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SDGs×道徳

日本の使い捨て傘をゼロに。

(2023年11月30日更新)

傘のシェアリングサービス 「アイカサ」

日本のビニール傘消費量は?

雨の日の必需品といえば〝傘〞。
長傘、折り畳み傘、ビニール傘……。皆さんの家にも、きっと家族の人数分以上の本数の傘があるのではないでしょうか。
日本は梅雨の時期もあり、年間のおよそ三分の一が雨天です。比較的雨が多い国であるため、傘が必要な機会が多くあります。
そんな日本において、洋傘の年間消費量はおよそ一億三〇〇〇万本と推定されています。(*1)そのうち六割以上はビニール傘だともいわれており、つまり、年間八〇〇〇万本ものビニール傘が消費されている計算になるのです。

(*1 参考:日本洋傘振興協会 https://www.jupa.gr.jp/pages/faq)

ビニール傘の課題

ビニール傘は、安価で手軽に購入することができますが、簡単に壊れてしまったり、どこかに置き忘れたり、まだ使える状態なのにもかかわらず廃棄されているものも多く、いわゆる〝使い捨て〞状態になっているのが現状です。
また、鉄道や警察署などに日々多くの傘が遺失物として届けられる一方で、持ち主の元に返還される傘はごくわずか。毎年およそ一パーセント前後となっており、財布やスマホなどに比べ返還率が非常に悪いのも特徴です。
そして、ビニール傘一本あたりに使われるプラスチックをCO2換算すると、一本あたり約六九二グラムのCO2が排出されています。(*2)これはレジ袋やペットボトルよりも多い数字です。
また、傘はプラスチックや金属、接着剤など多様な素材が使用されているため、ペットボトルのような単一素材に比べリサイクル率が非常に悪いのです。傘を使い捨てることは、環境負荷が大きく、SDGsや地球温暖化防止が叫ばれる今、傘の利用は改善していかなければならない課題の一つとなっています。

(*2 参考:環境省3R原単位の算出方法 https://www.env.go.jp/press/files/jp/19747.pdf)

カサをシェアしよう!

そんな傘を取り巻く課題を解決する新たなライフスタイルの一つとして、私たちが考え、二〇一八年に始めたのが『傘のシェアリングサービス〝アイカサ〞』です。〝雨の日を快適にハッピーに、使い捨て傘をゼロに〞を掲げています。
アイカサは、首都圏エリアを中心に全国千箇所以上の傘スポットを配置しており、いつでもスマホ一つで簡単に傘をレンタルすることができます。
借りたスポットと同じスポットに返却する必要がないため、外出先で借りて自宅のそばで返却することもでき、電車に乗る前や晴れたタイミングで傘を返却して手ぶらで移動することも可能です。

必要なときだけ傘を使い、不要になったタイミングで返却すれば、傘をどこかに置き忘れることは減るでしょう。濡れた傘を持ち歩かなくてよいので、置き忘れて廃棄される傘の減少に貢献するだけでなく、雨の日の快適な移動が実現します。
また、〝雨の日がハッピーになる〞ように、との思いから、傘の開発にも力を入れています。
私たちのアイデアに賛同してくれたさまざまな企業やブランドとコラボしたオリジナルデザインの傘や、熱中症対策の日傘としても活用できる晴雨兼用の傘、柄に滑り止めをつけたり先端を平らにしたりした安全設計の傘など、使いたくなるようなさまざまな工夫を施しています。強化プラスチックを使用し、強風に負けない丈夫でエコな作りにもこだわりました。 プランもいくつか設定し、ビニール傘を買うよりも節約しながら、環境にやさしい仕組みとなるようにしました。

サステナブルな工夫

傘をシェアリングするだけではなく、その仕組みや作り方で、より環境にやさしくサステナブルになることを目指しています。例えば次のような取り組みを行っています。
○アイカサを置き忘れても、全国の警察署と連携し、返還される仕組みになっており、廃棄されません。
○オールプラスチックの単一素材で作られているため、リサイクルが容易です。
○傘の骨一本から取り外しができるため、壊れても修理して再利用できます。
○家庭から出た廃棄プラスチックをリサイクルして作った、(*3)より環境負荷の低い材料を使っています。(一部提供)

(*3 参考:Ziploc RECYCLE PROGRAM https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000092.000036740.html)

傘をより長く何度も使える仕組みを作ることで、シェアリングの価値を高めると共に、環境負荷の軽減にも貢献したいと考えています。

新しい社会をつくりたい

日本ではもともと傘は使い捨てず、何度も修理して使ったり、お店が〝番傘〞として高級な傘を街の人に貸し出して〝シェアリング〞をしたりしていました。
現代になり、街で手軽に手に入るようになったことで、いつの間にか傘は個人が何本も所有し、愛着もなくすぐに使い捨てる文化が根付いてしまいました。
しかし、エコバッグやマイボトルを使うなど、環境に配慮した生活が浸透してきた今、傘との付き合い方も、再度見直す時がきているのではないでしょうか。
いつか令和の子どもたちが「昔って傘を使い捨てていたの?」と驚くような時代が来るよう、傘を取り巻く新しい社会を、私たちみんなで今からつくっていけるよう願っています。