていることはなんですか。
Q7 教員不足が深刻化しています。どうすれば少しでも改善できるでしょうか(予算や現行制度の壁などは度外視してください)。
Q8 実践者の視点で「学校とは何?」と見つめ直してみたいと思います。学校に託される役割が増え続けてきましたが、〝絶対に〟学校・教師が担うべき役割は何でしょう。2つ以上5つ以内で教えてください。

 教師という仕事の魅力
Q9 22年度、一番感激した出来事はどんなことでしたか。
Q10 23 年度、学校で何を実現したいですか。
退職される先生方へ。お疲れさまでした。長い教職生活で実感できた「教師という仕事の喜び」を教えてください。


Ⅲ 特別支援教育――8・8%という数字

Q5 学校に必要な外部のサポートは?

とにかく人、数が足りない

「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする(学習面または行動面で著しい困難を示す)子どもの割合は8.8%」。22年(1~2月)の調査(*)からその数値が報告された。学校それぞれの“実際”を伺うと、「それ以上」「同程度」「それ以下」の割合が5:8:1だった。「それ以下」の学校からも「配慮を要する児童につく指導補助員の不足をなんとかしてほしい」(小学校)という声がある。
*「通常学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」(令和4 年12 月13 日)

 国連の勧告がどうのという話ではなく、目の前の現実にどんなサポートが必要なのか。「同程度」の学校の場合も、一にも二にも……といったところだ。
◆個別に対応する職員の確保。(中学校)
「専門家の配置、派遣」(小学校)という声もあるが、とにかく人。
◆校内に一人、総合育成支援員はいるが、数が足りていない。学生ボランティアなどで支援側のスタッフを増やす努力をしている。スタッフを増やすか、学級の生徒数を減らすか、どちらかの対策が必要である。(中学校)
◆サポート体制を構築していくための人材の派遣。それ以前に、臨任や非常勤など、学校に割り当てられるべき人材も確保されていないという状況から改善してほしい。学校が支援体制につなげられない状況が、本当に深刻な課題である。(小学校)
 切実な声には、怒りや哀しみも込められているように感じる。現場の努力でなんとかなる限度をとっくに超えている。
◆環境整備(教材、教具、施設)、他校との交流学習の推進。(小中学校)
 本当は取り組みたいこともある。「それ以上」の学校からの要望は、なかなか手厳しい。それはそうだろう。
◆特別支援教育に対する、そもそもの教職員の知識と技能の不足を補うための研修制度の工夫に加え、全教職員が当事者意識をもてるよう特別支援教育免許を現職で取得することを必須にするような制度改革の工夫など。(小学校)
◆実際の児童からの表出や学習状況を適切に見立て、具体的な指導方法の工夫を導き出すという部分に対する専門的な助言は必須です。また、通常の学級に在籍していることの妥当性を議論することに対する行政支援も必須です。(小学校)
 専門知識に基づく繊細な対応が必要とされるケースも多々ある。使命感でなんとかなる課題ではない。
◆個別最適な学びをするためには、まず「人」がいなくては始まりません。机上の特別支援教育論では学校はもちません。(小学校)
 人がいないのはこの分野だけではない。せめて現実を直視した机上の議論が、学校への支援につながる。

Ⅳ 学校の未来――今できること

Q6 気にかかっている教育にまつわる動向は?

