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教育ジャーナル Vol.32-2

■授業参観2026
「論理的に考え、わかりやすく伝える力」をつける ~20年の地道な取組が実を結んだ!~
東京都立桜修館中等教育学校 独自教科「国語で論理を学ぶ」

【全3回】(第2回)

■授業参観2026

「論理的に考え、わかりやすく伝える力」をつける ~20年の地道な取組が実を結んだ!~


東京都立桜修館中等教育学校 独自教科「国語で論理を学ぶ」


全3回【第2回】


取材・文 今井美栄子


東京都立桜修館中等教育学校で実践されてきた「国語×論理」の授業。第2回は、「調べ学習」のガイダンスと、1年生のスピーチの授業を紹介する。


◆調べ学習への道案内は段階を踏んで丁寧に

 桜修館では、5年次(高校2年生)に5000字ほどの研究論文に取り組む。

 近年は、小学校から積みあげてきた探究学習の集大成として論文に取り組む例は増えている。また、多様化する大学入試制度の中で総合型選抜を採用する大学が増えていることや、海外の大学への出願も念頭にあるだろう。


 この日の前期課程2年生(中学校2年生)の授業では、その論文執筆の土台となる「調べ学習」についてのガイダンスがあった。


 調べ学習の課題は、「自分の好きなコト、好きなモノ(気になるコト、気になるモノ)について日本で一番調べる」。


 既に生徒に配られていたプリントには、調べ学習の「ねらい」が次のように書かれていた。

 ①自分がこれが好き♪これについてもっと知りたい!というものを題材にする。
 ②いろいろな所から情報を得る。
 ③調べたことを紹介して、ほかの人にも興味を持ってもらえるようにする。
 ④自分にも、クラスの人にも、先生にもわかりやすいようにまとめる。

 レポートの形式については、次のとおり。

 ①A4判4枚以上
 ②Wordでも良い
 ③文体は常体か敬体に統一

 ④横書きで書く。箇条書きで書かない
 ⑤誰かに呼んでもらう前提で書く

 
 生徒へのプリントには、短くわかりやすい表現を用い、これから取り組むことになんとか具体的なイメージをもってもらおうという意図がうかがえる。

 テーマの決め方や書き方については、さらに丁寧に導こうとしている。以下は、「『私も博士ちゃん』プロジェクト〜とにかくすごい調べ学習〜」というプリント類の項目を一覧にしたものである。


 
 細かい段階を踏んで調べ学習を進めていっていることがわかる。

 実際には項目ごとに、やり方の説明、豊富な例、書き込み欄のあるプリントが用意されており、手を動かしてワークをしながら、テーマを決めたり構成を考えたりできるようになっている。
「興味のあることを調べてまとめよう」だけでは、何をどうしていいかわからなくなってしまう子が多い。特にテーマを見つけることが簡単そうで一番難しい。「好きなこと」をどのように「調べたい」というモチベーションにつないでいくか。手順に沿ってテーマを絞り込んでいくことで、自然にそれができるようになっている。また、テーマを絞り込む過程で人の意見を聞くというのもおもしろい。自分の選んだテーマを別の視点から眺めることができるだろう。


 そのように、途中経過を人に伝えて意見を聞く場として、今後の授業で「私の調べ学習」というテーマでピッチトークをするようだ。ピッチ(Pitch)はビジネスでよく使う言葉で、「売り込む」「関心を引く」などの意味。ピッチトークとは、短時間でわかりやすくプレゼンテーションをし(ピッチ)、グループで対話する(トーク)というものだ。


 そのためのプリントが配布され、すでにテーマが決まっている生徒は、ピッチ内容の記入を始めていた。


 また、授業の最後に、調べ学習のコンクールで受賞した5年生(高校2年生)による「私の調べ学習」動画もみんなで視聴した。その生徒のアドバイスの中で教員がもっとも強調したのは、「テーマは身近なことでいい」「立てた問いの答えは一つに絞れなくてもいい」ということだった。


