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教育ジャーナル Vol.32-1
■授業参観2026
「論理的に考え、わかりやすく伝える力」をつける ~20年の地道な取組が実を結んだ!~
東京都立桜修館中等教育学校 独自教科「国語で論理を学ぶ」
【全3回】(第1回)
■授業参観2026
「論理的に考え、わかりやすく伝える力」をつける ~20年の地道な取組が実を結んだ!~
東京都立桜修館中等教育学校 独自教科「国語で論理を学ぶ」
全3回【第1回】取材・文 今井美栄子
現代社会にあふれる情報を読み解き、使いこなすためには、「聞く・話す・読む・書く」の国語力とともに、「読解力」や「論理的思考力」がますます重要になってくる。20年前にそこに気づき、実践されてきた「国語×論理」の授業がある。その様子を見せていただいた。
東京都立桜修館中等教育学校は、今年創立20周年を迎える公立中高一貫校である。前身は、昭和4年開校の府立高等学校で、昭和24年に東京都立大学附属高等学校と改称。旧制高等学校からの歴史は古い。
この桜修館が、前期課程(中学校1年生〜3年生にあたる学年)において20年前から実施している授業が「国語で論理を学ぶ」「数学で論理を学ぶ」である。学校パンフレットでも特長ある「独自の教科」として紹介されており、桜修館の教育において重要な位置づけであることがわかる。
桜修館の入試にあたる適性検査では、通常の設問に加え、テーマを提示した作文を課している。毎年の新入生約160名は、そのような入試を経てきてはいるものの、テストスキル以外の部分で、各小学校・各家庭においてどのような国語教育や国語的な体験を積んできているのかは、まちまちだ。テストの正答率と国語力やコミュニケーション能力の高さは、必ずしも一致しない場合もある。
桜修館の伝統の一つである「国語で論理を学ぶ」の授業に焦点を当て、今、子どもたちに伝えたいこと、育みたい力とは何か、2022年に設けられた高校の「論理国語」とつながるのか、などについて、授業見学と担当教諭への取材で探っていきたい。
◆2年生の授業ルポ
◆新聞スクラップノートを「読む・話す」
今回は2コマの授業を参観させていただいた。一つ目は前期課程2年生(中学校2年生)の授業。「国語で論理を学ぶ」は、年間を通して2週間に1回2コマ続きとなっており、この2年生の授業はその前半の1コマに当たる。1コマは50分となっている。
授業は国語科教員2名が担当しており、1年間変わらない。授業が始まると、1名の教員が前に立ち、もう1名は教室の後ろに立って見守る。1クラスの生徒は40名。席は一つ一つが離れていて全員が前向きの通常配置。
まず最初に、「スクラップノートを交換して読みましょう。3分!」の指示のもと、見開きにした各自のスクラップノートを一斉に、隣の席の生徒と交換し、読み始める。
スクラップノートは、A4判の普通の罫線ノートを使い、左ページに切り抜いた新聞記事を貼り、右ページには生徒がその記事に関する記述をする。各自が3年間かけてつくりためていくものだ。どのノートも記事で膨れている。3年間で何冊になるのだろう。
下はそのスクラップノートのつくり方だ。

この作成要領に従い、生徒たちは1年生の春からスクラップノートづくりを行う。2週間後の授業までに2記事を作成する。昨今は新聞を購読していない家庭も少なくないため、各教室の棚には新聞5紙が一部ずつ置いてあり、早い者勝ちで切り抜いていいことになっている。図書室でも新聞を読むことができるが、もちろんそちらはハサミを入れてはいけない。
さて、3分間のスクラップノート黙読を終えた生徒たちは、また3分間、今度はペアの生徒と互いの記事についてコメントし合う。そして、コメントが終わったら、さらにテーマを決めて1分間2名で議論をする。
ちなみに、目の前の席に座っていた生徒2名は、それぞれ左ページに「大学共通テストオープンAI、9科目満点」「安倍元首相銃撃で無期懲役判決」の記事を貼っていた。右ページのコメントは、片方の生徒はぎっしり書き込んでいたが、もう片方の生徒はひと言ずつの短文。それでも3分間のコメント交換と1分議論では、ずっと意見を交わしていた。たとえ右ページの「所見」「意見」などの書き込みが少なくても、記事を選んで切り抜いたときの思いがあるので、話すことが何もない、ということはないのだろう。
