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教育ジャーナル Vol.32-6

■校長アンケート
日々の一喜一憂はどんなことでしたか?
学習指導要領改訂の議論の中にも、何げない日常がある①
【全2回】(第1回)

■校長アンケート

日々の一喜一憂はどんなことでしたか?


学習指導要領改訂の議論の中にも、何げない日常がある①


全2回【第1回】


教育ジャーナリスト渡辺 研


悩みや困難を十分に補ってくれる喜びが、この仕事にはある。明日も元気に出勤できるように、前を向こう。


次期学習指導要領

Q1 わかりやすいものになりそうですか?

 かなり整理されることを期待

 学習指導要領改訂の議論が進められている。各部会の配布資料もそのつど、公開されていて、議論の中身もある程度は把握できる。先生方も大いに関心をもって、知りたい教科や分野について、折々でチェックされていることだろう。そこで質問。
 大臣諮問の際に「わかりやすく、教師に過度な負担をかけない」ようにと条件をつけられたが、実際にそうなりそうだろうか。実践の場においては切実な問題だ。
 率直な感想に加えて、議論の中身に感じておられるプラス面とマイナス面(懸念や不安)も併せて伺った。

◆資質・能力と学習内容の関係の整理がわかりやすくなされているように受け止めています。その意味では、現場にとって使いやすい指導要領になると、期待しています。(中学校)

 それ以前とは大きく変わった現行の学習指導要領の実施状況が「道半ば」というところから議論が始まり、その徹底のために、現行に残った〝わかりにくさ〟を改善しようという作業が行われている。「わかりやすい」という点は期待してもよいのだろう。

◆今回、改訂では国もそうとう踏み込んで、評価のわかりやすさや負担減、授業改善に向けた中核的概念を示すなど、覚悟が感じられます。改訂は大きな改革なので、その趣旨や内容をわかりやすく全国に届ける必要があり、その役割が重要。(小学校)

 評価がしづらかった「学びに向かう力」も、具体的に「子どものこういう姿」として示されるようだ。

◆「教科書を教える」から「教科書で教える」教え方が強く打ち出されていること、評価の押さえが再構築されることなど、かなり整理されると期待しています。(中学校)

 特に中学校は、高校入試への対応として「教科書を教える」にならざるを得なかった事情もあるのだろう。でも、次の質問の「調整授業時数制度」や授業の単位時間の柔軟な運用など、これまで学校では自由にできなかった「時間」の部分において、学校の裁量を可能にしようという議論が進められている。教科書そのものについてもなんらかの言及があるかもしれない。長年の課題だった「教科書を教える」が改善されそうだ。

 教師が自縄自縛にならぬように

 おおむねプラス評価のようだが、当然、注意しなければならないことはある。

◆現場の校長としては、「わかりやすさ」や「整理し直そうとする姿勢」は、これまでより意識されていると感じています。特に、各教科で求められる資質・能力を、子どもの姿と結びつけて示そうとする点は、教師が授業を構想する上での手がかりになり、プラス面だと捉えています。
 一方で、内容が整理されるほど「求められること」が見えやすくなり、結果として「全部やらなければならない」と受け取られてしまう危険性も感じています。文書上は負担軽減を意識していても、評価や説明責任の場面で、学校や教師の裁量が十分に尊重されるかどうかが、実際の負担感を左右すると思います。
 大切なのは、学習指導要領を「よりよい学びをつくるためのよりどころ」として解釈し直すことだと考えています。そのためにも、管理職が「学校の実情に応じて工夫してよい」というメッセージを出し続けることが必要だと感じています。(小学校)

 学習指導要領は「多様な子供たちの『深い学び』を確かなものに」を実現するためのよりどころ。それこそ「教科書で教える」と同様、書かれていることを最初から最後まで均等に実行することが目的ではない。