 新聞スクラップでは、情報を読み取って、考えて、伝える練習をテンポよく行い、調べ学習では、その力を活用できるよう丁寧に道筋を示す。2年生の「国語で論理を学ぶ」は、そんな緩急を効かせながら、しっかりと思考に向き合わせてくれる授業だった。

◆1年生の授業ルポ

◆発表は肯定的な場づくりと「伝えたい気持ち」を大切に

  続く前期課程1年生(中学校1年生)の今回の授業は「中学生の主張」発表会。クラスの40人がそれぞれ自由なテーマで書いた作文をもとに、1名2分間でスピーチする。この日はクラスの約半数の生徒が発表した。この授業でも教員は2名だ。

 1年生の最初の「国論」の授業では、この科目について次のような説明があったようだ。

 
 これにのっとった、1年生の今年度の学習内容は次の4つ。

①「スクラップノート」を作り、毎時間発表する。→新聞コンテストに挑戦する。
② ビブリオバトルで効果的なプレゼンを学ぶ→4年生で東京都大会に挑む。
③「スクラップノート」と「自分の体験」を組み合わせ、800字の意見文を書く。
④ 2分間スピーチ「特殊の一般化」→3年生で中高一貫校スピーチ大会に挑む。

 今日の発表はこのうちの④に当たる。③で意見文を書く際には次の3つを意識した。
(1)特殊の一般化
(2)具体の抽象化
(3)体験の具体的な描写


 (1)は個別事例から共通点を見いだすこと。(2)は体験や記事の内容を短く適切な言葉にすること。(3)は事実を丁寧に描写すること。
 

 生徒たちは発表の前に800字の作文を教員に提出し、(1)ができている部分には緑色で、(2)には青色で、(3)にはピンク色でマークをしてもらっており、読むときに意識する。
 

 一人ひとりの発表後に教員が1分間程度コメントを述べる。教員は生徒たちの作文を読み込んでおり、(1)(2)(3)の観点でよくできていた点をそれぞれ具体的に褒めていた。
 

 ある生徒は「ゲーム内通貨で詐欺」の記事を取りあげ、「ルールを守ることは大切だけど、ゲームの世界ではお金に関して罪悪感を感じにくくなるのでは? 皆さんの生活の中でもありませんか?」と問いかけ、教員から「いい一般化ができましたね」とコメントをもらった。また、ある生徒は、「入試でカンニングサービス」の記事から、過度な期待がこのような犯罪を生むのでは? と考えた。曾祖父の死から、大事な人を突然失ったときの心残りをなくす方法について考えた生徒も。
 

 発表をする直前に教員が、「◯◯さんのは、びっくりするような経験ですよ。楽しみに聞いてください」などと期待をもたせたり、発表態度について「笑わないで最後までやり切れたね」などと認めたり、教室内にとても肯定的な雰囲気をつくり出していた。
 

 あとで教員に聞いたところ、「本当は新聞スクラップをテーマにしてほしいけれど、どうしても自分の体験を話したいという生徒もいて……。でもそこはもうOKにしています」とのこと。優しい場づくりや、伝えたい気持ちを優先するなど、1年生のために発表への心理的ハードルを下げる工夫をしていることがうかがえた。この安心安全にものが言える場づくりは、ピッチトークに向けても大事なことだと思われる。1年生の今までのワークシートの中には、「私のイチ推しスピーチ&聞き上手大会」というものがあり、「相づちを打つ」「聞いたことを繰り返す」「相手の言葉を引用して質問する」など、聞き上手のスキルも学べるようになっていた。

 最後にもう1名の教員から全員へ、「この9か月で皆さん成長しましたね。制限時間にも合わせられ、聞き方もよかったです」とコメントをもらい、授業は終了した。






(第3回に続く)

次回の予定

7月20日(月)
「論理的に考え、わかりやすく伝える力」をつける ③