コメント交換&議論に入る前に、教員より生徒たちへアドバイスがあった。「ポジティブな内容の記事だと、ともに『いいね!』で終わってしまい、なかなか議論になりにくいかもしれません。そういう場合は、『ではこの記事はどう生かせるか』という観点で話し合ってみては?」
◆ 新聞記事の紹介で「短くわかりやすく」伝える
ペアでのワークが終わったら、発表タイムだ。1名ずつ順番にスクラップノートを持って前に出て、自分が選んだ記事について紹介する。
発表は各自3分程度だが、1回の授業で40名は回りきらないので、何回かの授業をまたぎながら行う。このコマでは4名の生徒が発表した。
この日に発表した生徒が取りあげていたのは、「医療功労賞の助産師と障害者歯科の医師」「イランの反政府デモ」「先進国の出生率の低下」「AIと脳科学」の記事。
発表時間が短いので、新聞記事をそのまま読むことはできない。要約し、「だいたいこんな内容だった」と伝える必要がある。
記事への所見や意見は、例えばこんな感じだった。
●「先進国の出生率低下」記事について
・ 若者が少なくなると困る。
・ 国は少子化対策を打ち出しているが、効果が出ていない。国は今以上にお金をかけるべきだと思う。
・ 「出産するかしないかの意見はいろいろ」
という友達の意見にハッとさせられた。
●「AIと脳科学」記事について
・ AIに脳の中を覗かれているようで不安。人の思考にまで干渉するなんて驚いた。
・ この技術が、障害者の意思表明や、工事の安全などにつながればいいが、取り締まりに使うのは危険
だと思う。
・ 脳に電極を埋めるのは危険だと思う。
・ AI利用のルールを決めてほしい。
・ AIに人の仕事をとられるのは、いいことばかりではない。
一方、他の生徒たちは、発表を聞いて、自分のスクラップノートに感想を書いていく。
4名の発表後、教員2名がそれぞれコメントを述べた。まず今まで後ろで見守っていた教員からは、
「今回の発表記事は、わりと難しいテーマが多かったように思う。議論をしてみると、意外とわからないことが多いと気づくんじゃないかな? そのときは、『どうしてそれが問題なんだろう?』『こうしたらできるんじゃないだろうか?』と考えて自分で調べてみてほしい。自分は何がわからないのか、何を知ったらさらに広がるのか、家に持ち帰って考えてみよう」
次に、本日主担当をした教員からは、「新聞にある事実から、『なんでそうなったのか』という根本の問題を探ってほしい。たどっていくと根本の問題は意外とシンプルかもしれないという視点で、新聞記事を選んでみるのもいいかもしれません」
発表が終わるたびにみんなで拍手。「よい」「悪い」などの判定はない。教員は次に向けての考えの深め方や、思考の道筋をアドバイスするというスタンスだ。
◆伝えるときのポイントは「具体化」と「抽象化」
ここで、教員から生徒たちへ、「わかりやすく伝えるためには『具体と抽象の往還』が必要でしたね」という確認があった。
何かを伝えるときには、具体と抽象の合わせ技が必要ということだ。
「具体化」とは、「例えば〜」「実際は〜」などの言葉に続くような内容。「具体化」することで正確に伝わり、説得力が生まれる。
「抽象化」とは、「つまり〜」「このように〜」などの言葉に続くような内容。「抽象化」することで要点が伝わり、理解が深まる。
この「具体化」と「抽象化」を盛り込むことで、発表や文章はよりわかりやすく魅力的なものになるという。確かに概念の話ばかりされても、今一つイメージが湧かない。かといって、個々のエピソードばかりでも、全体として何が言いたいのかわからない。伝え上手な人は両方を駆使しているといえる。
生徒たちはこの「具体化」と「抽象化」について、教員手づくりのワークシートで学んできたようだ。その一部を下に紹介する。

(第2回に続く)
次回の予定
7月6日(月)
「論理的に考え、わかりやすく伝える力」をつける ②