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教育ジャーナル Vol.32-3
■授業参観2026
「論理的に考え、わかりやすく伝える力」をつける ~20年の地道な取組が実を結んだ!~
東京都立桜修館中等教育学校 独自教科「国語で論理を学ぶ」
【全3回】(第3回)
■授業参観2026
「論理的に考え、わかりやすく伝える力」をつける ~20年の地道な取組が実を結んだ!~
東京都立桜修館中等教育学校 独自教科「国語で論理を学ぶ」③
全3回【第3回】取材・文 今井美栄子
東京都立桜修館中等教育学校で実践されてきた「国語×論理」の授業。最終回は、担当教員お二人へのインタビューをお届けする。
担当教員に聞く! 「国語で論理を学ぶ」
今年度の担当教員の一人である福田浩一先生(国語科主任、第1学年主任)と、前期課程進路指導主任の大島かや子先生に、授業見学後にお話を伺った。
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──「国語で論理を学ぶ」(以後「国論」)の授業で力を入れていること、各学年の授業内容を教えてください。
福田先生(以後、福田) 見通しを立てる、筋道を立てるということ、それをコミュニケーションの中で誤解なくしっかり人に伝えていくことを大切にしています。
1年生は1時間まるまる使ってスクラップブックをつくっています。切り抜き、所見(要約)、語句調べをし、それを隣席の生徒と交換して読み合い、意見を書き込む。
そして返してもらったものを発表する。そういう流れで、いわゆる国語の4領域を包括的に行っています。
2年生になるともう少し負荷をかけて、社説を必ず読もうなど、こちらからお題を出しています。
3年生になると、行事や部活などで時間もかぎられてくるので、社説とそれに関する記事を必ず見つけようとか、米問題などテーマを一つ決めて1か月間連続で変化を追ってみようとか、的を絞りやすいように条件をつけることもあります。
大島先生(以後、大島) 昨年から共通テストに図表の読み解きや話し合いの場面などの実用的な問題が出るようになり、やっと時代が追いついてきたという感じです。生徒たちも「これ国論でやったよね」と言っていました。
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──新聞を取る家庭は減っているのでは?
福田 最初から丁寧に4時間かけてスクラップのやり方を指導し、あとは2週間に1回、授業に向けて毎回2つスクラップしてきてもらいます。家でやってくる子もいますが、各教室に新聞を置いているので、多くは学校の新聞を使って放課後や朝の時間にやっていますね。教室の新聞は穴だらけになってしまいますから早い者勝ちです。朝、教室に新聞が散らばっていて「片づけなさい!」みたいなことも(笑)。
大島 スクラップノートの発表が効果的なので、数年前に中学3年間を通してやろうということになりました。「読むのがだんだん早くなっているよね」と生徒たち自身も実感しているようです。語彙が増え、熟語も結構使えるようになりましたね。
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──近年タブレット端末での作文が増えていますが、この授業では手書きが多いですね。
福田 手で書く活動は意識的に行っています。
自分の考えや思いを言葉で表現する際は、誤解なく読み手に伝えるためにはどのような順番、どのような表現が適切か、という「構成」を意識することが必要です。
そのためには、コピー&ペーストで効率よく書くよりも、手書きで構成メモをつくったり、書く分量を考えたりする「手間」が大事だと思っています。読み手を意識するための試行錯誤の時間を多くとることが、論理的な文章を作成する力につながると考えているからです。そのようなしっかりとした土台があればツールが変わっても順応、応用して取り組むことができるのです。
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──スクラップノートづくりと発表で育てた力はどこにつながるのでしょうか?
福田 名前から何か論理的なことをやっていると思われがちなんですが、普通の国語の授業でやっていることをいかに実践に落とし込むかがこの授業だと思います。
1年生は作文をコンクールに出しますが、書く前に「何を求められているか」「聞き手は誰か」を意識し、個人で考え、グループでも考えます。「家で読書感想文を書いて提出するだけ」では作文は上達しません。「わかりづらい」「ネタバレしすぎ」などと誰かに意見をもらって初めて「確かにそうだな」という学びになるんですね。グループワークを通して他の生徒の多角的な視点を得て、伝わらなかった点を知り、自分にはない気づきを得ることが大事です。
大島 2年生は今年は、言葉で伝えてそのカードを引くという既成のボードゲームを使って「説明する力」を養いました。宇宙飛行士のテストにもある、図形を言葉だけで伝えて再現する、というゲームもやりました。言葉で伝える難しさを知り、いかに論理的に伝えるか、という学びです。
福田 3年生では昨年大きな取組として、森鴎外の小説「高瀬舟」の安楽死をテーマに模擬裁判をやりました。弁護士を招いて裁判の話を聞き、物語を現代の裁判に当てはめて演劇的にやるんです。凶器や刺した姿勢など状況を正確に読み取り、弁護側と検察側に分かれて物語のセリフを証言し、「それは書いてありましたか?」
「それって飛躍ですよね?」などとやりとりし、論理的に筋道を立てて、過失致死か自殺幇助(ほうじょ)か殺人か、裁判官・陪審員になって判決を出しました。クラスによって無罪・有罪が分かれましたね。キャリア教育やリベラルアーツにも通じる、ふだんの国語の授業ではできない体験でした。
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──調べ学習はどのようにやるのですか?
大島 前半の時間に図書室に行って自由に本を探し、探せない子は教員が手助けをします。1年生のフロアにも本を置き、半分は新書で、中高生向けの「ちくまプリマー新書」を多くそろえています。
福田 さあ調べましょうと丸投げして、パソコンを使っていい、生成AIでどうぞ、とはしません。まずは新書を2冊読みましょう、図書室で借りましょう、新書検索サイトを使いましょう、公式のホームページを見ましょう、新聞で近い記事を探しましょう、友達にインタビューしましょうと、本や情報の探し方は丁寧にやります。学年が上がるほど使うツールも増やします。だから、社会や理科で自分で何か調べるときも、すぐ検索してウィキペディアを写し……とはなりません。「国論」で使ったツールを思い出そうねと。
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──「国論」で学んだことは他の科目でも生かされているのですね。高校2年生からの「論理国語」との関連は?