もっと評価されてもいい

 やはり気になるのは、「教員採用」(中学校)、「受験倍率の低下をどのように食い止めていくか」(小学校)。まずは、ここ。
◆教員採用について、これからの時代を生きる子どもたちとともに学ぶことのできる意欲のある人材をいかに確保するのか。特に今後の人材育成。(小学校)
 解消が遅れれば遅れるほど、“子どもたちの将来=国の近未来”に取り返しのつかない影響が出かねない。
◆教員の欠乏をどのように改善するのか。大げさでなく、日本の教育課程そのものの見直しも必要かもしれません。欧州にあるような午前・午後を分けたクラス編成など。詰め込み過ぎている割には、世界的に伸び悩んでいるのが現状です。(小学校)
◆中教審の議論は、理念としては理解できる。現場はその理念を前向きに捉えて学校運営をしていきたいという思いがあるにもかかわらず、教員不足、地域の支援体制等の困難があって、議論との乖離を感じる。教員という、人を育てる大切な仕事は、もっと評価されてもよいと思う。「人は人によって人となる」。これは子どもたちを育ててきた実感である。この国をつくる人材を育てる。それが教員の役割であることを、根本から捉え直していくことが、国の教育政策には必要だと感じる。(小学校)
◆採用試験の倍率が低すぎる。何をやるのでも、質の高い人材確保が必要である。(中学校)
 若い人たちにこの仕事を目指してもらうなら、きっと、一つは、日本型学校教育を必死で担う教師たちへの敬意を明確に表す(リスペクト)ことだ。メディアの責任も大きい。
 もちろん、勤務実態や給与面での改善も関係する。
◆教員離れを防ぐために給特法見直しは早急に進めてもらいたい。部活動地域移行は、そう簡単に進む状況ではない。(中学校)
◆「給特法の見直し」は。今後の議論がどのようになるかがとても気になる。「子どもたちのために」を合言葉にし、相当な自己犠牲をしながら、「心の満足」を基本として職務を遂行してきた時代は終わった。学習指導だけでなく、生活指導や福祉的な役割も担ってきた日本の学校教育の歴史を考えると、どのような形がふさわしいのか。満点の答えを出すのは難しいが、一定程度の納得を得られる形にしてほしい。
 また、中学校としては「部活動の地域移行」には大いに注目している。少子化による廃部など、学校単位では子どもたちの運動や文化活動の機会を保障できなくなっている現実を受け止め、各自治体には着実な地域移行の推進を期待したい。
(中学校)
 不合理の中で学校や教師は踏ん張ってきたが、何事にも限界がある。

令和の日本型学校教育のこの先

 それでも学校経営を滞りなく進めていかなければならない。
◆教育課程内の標準授業時数(各教科)をある程度範囲を決めて、各学校に任せてほしい。そうすると特色ある教育活動が行いやすくなる。★(小学校)
 今の授業時数は、学校が隔週5日制当時と同じ。大きな理念を掲げて70時間を削減した熱量はどこに行ってしまったのか。
◆小学校現場では、未来を生きる資質・能力の育成を図っていますが、国としてより確かなものにするためには、大学入試の方法が変わらないと高校や中学校教育が変わらないのではないかと危惧しています。(小学校)
 そもそもは、高大接続改革が……といっても、すでに手遅れ。中学校の授業改善が進み、高校が探究的な学習に力を入れ始めたことが、少し救いになる。
◆定年延長に伴い増加するであろう高齢教職員の働き方。(小学校)
◆役職定年制など、教員身分にかかわることは気になります。(小学校)
 この状況だ。健康で気力が衰えていないなら、学校教育を支えていただきたいものだ。
◆コミュニケーション能力の未発達。耐性(レジリエンス)の低下。(中学校)
 Z世代(1990年代後半~2010年代前半生まれ)の若い教師も含むのだろうか。
◆「令和の日本型学校教育」のこの先。成果は?(小中学校)
◆GIGAスクール構想の直近での行く末、令和の日本型学校教育の実践保障、教員不足の改善など、教育の質に直結することは、気になるというよりはなんとかしたいと感じます。(小学校)
◆ICT導入による学習指導要領、学校そのものの役割の変化。(中学校)
 もう、現状維持はありえない。

Q7 志望者を増やし、教員不足を解消する策は?