◆「教師に過度な負担をかけない」ことを明言したことには、期待をしたいという思いもあります。しかし、一方で、これまでの学習指導要領の改訂直後の動きを振り返ると、すぐに新しいことを言い出すのではないかという危機感を拭えないでいます。
 とはいえ、これまでになく教師の裁量を広げてくれることはすばらしいと思います。ただ、ここでも教師がまた自縄自縛にならないかという懸念が拭い去れません。「子どものために」という美辞麗句の中で頑張りすぎてきたのが現状とすれば、これまでと同じように頑張りすぎてしまう教師が出てこないようにしたいと思っています。(小学校)

 なんとなくの印象だが、次期学習指導要領実施のキーワードは「軽重をつける・優先順位をつける」のように思う。

Q2 調整授業時数制度をどう活用したいですか?

 公立学校の可能性を広げる

 自校が目指すカリキュラムを実現するために、学校の裁量で各教科等の時数を変更することができる(総時数は減らせない)。実現すれば画期的なことになる。

◆学校の特色を強く打ち出せるようになることは、期待できるものになると思います。(中学校)

 かけ声だけのカリキュラム・マネジメントではなく、その実現のための制度。

◆学校にとって、一定の裁量が認められる制度は魅力があります。特に、子どもや学校の実態に応じて時間の使い方を柔軟に考えられる点は、公立学校の可能性を広げるものだと感じています。例えば、行事の事前・事後の学びを丁寧に扱ったり、学級や学年での話し合い活動、振り返りの時間を意図的に確保したりすることに活用できると考えています。また、教員同士が子どもの姿を共有し、授業や指導について語り合うための研修時間にあてることも有効だと思います。
 ただし、制度があることで「何か新しいことをやらなければならない」という空気が生まれてしまうと、本来の趣旨とは逆に負担増になりかねません。まずは今、行っている教育活動を見直し、「大切にしたい学びに時間をかける」ための調整として活用していきたいと考えています。(小学校)

 既存の教育活動を含めたスクラップ&ビルドや軽重の判断、あるいは「本質」を見つめ直してみる機会にもしたい。

◆間違いなく魅力的です。組織的な職員研修にあてることも可能という方針は画期的です。(中学校)
◆小学校で単純に新教科の創設に進めば、これまでの教科指導に、さらに上乗せしなければならなくなり、学級担任制下の教員には業務負荷が高くなります(完全な教科担任制を導入すれば負担は減らせますが)。
 この制度は、教員の研修にあてられるところに魅力を感じます。本校で実施しているチーム(学年)担任制では、チームの教員間の重要な打ち合わせ時間(教員研修にも通じる)を毎日確保することもできそうです。工夫すれば、チーム担任制を進める有効な手段になりうると思います。(小学校)

「時間は平等に与えられている」といわれるが、教師たちは「なぜ自分たちにはこんなに時間がないのだ?」と痛感してきた。やっと、自由に使える時間がもてそうだ。

◆チーム担任制等が進む中で、児童の情報共有などを〝時間内〟に行えるメリットは大きい。(小学校)

 勤務時間内にこの時間を取れるので、子どもたちにしわ寄せがいくこともない。働き方改革は、きっとこういうことをいう。そしてこの時間は、いずれ〝教師の成長〟という形で子どもたちに還元されるのだから、遠慮なく有効活用すべきだろう。
 それでも、学校にはこんな現実もある。

◆「調整」は、“柔軟に”とか“臨機応変に”という、一見、時代に合った考えだと思うが、それは〝複雑になる〟ということなのではないか。それに対応できる学校現場、教職員になり得るのだろうか。教員不足だけでなく、教員としての質や意欲が低下している現状を理解してほしい。(小学校)

 実現すれば、若手の育成にも手が回るだろう。ようやく少し身動きがとれるようになりそうだ。実行したくてもその時間がなかったことが、実現できるかもしれない。それが教師に活力を与えてくれることを願う。 






(第2回に続く)

次回の予定

9月14日(月)
校長アンケート 日々の一喜一憂はどんなことでしたか?②