福田 必要なのに教科の中で教えるのは難しいことをやっているのが「国論」かなと。数学でも社会でも理科でも「求められていることに間違いなく答える」ことは大事です。教科や行事での発表活動の底上げにもなります。「国論」はまさに教科を横断して応用されていると思います。
高校の「論理国語」では評論など抽象的な文章を読解しますが、「国論」での学びを通して、「この論じ方はあの形だな、こういう方法で表現しているな」と、作者の意図が読み取りやすくなると思います。
大島 高校の「現代の国語」でも「論理国語」でも社会課題を扱いますが、「国論」の新聞記事で読んできた内容ですから抵抗がないと思いますし、それは入試論文、面接、進路選択にも役立っています。
福田 視野を広げておく、ほかの人と意見が違うということを頭だけでなく体感しておくということが、高校の学びにも心の成長にもつながっていると思いますね。
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──教員2名体制(TT)にはどんなメリットがありますか?
福田 主担当を交代することでバランスを取ることができます。先ほど私と組んで1年生の授業をした先生は中学校から来ていて、私は高校から来ているので、「なるほど中学生にはそういうコメントの仕方があるんだ!」と勉強になります。コメントがやわらかくて、「上手だったね」とほめることが多かったですよね。高校だと「もうちょっとやれるんじゃない?」とついダメ出しになることも多くて……。逆に「高校の先生はそういう負荷のかけ方をするんだ」と中学校の先生が学べることもあると思います。ほかの先生の授業を見ることはときどきはありますが、日常的に担当教科でというのはこの授業だけなので、教員にとってはかなりのメリットですね。
大島 授業の中でコメントを求められたら、もう一人の先生と違う角度から言ってみよう、と思います。いろんな立場の先生がいて、それぞれ物の見方も違います。◯◯先生なら家事・子育て、◯◯先生ならスポーツなど、2名いれば話の幅も広がって、生徒も共感しやすいですよね。
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──今日の生徒たちを見ると、話し合うことを恐れてないという印象を受けました。
大島 心理的安全はあるかもしれません。否定的な雰囲気はないですね。ぶつかるときもありますが、感情的にならずに「なんで?」と聞ける土壌があると思います。
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──近年子どもの読解力が落ち、教材文が読み取れない子が増えていると聞きます。
大島 言葉は知っていても、よく話してみたら意味を理解していないということはあります。登場人物の性別を読み間違えていたとか、「顔を赤くした」が恥ずかしいのか怒っているのかを勘違いしていたなど、根本がずれていることも。同じ地点に立つために丁寧に話すことが大切だと感じます。一人で読んでいたら最後まで誤読で終わっていた、となりかねません。間違ったまま突っ走ったらもったいないですよね。ちょっと話すだけでも修正がかかりますから。
福田 教室だからこそイメージのすり合わせができるということはあると思います。生徒には「どんな内容だったか、感想や気になったことを隣の人と話してごらん」と促しています。ずれに気づいて修正できることもあるし、お互いずれているときもある。でも「違うよね。こういう話でしょ」と教員が指摘して正解を言うよりも、まずは子ども同士で見つけられるようソフトにやっていけたらと思います。時間はかかりますが……。「国論」の授業では教員がしゃべることのほうが少ないんです。
大島 先日、高1の授業で新聞を使ってプチプレゼンをやった際、記事の表現を自分の言葉にして話している様子が見られたんですが、そういう経験を積み重ねることで語彙力が増えていくのだと思います。
SNSやライトノベルなど自分の好きな世界の言葉にしか接してないと語彙は広がりません。自分では読まない新書や新聞を読んで、その中の言葉を使ってアウトプットする。例えば記事の中に出てくる言葉を一つだけ使って1分間しゃべってみる。すぐに「読む力」につながらなくても、知らないテーマの文章を新聞で読むということは、なんらかの形で生きてくると思います。
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──これからの「国語で論理を学ぶ」でどんなことがしたいですか?
大島 先日、4年生(高校1年生)でAIを使って授業をしたら、みんな「やっぱり人間の質問力が大事だな」という結論に至っておもしろかったです。AIにうまく伝わらず、「もう1回最初から説明しなくちゃいけなかった」とか。そういう授業を「国論」でやってもいいと思っています。
福田 AIで調べたものが事実として正しいか間違いか判断した先で、AIでつくったものをどう扱うかは自分しだいです。AIに意図はありませんから。
大島 そこがこれからの課題ですね。「国論」は20年間これでやってきましたというパッケージがあるわけではなく、時代の流れに合わせて変化し、バージョンアップしていく授業。かかわる教員も2倍ですから、それぞれもち寄ってつくっていけます。
福田 ちょうど新型コロナの中で小学校を過ごしてきた子どもたちが今の中高生です。漢字を身につける時期に漢字を覚えるチャンネルが育たなくて書き取りができないとか、マスクで表情も見えず、横向かないで話さないでと言われ、友達との話し合いが苦手とかいわれます。だったらその子どもたちに合った教材をつくって伸ばしていきたい。これと決まった教科書がない「国語で論理を学ぶ」だから柔軟に、今後もいろいろと模索していきたいと思っています。
──ありがとうございました。
(了)
次回の予定
8月3日(月)
探究「シブヤ未来科」 「授業時数」を調整して、ダイナミックに「探究」に取り組む①