「なりたい職業」トップ3を目指す

 もともとは、この質問がQ8で次の質問がQ7だったのだが、前の質問の回答を見て、順番を入れ替えて紹介することにした。現場からも、改善策を提案したい。
 案は大きく分けて3通り。一つ目は「待遇面」の改善。
◆給与の大幅引き上げ。給料をもっと上げる。(小学校)
◆若者と話をする中で、給与を上げることが教員確保に直結していると感じている。また、休日の確保も重要である。(中学校)
 ただ上げるのではない。
◆給料を上げる。そして、この職業が「人づくり」という重要な仕事であり、専門性の高いものであることを、国の教育政策で根本に置き、教員がプライドをもって働けるようにしていく。(小学校)
 それだけのものをずっと学校や教師に委ねてきている。
 待遇面に含まれるのだが、二つ目は業務改善。現職を疲弊させ、退職が頭をよぎるような働く環境の改善は急務だ。
◆業務が多すぎて疲弊しているのが現場。そのイメージがずっと払拭されずにいるのが今の日本だと思う。(小学校)
◆家庭での教育のクローズアップ。働くことばかりが優先され、肝心の子育てが後回しになっている。「すべて学校がなんとかすべき」の風潮を改善しないと〝やりがい〟より〝バカらしさ〟を感じる若者が多くなる。(中学校)
「家庭や地域の教育力アップ」。学校週5日制導入には、そういう理念もあったはずだ。
◆部活動を学校から切り離すだけでも、働き方は変わる。(中学校)
◆小学校における専科教諭を増やしていく。(小学校)
◆予算増も含め、魅力ある教職員制度の充実。(中学校)
 できるところから改善したい。
 3つ目は「教師という仕事の魅力(を取り戻す)」。学校にもできることかもしれない。
◆教員の魅力を発信する機会が少ない。「子どもがなりたい職業のトップ3」を目指して尽力する。(小学校)
 子どもたちは日々、教師の仕事を見ている。これをアドバンテージにしたい。
◆教員志望者を少しでも増やすために、「子どもたちがあこがれる教職員」である意識の高い教職員や教職員集団など「ポジティブな情報」を発信したり、目の前の子どもたちとしっかり向き合ったりすること。(小学校)
 この先生には、教師がそういられる「新たな学校」の姿も提案していただいている。
◆養成段階で学生が現場に結びつきやすくするための工夫は必要です。実習もそうですが、もっと学校を学生の学びに活用していくと魅力は高まるのではないでしょうか。また、教員を引退した人たちを再活用できないでしょうか。潜在的な数は大きいと思います。非常勤講師が授業を担えることへのハードルを、特に小学校ではもっと下げてもいいのではないでしょうか。(小学校)
◆「ブラック職場」という教職に対するマイナスイメージを払拭するしかない。子どもたちにとって最も身近な存在である教師が「生き生きと輝いた存在」であるかどうかは、今後の教員志望者の増加に大きく影響する。そのために「学校教育が担うべき範囲」を明確化するとともに、それを家庭を含めた社会全体で共有し、教師が「担うべき範囲」に注力できる環境を整えることが重要であると考える。(中学校)
 実践の場の実感を尊重して、できることから順に実現してほしい。

Q8 絶対に学校や教師が担うべき役割とは

学力、人間関係づくり、……

 学校に任されることのすべては、もう学校だけでは担えない。では逆に、そのさまざまな役割の中で、絶対に学校が担うべきもの、教師にしかできないことは何か。学校の本質的な役割(担うべき範囲)を考えていただいた。大別すれば4つだが、具体はさまざまだ。
【学力】
◇学習指導要領に示された内容を子どもに身につけさせる教育は学校の存立意義。
◇学力向上。学びの充実。学習指導。学力の保障。基礎学力。
◇学ぶ楽しさを教える授業。学びに向かう力を育成できる授業。
◇答えのない課題に取り組む探究活動。
◇(よき未来のつくり手となるための)資質・能力の育成。
◇音楽や美術などへの文化的取組。
【人とのかかわり】
◇人と折り合いをつける力を身につける。集団の中での人間関係づくり。人や友達とのかかわりを豊かに育てていくこと。
◇コミュニケーション能力の育成。
◇協働・共生の教育。仲間と活動することの大切さを体験する教育活動。心をつなぎ、共に成長を図る場所。一人ではできないことを他者とかかわり伸ばす場所。チームワーク。
◇人間尊重の教育。
【生きる力を育む】
◇将来の自己実現に向けて義務教育9年間に十分な力を身につけさせること(学力はもちろん、困難を乗り越える力、礼儀や他者を認める心、支えてくれる人への感謝の気持ち、協働して物事に取り組む力などを養う)。
◇自己肯定感の育成。学びの場を通して一人ひとりが自分を肯定し、生きていく力を身につけること。
◇子どもたちに「未来を生き抜くために必要な力」を「多様な人とのかかわり」を通して、「失敗の中から学ぶ」こと。
◇社会で生き抜くための規範の教育。
◇子どもたちの社会性と自尊感情を高める。
◇心身の育成。
◇個性の伸長。
◇学力・体力以前に人づくり(他人の痛みがわかる、善悪の判断がつくなど、将来、誰もが生きていく上で不可欠なもの)。
◇特別支援教育。
◇生活指導。
【学びの場としての学校】
◇学校は夢や希望を語る場所(自己肯定感をもち、自分の未来に希望をもつ場所)。
◇地域に包含される公共機関としての機能。
◇最も身近な存在である「大人のロールモデル(教師)」から「人としての生き方」を学ばせる(生徒と教師は上下の関係ではない)。

 実践者の視点でもこんなに挙がった。教師は日々の教育活動を通して実現を目指している。教師が“本務に専念できる学校”のグランドデザインを、誰か描けないものか。

【④へ続く】


次回の予定

9月18日(月)
校長アンケート
教師という仕事「なりたい職業トップ3」を目指そう!➃

※次回のタイトルは変更になることがあります。ご了承ください。